公取委の“頑張り”がもたらすもの

年が変わった、ということで、「2012年」一年間のあれこれの数字が、ここ数日、新聞紙上を賑わせているのを良く見かける。
記事を見て、「やっぱり・・・」と思うことも多いのだが、以下の記事もまさにその典型。

「下請け業者に支払う代金を不当に減額したなどとして、公正取引委員会が2012年、下請法に基づいて発注元に勧告し、返還を求めた金額は約48億6800万円に上ったことが7日、公取委のまとめで分かった。11年と比べ約2.7倍に増加し、過去最多となった。」(日本経済新聞2013年1月8日付け朝刊・第38面)

記事の方はさらに続き、

「12年の勧告件数は11年より5件多い21件」
「発注元を指導した件数は12年1月〜11月に3723件」
「12年の(書面)調査件数は5年前の1.3倍にあたる約22万件に上る見込み」

と、公取委が1年間「頑張った」成果が綴られている。

本来、公取委が発表する運用状況のデータは、年度単位で公表されているはずで*1、実務上、上記「年間」データにどれだけの意味があるのかは分からないのだが、節目節目で、こういう“右肩上がり”のデータが報道されれば、世の中に与えるインパクトも決して小さくはないはずだ。


もっとも、この「件数増加」は、世の中の動きにつれて・・・という代物ではない。
社会的に、俗にいう”下請けいじめ”的な行為が増えているか、と言えば、実態はむしろ逆で、従来以上に念入りに気を使う親事業者が増えたのが最近の傾向だと言えるだろう。

それでも、上記のように件数が増えているのは、

「下請け業者に対する書面調査などを通じ、公取委が違反行為の発見に努めている」

といった、専らエンフォースメント側の事情にある。

もちろん、公取委がしっかり調査をするようになったことで、これまで隠れていた“陰湿な下請けいじめ”が明るみに出た、という、下請法の趣旨にぴったり添うようなエンフォースメント事例も決してないわけではないと思う。

しかし、その一方で、公表事例等を見ると、公取委が「事件」として挙げたものの中には、実質的に下請業者に大きな影響を与えないような、事務的なミス等に起因するものも少なからず含まれている。
そして、その背後には、唐突な「指導」を受けて戸惑い、憤っている企業の担当者も、少なからずいるはず・・・。

記事の中には、勧告件数の多くを占めた「PB商品の製造委託」について、

「メーカーからナショナルブランド(NB)商品を仕入れるのと同じ感覚で、値引きなどを求める業者が目立つ」

という公取委側のコメントが掲載されているが、「NB商品を仕入れるのと同じ感覚で」発注側の事業者が行動してしまう、ということは、裏を返せば、PB商品に係る製造委託取引も、NB商品に係る仕入取引も、当事者から見た実態はほとんど変わらない(ただ法だけが、杓子定規に前者だけを規制対象の取引類型として網にかけてしまっている)ということを示しているに等しいのではないだろうか?

「法律がそういう立てつけになっているのだから、しょうがない」という理屈は、一応受け入れざるを得ないとしても・・・


そういったことをいろいろと考えると,公取委は一体何のために頑張っているのだろう?という素朴な疑問がわいてくる。

昨年末にアップしたエントリーでも紹介したとおり*2、今の下請法には、いろいろと不可解な点が多いことが指摘されている中で、公取委が現行法で頑張り続けたらどうなるか・・・。

新年早々、考えさせられることは多い。