本当に強く美しいもの。

小平奈緒選手の歓喜の瞬間から一夜明けたが、ニュースでは引き続き「あの瞬間」が繰り返し流れている。

今大会から“一本勝負”になったことによる分かりやすさ。
そして、どんなに短い尺でも収まる「約37秒」の戦い、というのが、同じ映像をリピートさせる最大の原因だろうが、逆に言えば、この種目は予選もない一発勝負。

4年間の努力の結果が1分にも満たない時間の中で突き付けられる、という夏冬通じても他になかなかない残酷な種目なのであり、だからこそ、「大本命」という立場で勝ち切った小平選手の金メダルはより一層輝くことにもなる。

・10年以上もスケート一筋、世界の頂点を目指して戦ってきたある種の「求道者」。
・大学卒業後も実業団チームに所属することなく、結城匡啓コーチ(信州大)と二人三脚で歩んできたここまでの道。
・そして、ソチ五輪での苦い経験からオランダに単身武者修行に行き、最強のフォームを身に付けた。

などなど、道なき道を行きつづけた小平選手を語るエピソードは、いずれも平凡なものではなく、そして、どんな世界でも頂点を目指す者への教訓が詰まっている。

だから、自分も今回の五輪を通じてこの選手がますます好きになったところはあるのだが、中でも、次のエピソードはとびっきりだった。

「平昌冬季五輪のスピードスケート女子500メートルで小平が韓国の李相花を抑えて優勝したことを受け韓国各紙は19日、小平が競技後、李に韓国語で「チャレッソ(よくやったね)」と声を掛けたなどと詳報し、これまで2人が刺激し合って実力を高めてきたとして「ライバルの力」などと伝えた。中央日報(電子版)は2人が「まるで一つのチームで金、銀メダルを取ったかのように互いをねぎらった」と表現。李が小平に寄りかかるように抱き合う写真が、インターネット上で「五輪の意味を伝える写真」「2人のチャンピオンがつくった美しい光景」と称賛されていると伝えた。」(日本経済新聞2018年2月19日付朝刊・第29面、強調筆者)

平昌五輪公式HPの配信メールでも、大きな写真と共に紹介されたこのエピソード。
李相花(LEE Sang-Hwa)選手は、バンクーバー、ソチの2大会で女子500メートル金メダル。W杯でも10シーズン近くにわたって世界のトップ3の地位を譲らなかった選手で、五輪記録は今回小平選手に破られたものの、36秒36、という世界記録は未だに破られていない。

そんな伝説の選手、そしておそらくピークは過ぎた、ということを自覚しつつも、母国での五輪開催に合わせて仕上げてきた彼女が、0.39差という大きくもないが小さくもないタイム差で銀メダルに留まった時に、相手の国の言葉で、そっと一声かけてねぎらったその心意気があまりに格好良すぎて・・・。

かつて、日本の選手たちが世界の厚い壁に阻まれ続けていた時に、その競技のレジェンド的な海外の選手から労われていたシーン、というのは良く見かけたものだが、今回は、この大舞台で「25連勝」を飾った小平選手がその役目を担った、ということで、遂に日本もここまで、と思ったのは、筆者だけではないはずなのである。

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