これぞマッチポンプ。

13日の夕方から翌朝にかけて、巷を駆け抜けたホットニュース。

「政府・自民党は13日、違法ダウンロードへの規制を強める著作権法改正案の今国会提出を見送ると決めた。今夏の参院選を控え、規制に反発するネット世論に配慮した。規制対象を広げる内容に利益が保護される著作権者側から「ネット利用を萎縮させる」と異論が噴出。安倍晋三首相の政権運営への悪影響を懸念した甘利明選挙対策委員長が見送りを主導した。」(日本経済新聞2019年3月14日付朝刊・第2面)

以前のエントリーでも取り上げたように、今回のダウンロード規制に関しては、文化庁がずいぶん焦った動きをしているな、というのが率直な印象だった。

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なので、動きが止まること自体は起きても不思議ではなかったのだが、自民党の部会での審査をいったんは通過した法案が総務会レベルで差し戻され、国会提出を見送られる、というのは、少なくとも知財関係法案ではかなり異例のこと。

「甘利氏は西村氏や柴山昌彦文科相らへの根回しの過程で、参院選を念頭に「へたに説得を続けても過熱するばかりで誤解が誤解を呼ぶ。丁寧に議論を積み上げ直すべきだ」と訴えた。」(同上)

などとまで書かれているのを見ると、かつて特定の利益集団の側によりがちだった著作権政策が、遂により広い有権者の意思に左右されるものになってきたのか!と、京俊介先生に改めて分析をお願いしたい気分になってくる。

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そして、SNS上では、この結果を受けて、国会議員や、その発言を見聞きした一部の人たちが「さすが自民党」的なコメントの書き込みまで見かけるのだけど・・・


冷静に考え直すまでもなく、今回の著作権法改正は、昨年来盛り上がっていた「海賊版対策」の政策の流れの中に位置づけられるものだし、一部の「人権」オリエンテッド有識者の抵抗にあって「サイトブロッキング」が頓挫したのを受けて、文化庁が拾って政策のバスケットの中に突っ込んだものである。

だから、こういった大きな政策の流れの源流を遡っていいけば、首相官邸や総理に近い議員たちの名前も当然出てくるわけで、先ほどの日経紙の記事に出てくる甘利議員にしても、元々は熱心な旗振り役だったはず。

だとしたら、自民党の総務会で差し戻しになった、といったところで、所詮はマッチポンプじゃないか、と思わずにはいられない。

筆者自身、「拙速な改正見送り」という方向性には全く異論ないところだが、今回の不可思議な立法プロセスを見てしまうと、短期間とはいえ、審議会でそれなりの時間をかけて結論を出した意味がまた薄れてしまうような気がして、複雑な思いで眺めているところである。

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