必要なのは、「選ぶ」ための選択肢。

7月21日投開票予定の参議院選挙は、公示から既に1週間以上経ち、今まさに選挙運動真っ盛り。
街に出れば、大概どこかの選挙カーが候補者名を連呼しながら走っている。

衆参同日選というビッグイベントにこそならなかったものの、一応「令和初の国政選挙」。
現政権が異常なまでの「長期化」で、あちこち綻びも目立つようになっているだけに、本来ならもう少し盛り上がっても不思議ではないはず。

だが、各メディアを見ても、SNSのコメント等を眺めていても、盛り上がっている(ように見える)のは、ほんの一部だけで、世の中の空気としては、概してここ数回の低調さをそのまま引きずっている雰囲気があるのは否めない。

今回改選期を迎えるのは、2013年の参議院選挙で当選した議員たちだが、前回の選挙の頃は、政権交代から日が浅かったこともあり、いい意味でも悪い意味でも、”民主党政権”の功罪をめぐって、大の大人がガチで喧嘩するような騒々しさがまだ残っていた。

しかし、それから6年。

旧民主党系の議員まで取り込んで鵺のように巨大化していく与党と、内ゲバを繰り返して小さくなっていく野党との差はもはや歴然としており、少なくとも既存の野党は*1、既に選挙戦が佳境に差し掛かっているにもかかわらず、まだ同じ土俵に上がることすらできていないように見える*2

そして、ここ最近の選挙のたびに抱いている感想とも重なるのだが、個人的な不満を言えば、どの政党の公約を見回しても、自分の考えにぴったりマッチするようなものが一つもない・・・

もちろん、政治とは様々な利害関係者の妥協の産物だし、「政党」という形をとっていても、そこに様々な思想・政策、思惑を持つ人々が集うことは当然想定されていることだから、一から十まで自分の思い通りの公約を掲げてくれ、などということを望んでいるわけではないのだが*3、今起きている現象は「社会科の教科書にすら出てきそうな根本的なところで選挙公約の一貫性がない」という問題で、これにはどうにも困ったものだなぁ、と思わずにはいられない。

少々乱暴ではあるが、分かりやすく言うならば、社会保障や教育支援の強化」とか「積極的な財政出動」を政策に掲げるのであれば、財源確保策も当然セットで掲げられるべきだし、そのための手段として「増税」も避けられないわけで、前者を高らかに公約で掲げつつ、「消費税10%凍結」とか「廃止」等々を叫んでいる政党が多くを占めているのを見てしまうと(そしてそのバーターとして、全くあてにならない法人税の引き上げ等*4を公約として堂々と掲げられてしまうと)、見ている方としては、どうにもこうにも頭を抱えることになってしまう。

強すぎる与党との「対決」構図を打ち出す上で、「消費税をポジティブに評価するわけにはいかない」という戦術的なジレンマはある程度理解できるとしても、今の日本の逼迫した財政状況を前にして、”いいとこどり”でお茶を濁すことは本来許されないのであって、そこは単なる”リアクション”戦術ではなく、政策に筋の通った「幹」を入れる努力をしてほしいなぁ、と思わずにはいられない*5

で、こんな時だから、ということで、平成31年度予算の概略を改めて眺めてみた。
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/01.pdf

自分は元々「財政均衡主義」の方に親近感を持っていて*6、だからこそ今の長期政権の政策を苦々しく眺めているのだが、かといって方針転換しようと思っても、「社会保障関係費が歳出の3分の1強を占め、前年度比でも兆円単位で膨張している」という状況で、できることは限られている。

それでもあえて、「公約」をひねり出すとしたら、以下のような感じになるだろうか。

・消費税率10%引き上げ断行。(不公平感を生じさせる「軽減税率」の導入を行わないことで+1.1兆円歳入確保)
・消費税率引き上げによって生じるマイナスの影響は、「課税所得330万円以下の層に対する所得税免除(又は税率軽減)」という荒業で一気にリカバリーさせる*7
・法人所得の国外移転を防ぐため、法人税率は現状で維持するものの、諸々の政策的な免税・税軽減措置は基本的に撤廃する*8
公共事業関係費の徹底的な絞り込み*9。また関連して「コンセプト」と実際にやっていることが必ずしも合致していない「地方創生」もいったん施策自体撤回する。
産業活性化のための対策費や中小企業対策費も削れるだけ削る*10
・昔から悪名高きODAは、廃止とまではいわないまでも極力削減。また「インフラ輸出」とか「クールジャパン」も、お上がしゃしゃり出るような話では本来ないので、国の施策としては廃止。
社会保障関係費は、現状の方向性維持。ただし医療費負担額に関しては減らす方向で健康保険被保険者の自己負担増も選択肢とする*11
・防衛関係費についても、大幅に削減できるような状況ではないので、現状の方向性維持。ただし、装備系のお金の使い方にはもう少しメリハリを付ける*12
・以上の歳入増と歳出カットで浮いた分の一部は、文教・科学振興予算、それも高等教育機関の人的・物的研究環境を充実させる、というところに突っ込む。一方で、平行して大学の統廃合も急ピッチで進める。
・そして、それでも頑張って余裕を残して公債発行を抑制し、国債依存度20%以下への引き下げを早期に実現する

