勝手に連動企画?(その1)

諸般の事情で出先でPCが使えない、という事態に陥ってしまったこともあり、昨晩からあまり長い文章が打てなくなっているのだが、これを奇貨として、といって良いのかどうか、今夏のセミナーで講義していただいているテーマに関して、自分今まで何を書いてたっけ?ということを振り返る機会に充てることにしたい。

著作権の保護範囲

いわゆる著作権の類否(類似性)判断の話で、江差追分最高裁判決の読み方から、その後の理論構成や判断手法の変遷まで非常に奥の深い分野なのだけど、振り返ると、このブログではほとんどこのテーマを正面から取り上げたことがなかった・・・。

(学者の先生も含めて)みんなこぞって取り上げるからそこで張り合っても仕方ない(?)と思っていたからなのか、いずれ社外某団体で取り上げる判例のコメントを先に残すことに気が引けたのか、あるいは感覚的な類否の印象を言語化するのに手を焼いたからか、そもそも純粋に分析する時間がなかっただけなのか、今となっては記憶も定かではないのだが、「釣りゲーム」事件ですら、第一審、控訴審ともさらっとしか振れていなかったことには反省しかない。

一応、当時の実務者としての素朴な感想を記したエントリーがあったので、それだけはリンクしておく。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

なお以下補足的に。

講義で取り上げられた横浜地裁平成23年6月1日判決は裁判所のHPにもアップされておらず、辛うじてTKCのデータベースに入っている程度(WestLawには入ってない)の事件なのだが、平成24年改正前夜に、いわゆる「写り込み」(というか「写し込み」)のケースでユーザーが勝った、という点では確かに価値ある事件ではある*1

「写真著作物を機械的に複写する増製行為は,通常,写真著作物の複製権を侵害する行為であると解されるところ,本件縮小写真のパンフレットへの掲載は,増製の一形態であるから,原告が有する本件各写真部分の著作権(複製権)を侵害すると考えられなくもない。しかしながら,写真に法的保護の対象となるべき著作物性が備わるのは,被写体の構図,光のとらえ方,陰影の作り方,シャッター速度,露出,レンズ選択,被写体の一瞬の表情の相違,現像手法等の工夫により凝らされる撮影者の思想及び感情の創作的表現が当該写真から感得されるからであり,後行写真等著作物から,先行写真著作物の保護対象である上記表現内容を感得することができず,これを利用しているとはいえない場合には,形式的には,写真著作物の増製に該当するとしても,実質的には,著作権者が有する複製権の侵害があるとはいえないと考えられる。ところで,本件縮小写真が極めて小さく,殊に,そのうち2枚についてはその一部が他の写真部分に隠れていることは前記第2の2(2)のとおりであって,本件縮小写真自体からは,被写体の属性や構図の一部を除けば,原告が工夫を凝らした思想及び感情の創作的表現を感得することは著しく困難といわざるを得ず,むしろ,本件パンフレットを手にする者に,その創作的表現内容ではなく,村上市の自然や風物が被写体である写真絵はがきが「おもてなしプレゼント」の1つであることを認識させるにとどまるということができる。そうすると,本件縮小写真の掲載された本件パンフレットの頒布は,形式的には増製に該当するとしても,実質的には原告の本件各写真部分における上記創作的表現を利用するものではないというべきであって,その複製権を侵害する行為とは到底いうことができない。

あと、このテーマに関しては、ちょっと前に旬だった「金魚電話ボックス」をどう整理すべきか、という点がやはり気になるところ・・・

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

実用品デザインの保護 & 応用美術の保護の可能性

一方、こちらのテーマに関しては、昔からかなり追いかけていた。

実用品デザインに関してはこちら。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

応用美術に関してはこちら。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

正直、昔のエントリーは筆が滑りすぎてて「若気の至りでした、申し訳ございません・・・」というお詫びしか出てこないのだが、時間が経って、「あの頃」のお話を聞けるのは本当に幸せなことだなぁ、とつくづく思う。

なお、「棲み分け」の話に関しては、「応用美術だって著作権で保護されるんだから意匠法の保護範囲広げる必要なんてないだろう!」という筋でやってきたのだが、某庁にはあまり聞く耳はもってもらえなかった、ということは一応書き残しておく・・・。

(翌日のエントリーに続く)

*1:原告側に代理人がいなかった、という事情はあるが。なお、世の中的には被告名もオープンになっていない事件だが、事案の概要から推して知るべし。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html