彼女にとっては、“前哨戦”に過ぎない天皇賞・秋で、イスラボニータとの競り合いを制して2着に食い込む意地を見せ、迎えた東京芝2400mの大舞台。
過去2年と同様にターフを回って来れば、前人未到のジャパンカップ3連覇、そして、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクトといった歴史的な名馬と名実ともに肩を並べる国内外G1・7冠、という偉業を達成できたはず・・・だった。
真夜中に見た録画の映像を見る限り、鞍上に名手ムーア騎手を迎えてゲートを飛び出したジェンティルドンナの様子は、決していつもと違うものではなかったように見えたし、前めの位置取りで最後のコーナーを回ってきた時には、このまま突き抜けて、最後までしぶとく粘り切るんじゃないか、という雰囲気も十分に醸し出していたと思う。
でも、勝てなかった。
より大胆な先行策を取り、ロスなく立ち回って一番内側のコースを効率良く走ったエピファネイアが一気に後続を突き放す一方で、ほとんど同じようなコース取りで来ていたジェンティルは、明らかに伸びない・・・。
個人的には今回も好勝負を演じるのではないか、と期待していたイスラボニータは、少々距離が長すぎた(?)ようで、今回は勝負に絡むことなく消えて行ったが、外側のコースからフランス帰りのジャスタウェイ、そして、またしても外から、というスピルバーグに、ゴール前で次々と交わされ、あえなく4着。
最近では忘れられがちになってきていたとはいえ、勝った馬は昨年の菊花賞馬。そして先着を許した他の2頭も、世界ランク1位と、今が旬の天皇賞馬で、全て牡馬、ということを考えると、5歳を迎えたジェンティルドンナにとっては少し荷が重かったところはあったのかもしれないけれど、これまでの敗戦とは比較にならないような「力負け」だっただけに、やっぱり切ない・・・*1。
陣営も相当ショックを受けたのか、翌日の朝刊では、
という石坂正調教師のコメントとともに、年末のグランプリへの参戦が堂々と宣言されており、今回の負けが文字通りの“ラストラン”にならなかったのが、不幸中の幸いだとは思うのだけれど、【3200】と完璧な戦績を残していた東京コースとは異なり、次の舞台となる中山競馬場と彼女との相性は全くの未知数である。
今年の全てが終わった時、今、一喜一憂している自分のありきたりな予想を大きく覆すような最後のサプライズを目撃することができているのか、それとも、より空しさがこみ上げる結果になってきてしまうのか。
ここまで、度々ドラマチックなレースを見せてくれていた馬だけに、もちろん最後、笑って迎えることができるなら、それに越したことはないのだけれど・・・。
半分ずつの期待と不安を抱えながらあと1ヶ月弱、何らかの形で、彼女が“有終の美”を飾れることを、今はただ、願うのみである。