開幕戦からいきなり、西村主審にスポットが当たってしまい、日本人にとっては何とも落ち着かない立ち上がりになったブラジルW杯2014。
件のジャッジに関して言えば、PKを取られたロブレン選手のプレーが、結果的にそのまま流してもブラジル国民からバッシングを受けるようなものではなかったのは確かだし、あの時に吹かれた笛が、どちらに転ぶか分からない拮抗した試合の流れを大きく開催国の側に傾けてしまった事実は否定できないだけに、当事国であるクロアチアはもちろん、辛口のサッカーメディアが批判したくなる気持ちは分かる。
ただ、試合のVTRを、そのままの流れで見た時に、「明らかな誤審」と言えるほどのジャッジだったかと言えば、そこまでのものではないだろう・・・というのが、率直な感想で*1、スローVTRを見て、「大したコンタクトではなかった」とか「フレッジ選手が不自然な倒れ方してるじゃないか」とかあれこれ言うのは、“人間がプレーし、人間が裁く”サッカーという競技の本質から外れているんじゃないか、という気がしてならない。
本当のプロフェッショナルの目から見てどうだったか、というのは、「次のステップで笛を吹けるかどうか」という明確な「結果」によって示されるわけだから、もう少し、冷静に様子を見ておれば良いのではないか、と個人的には思うところである。
「スペイン大敗」の衝撃
さて、2日目まで終わって、最大の衝撃となったのは、やはり、前回大会優勝のスペインが、1-5という信じられないスコアでオランダに大敗したことだろう。
固定化したレギュラー陣の高齢化や、CLで上位進出したチームの選手がほとんど、という今シーズン特有の事情から、スペインが撃沈する可能性は、大会前から当然予想できたのだが、それでも決勝トーナメントの1回戦までは(あるいは早くても第2戦のチリ戦までは)、そんなに恥ずかしい試合はしないだろう(欧州のリーグ戦で疲弊しているのは、オランダの主力選手も同じだし・・・)、と思っていただけに、後半開始早々、ロッベン選手に2点目を奪われて以降のドツボへの嵌りぶりは、何度映像を見ても、ちょっと信じがたい光景だった。
前回大会のリベンジ&現役生活最後のチャンスに賭けていたオレンジ軍団のベテラン選手たちの想いと、若いDF陣の勢いがうまくかみ合ったこと、さらに、スペインがボール保持率の数字(58%)ほどには攻めきれず、相手の守備の弱さを十分に突き切れなかったこと、そして、GKに最近コンスタントに試合に出ていないカシージャスを起用したこと*2など、理由はいくらでも挙げられるのだろうが、それにしても・・・。
オランダも、試合後のファンペルシー選手のインタビューなどを聞いていると、“リベンジ・マッチ”に勝利した高揚感が少し強すぎる気がして、2戦目以降、足元をすくわれないか、という懸念はあるから*3、スペインが残り試合に連勝すれば、決勝トーナメント進出も不可能ではないのだが、チリ、オランダ、というどこがベスト8に入っても不思議ではない顔ぶれの中で、得失点差でチリに6点、オランダに8点のビハインドを負った、という事実はあまりに重すぎる。
ついこの前まで“無敵艦隊”の名を欲しいままにしてきたこのチームが、日韓大会のフランス、南アフリカ大会のイタリアと同じ轍を踏むことになるのか、それともデルボスケ監督の神話にまた新たな一ページが書き加えられるのか、まだまだ分からないが、少なくともカシージャス選手がゴールマウスを守る姿をこの大会で見ることは、もうないだろうなぁ・・・という気はしている*4。