まぁどう見ても、票にはならないことは明らかな「公約」ではあるのだけど・・・(苦笑)。


なお、より抽象的なテーマを掲げるなら、「耐えて粘ろう、ニッポン!」といったところだろうか。

既に、国内産業の飛躍的な成長など望むべくもない状況に置かれているこの国で、今やるべきことは、変化する時代に翻弄されたり、周辺の国に飲み込まれたりすることなく、自国の独自性、独立性を保ったまま、「徹底的に守り切る」ことだ、と自分は思っている*13

だから、耳あたりの良さくらいしか取り柄のない総花的な「成長戦略」の旗はもういい加減に下ろすべきだし、この国が将来人々の生活を満足に守っていけるかどうかも分からない以上、「少子化対策」も不要で*14、むしろ「少数」の利を生かして、「傑出した人材」と「傑出した技術」を生み出すための投資にシフトしていくことが、生き残るための最善の策ではなかろうか*15

以上をもって、「夢がない」と思うか、「それもありかな」と思うかは、まさに人それぞれだろう。

ただ、いずれにしても、今回の選挙で同旨の方向性を示してくれている政党・候補者が見当たらないことに変わりはないので、投票に際しては、「インパクトはあっても、実害はない」という結果につながることを意識して、”清き一票”を投じることになるのかな、と今は思っている。

*1:この点、最初から全く別の土俵を作って戦いに挑んでいる「報じられない野党」たちの方が、少なくともSNS上では、結果的にポジティブな反響を呼んでいる、という皮肉な現象も起こっている。

*2:地方の一部の選挙区では「野党統一候補」が善戦している、という声も聞こえてくるので、地域によってその辺は異なるのだろうが、「統一候補」と言っても所詮は選挙のための一時的な連合。仮に与党候補に勝ったとしても、当選後にどの会派に属するのか等々、後々の火種を増す原因が新たに生まれるだけ、という結果になってしまうような気もする。

*3:そこまで言うのであれば自分で政策集作って出馬しろ、という話になってしまう。

*4:法人税にしても、高所得者所得税にしても、今引き上げたら海外への所得、資産移転を招くことになりかねないし、そもそもこの先、法人税の税収の伸びを期待できるような経済状況でもないわけで、「大きな政府」を志向するのであれば「消費税10%」を回避するという選択肢は本来ないはず、と自分は思っている。

*5:その意味で、「小さな政府」志向を徹底する、という点で一本筋が通っていた、「みんなの党」の初期の政策などが何となく懐かしく思い出されてくる。

*6:だって、そもそも自分の家計や会社だったら「支出の2割以上を債務返済に充てざるを得ない状態で、しかも返済額が年々増えているのに、毎年それ以上の借金を繰り返している」なんて状況を誰も許容しないわけで、「国のことだからこれでいい」という発想は、一種のモラルハザードに他ならないと思うので・・・。

*7:元々納税額シェアとしては1割程度のゾーンなので、歳入に与える影響も少ないという見立て。しかも心理的インパクトとしては消費税率引き上げ凍結よりもはるかに大きい気がする。

*8:この種の政策減税は、様々な業界や経済団体がロビー活動にいそしんだ結果突っ込まれたものも多く、そうでなくても複雑な上に企業の行動を歪めている場合があることも否定できないので、「しがらみ一掃」を旗印に一度全部撤廃してみるとよいのではないか、と思っている。

*9:ここ数年「国土強靭化」というフレーズが躍るようになったが、悲惨な災害をダシに使った土建行政への回帰じゃないか、と思えるような事例も散見されるわけで、当然精査も必要だろう。

*10:この長期政権下での一番の弊害は、官邸と経産省が「民」の領域に土足で平然と踏み込んでくるようになったこと。個人的には経産省それ自体、通商部局と外局を残して解体してしまってもいいのではないか、と思っている。

*11:病院を受診するハードルが低すぎるのが医療費負担増の最大の要因だと思うので・・・。

*12:空、海、ミサイルの装備強化はやむを得ないと思うのだが、機動戦闘車や陸戦を想定した装備に過度にコストを費やす必要があるのかと・・・。

*13:サッカーに喩えるなら、ディフェンスを堅牢に固めて0-0のスコアを守りつつ、時には、前線の突出したプレイヤーの個人技で点を奪って勝ち点を拾い、むざむざと下位リーグに降格しなくて済むくらいのチーム作りをしていこう、といったところか。

*14:目下の生産年齢人口減少や世代構成バランスの悪化に対応するのであれば、端的に外国人労働者の積極受け入れ&定住促進策によるべきだし、いずれそう遠くないうちに、国内で「労働力」を確保する必要性自体が失われていくことになるはずだから(仮に「労働力」を確保する必要が生じたとしても、これだけ成熟した社会で育った人々が、「足りない(単純)労働力」を補ってくれるような存在になることを期待するのは難しいわけで、それを「補う」ためには、欧米諸国と同様に、国を跨いで労働力をシフトさせるしかない)。また、世代構成の問題も、団塊以降の世代が想定されているほど長生きするとは到底思えないので、いずれ落ち着くところに落ち着くだろう、と思っている。

*15:目指すところは「一人当たりGDPで世界No.1!」である。GDPが嫌なら「GNH」でも構わないのだが、いずれにしても人口密集社会で不毛な競争にあけくれるよりは、「人口減少国家」の方が展望が開ける気がする。