ボーナスの季節に走った戦慄。

自分はこの記事を見た時に思わず目を疑ったし、同様の感想を抱いた人も多かったのではないだろうか。

トヨタ自動車課長級以上の管理職の2019年夏の一時金(賞与)を前年に比べて平均4~5%減らす。足元の業績は堅調だが、自動運転や電動化などの分野の開発競争の激化を受け、危機感を共有する狙いがある。若手社員など管理職ではない組合員平均では夏の賞与は1割下がるが、冬の支給分は秋からの労使交渉で協議する。」(日本経済新聞2019年6月13日付夕刊・第1面、強調筆者、以下同じ。)

自動車の分野で開発競争が激化している、というのは公知の事実だとしても、全世界で売上高30兆円超、営業利益も2兆5000億円を叩き出している会社が、このタイミングで「賞与引き下げ」をあえて打ち出してきた、ということのインパクトは実に大きい*1

冷静に足元を見れば、「研究開発」に利益を回せる会社はまだマシな方で、これから急激に「人を集めて雇う」コストが上昇することが予想される中、それまでと同じことを普通にやっているだけでどんどん利益が食われていく会社がサービス業を中心に増えていくことは間違いなく、仕事の量も忙しさも変わらないのに、給与・賞与でそれを実感できない虚しさが世の中に広がっていくことは、容易に想像がつくところ。特に大企業の30代後半~40代の管理職層にとっては、マネジメントにかかるプレッシャーに加えて、経済的な恩恵も享受できない苦しい時代になってくることは、ある程度覚悟しないといけない。

ただ、「賞与」というのは、それまでの成果に対する評価なのだから、好業績を上げた期の直後に引き下げる、というのは本来禁じ手だと思うし、そんなことをしても、「危機感を共有」する以前に、社員のモラールダウンを招く蓋然性の方がはるかに高い。

成熟した会社の経営者の中には、業績に追い風が吹いている時にも、ああだこうだと理屈を付けて、組織をムダにいじったり給与体系をいじったりしようとする人が多いし(もちろん、業績が悪かったら悪かったで、社員向けの財布の紐も締めに行く)、挨拶の節々に、常に危機感をあおるようなフレーズを入れて「経営者としての仕事をしてる感」を出そうとする人も時々いるのだけど、「上から押し付けられた危機感」が良い方向に働くことなんてまずないのであって、同じような「改革」、同じような「言葉」が繰り返されることによって、かえって多くの社員の感覚がマヒしてしまう(ゆえに、本当に起きている「危機」すら見過ごしてしまう)リスクすらある。

大事なのはメリハリ。

本当に風向きが変わりそうなタイミングならガチっと引き締めればよいが、そうでない時は、素直に最大限社員を褒め、報いる。
そして、今回のトヨタのような、決して適切とは言い難い「メッセージ」発信の仕方には追随しない・・・。

常識的な日本企業には、そうあってほしい、と願っている。

*1:引き下げても「組合員平均」で120万円、というスケールの会社だから、ここ数年の上げ幅が大きすぎて調整した、というだけなのかもしれないけど。