波乱の100m代表争いとピーキングの難しさ

シーズンが始まった頃から、「今年こそ9秒台」というムード満点だった日本男子陸上100m。

高校時代から一身に注目を集めていた桐生祥秀選手(ベストタイム10秒01)に加え、昨年の五輪で10秒05を叩き出した山縣亮太選手、そして、今シーズン、追い風参考ながらケンブリッジ飛鳥選手、多田修平選手と2人も10秒の壁を破り、「この中から誰が世界陸上の切符を掴むのか?」というのが大会前の最大の注目になっていた。

それが・・・である。

蓋を開けてみれば、予選、準決勝と最速タイム(10秒06)をマークし、決勝でもさらにタイムを10秒05にまで更新したサニブラウン・ハキーム選手が堂々の優勝。
2002年に朝原宣治選手がマークして以来、実に15年ぶりの大会タイ記録で文句なしの世界切符を掴んだ。

そして、いつもの年なら優勝しても何ら不思議ではない10秒16、10秒18、というタイムで多田選手、ケンブリッジ選手が続き、ここまでが表彰台。

一方で、桐生選手は3位から遅れること0秒12で4着。山縣選手はさらに遅れて6着、と、シーズン初めの期待感はどこへやら・・・という結果となってしまった。

山縣選手の場合、3月に10秒0台を2度マークした後に、故障で大会を欠場していたりもしていたから、今回の結果にはやむを得ないところもあったのかもしれないが、今年は故障と無縁だったはずの桐生選手が今シーズンのベストタイムから0秒2以上遅れるタイムに沈んでしまったのは、何と言えば良いのやら・・・。

3月に調子を上げて好タイムを叩き出した2選手が表彰台に残れず、先月9秒台を出すまではあまり知られていなかった多田選手が2着に入った、というあたりに、長いシーズンのどこにピークを持ってくるか、ということの難しさを感じさせられるわけで、特に、10秒0の壁の前に多くの有力選手がひしめき合っている(裏返せば、傑出した存在はいない)今の日本の陸上短距離界を考えると、ちょっとしたピークのずれが命取りになってしまうのだなぁ、とつくづく感じさせられるのであるが、次の五輪まであと3年。

今日「明」のど真ん中にいたサニブラウン選手、多田選手といった選手たちが、この勢いを8月のロンドンまで持続できるのか、そして、今回「暗」に落ちた選手たちの経験が、来年以降どういった形で反映されるのか、いろいろと興味は尽きないところではある*1

*1:勢いや年齢からすれば、このままサニブラウン選手の一人勝ち時代が到来しても不思議ではないのだが、そう単純ではないのがスポーツの世界でもある。

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