「2019年6月21日」という日は、後々、日本のスポーツ界にとってエポックメイキングな一日として語り継がれることになるんじゃないか、というくらい、画期的な出来事が相次いで起きた日だった。
一つ目は、実質U-23の日本代表がコパ・アメリカでウルグアイと引き分けて勝ち点1を獲得したこと。
しかも、試合を支配しスコアでも2度先行する、という互角以上の戦いを見せての結果だったから、刻まれた足跡としては非常に大きかった。
もう一つは、NBAドラフトで、八村塁選手がワシントン・ウィザーズにドラフト1巡目で指名されたこと*1。
大学であれだけ活躍すれば、当然そういう評価になるのだろうが、指名したチームが1年目からレギュラーに食い込める可能性が高い弱小ウィザーズだった、ということも、彼のその後の人生にとってはプラスになるはず。
で、ここまでならとてもハッピーな気分で終われるところだったのだが、最後の一つがなんとも微妙な話なわけで。
「女子テニスで世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、20日に行われたネイチャーバレー・クラシック2回戦で同43位のプティンツェワ(カザフスタン)にストレートで敗れた後、記者会見の出席を拒否した。ツアーを管轄するWTA(女子テニス協会)は罰金を科す予定だという。」(日刊スポーツWeb2019年6月21日15時配信)
https://www.nikkansports.com/sports/news/201906210000445.html
曲がりなりにも「世界ランク1位」の地位にいる選手が、ウィンブルドンの前哨戦の大会で格下相手に完敗した、ということ自体がインパクトの大きいニュースだし、それだけ注目が集まっている状況で「会見拒否」という一番やってはいけないことをしてしまった、ということも輪をかけて事態の深刻さをうかがわせる。
日本のメディアは、一度頂点を極めた日本人選手に対して徹底的に優しいから、日本国内では大坂選手に関するネガティブな報道が流れる機会もそんなに多くはないのだが、彼女に関して言えば、サーシャ・バインコーチとの関係を解消した今年2月以降、基本的には下り坂で、あれ以来、WTAツアーではランキング2桁台の選手相手に星を落とし、1大会を除けば良くてQuarterfinalsどまり、という試合を繰り返しているし、全仏オープンでもRound32で敗退の憂き目にあった。
実力拮抗の今の女子テニス界では、上位ランキングの変動も日常茶飯事だから、今、「1位」であり続けることにこだわる必要はない、という指摘はあるし、実際そのとおりなのだろうけど、問題なのは「負け方」が良くないことで、これだけ不安定な戦いを続けていると、ランキング1位どころか、上位シード選手としてのポジションを保つのも正直難しいんじゃないか、と思えてならない。
大坂選手に関して思っていることは、以前のエントリー*2で書かせてもらったとおりだし、やっぱり、自分を世界の頂点に押し上げてくれたコーチを文字通り”袖にした”あのやり方は、後々「全ての転落の始まりだった」と言われても仕方ないものだと思っている。
あの時、海外の選手・コーチ間の関係のドライさ、ビジネス的な要素を強調する言説もよく見かけたが、大坂選手の場合、海外選手にありがちなビジネスライクな関係解消というより、極めて日本的などろどろした別れ方のように外野からは見えて、”恩義”どうこうの話に行く前に、そもそも自分にとって合理的な選択肢が何なのか、ということに選手本人が気づいていなかっただけじゃないか、と思ったりもしたのだが、蓋を開けてみると、やっぱりそうだったんだろうな、と感じさせられるところも多い。
覆水は盆には返らない、というのが基本だから、たとえ、大坂選手がこの先見えていなかった何かに気付いたとしても、そう簡単に元コーチとの契約を取り戻すことはできないだろうし、取り戻したところで、空白の期間の後退を取り戻すためには、彼女が頂点に駆け上がるまでに要した期間以上の時間が必要になる可能性もあり得る。
だが、今冷静になってきちんと振り返らない限り、事態は決して良い方向には向かわない、というのも、おそらく真実なわけで・・・・。
自分が大坂選手に「同情」を寄せることはしばらくないだろうけど、逆の立場で苦渋を味わった者として、「少しでも早く目を覚ませ」と思わずにはいられないのである。