今年の初め、天下の「郵便事業株式会社」が札幌の一DM業者に商標権侵害訴訟で敗れる、という大波乱が報じられた「ゆうメール」事件だが、地裁判決から約8ヶ月で、ようやく想定どおりの決着となった。
「ゆうメール」のサービス名を商標登録している札幌市のダイレクトメール(DM)発送会社が、日本郵政の郵便事業会社を相手取り、商標の使用差し止めを求めた訴訟は13日、郵便事業会社が商標権を買い取る内容で知的財産高裁(飯村敏明裁判長)で和解が成立した。両者は買い取り金額など和解内容を明らかにしていないが、郵便事業会社は「今後も『ゆうメール』の名称を使用できることになった」(広報室)としている。」(日本経済新聞2012年9月14日付け朝刊・第38面)
役務の類似性や、4条1項7号該当性など、控訴審での判断をもう少し見てみたかった論点もいくつかあるのだが*1、結果的には、従来どおりJP側が「ゆうメール」を使えるようになった上に、商標買い取りによって以後の憂いもなくなるわけだから、既に使い始めてしまったサービス名将をめぐる争いの落ち着かせどころとしては、無難な和解ではなかったかと思う。
金額がどれくらいだったのか、というのは、気になるところではあるのだけれど、裁判所が後見的に介入している以上、仮に第一審の判断を前提としても、そんなにめちゃくちゃな数字にはならないはず。
係属していたのが飯村判事のコートだけに、もしかしたら、役務類似性の否定や、4条1項7号該当性肯定等の心証を開示した上で、名目的に再取得費用に相当する対価だけを支払う形で「譲渡させた」可能性もないわけではない。
いずれにしても、民間会社としての歴史が浅いJPグループにとっては、良い薬となったのではなかろうか。
(強力な布陣で裁判に臨んでいただけに、授業料としては、少々高くついたのかもしれないが・・・)
そして、言うまでもないことだが、明日は我が身、である。
本件を他山の石として・・・。
*1:原審での争点をめぐる判断については、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20120130/1328335842参照。