立ち返るべき原点が見えなくなってしまう前に -プラットフォーマーと個人情報を提供する消費者との取引における公取委ガイドライン(案)に関するメモ-

今年に入ってからずっとメディアを賑わせ続けている「巨大IT企業に対する独禁法規制」の話が、先週、いよいよ具体的なガイドライン(案)の形で世に出てくることになった。

公正取引委員会は29日、プラットフォーマーと呼ばれるIT(情報技術)企業を独占禁止法で規制するための指針案を公表した情報量や交渉力で強い立場にあるIT企業が個人のデータを吸い上げる行為を独禁法違反の恐れがあると明記。個人の利益を損なわないよう監視を強める。」(日本経済新聞2019年9月30日付朝刊・第1面)
公正取引委員会は29日、個人情報を巡る規制に向け、具体的に独占禁止法に違反する恐れがある4つの類型を示した。大量のデータを囲い込んで個人に不利益を与えるプラットフォーマーへの監視を強める。」(日本経済新聞2019年9月30日付朝刊・第3面)(以上、強調筆者、以下同じ。)

公正取引委員会からも、8月29日付でリリースが出されており*1、今回公表された「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案) 」の全文*2と、9月30日までパブリックコメントを募集する旨の告知*3が行われている。

これを受けて、早速先週末からSNS上でも様々なコメントが飛び交っており、特に独禁法を専門にされている方、得意にされている方ほど厳しいご意見が目立つ。
自分も、本ブログでご紹介してきたこれまでの拙速な議論*4の流れを踏まえると、ツッコミどころは相当ありそうだなと思っていたのだが、実際に目を通してみるとこれがまた想像以上に飛んでいて、確かにこれは「おやおや」と言いたくなるなぁ・・・というものだった。

おそらくこの話題はまだまだしばらく続くだろうから、今回の公表内容を手元に備忘として残しておくとともに、これから何でもいいからパブコメを書こう(特に拙速な規制強化に反対する側で)と考えておられる方々に何らかの手がかりを残せれば、という思いも込めて、以下、今回のガイドライン(案)の内容を簡単にまとめておくことにしたい。

「優越的地位の濫用」の各要件解釈に加えられた微妙なアレンジ

このガイドライン(案)は、冒頭で規制に関する「基本的な考え方」を示したうえで、各要件へのあてはめと具体的な類型の例示へと進んでいくのだが、話の都合上、まず、各要件へのあてはめのところから見ていくことにする*5

参考までに規制の根拠条文は以下のとおり。

独占禁止法第2条第9項第5号
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ (略)
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること*6

これをもとに、ガイドライン(案)では、まず、

「取引の相手方(取引する相手方)」には消費者も含まれる。」(2頁)

ということを明確に示し、さらに、

「個人情報等は,消費者の属性,行動等,当該消費者個人と関係する全ての情報を含み,デジタル・プラットフォーマーの事業活動に利用されており,経済的価値を有する。」
「消費者が,デジタル・プラットフォーマーが提供するサービスを利用する際に,その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は当然,消費者はデジタル・プラットフォーマーの「取引の相手方(取引する相手方)」に該当する」

として、対象取引に独禁法2条9項5号を適用する大前提がある、と断定した。

確かに、前記条文だけを見れば、文理上、「取引の相手方」から一般消費者が除外される、と解釈できるような手掛かりはないから、ここまで自信をもって言い切られてしまうと、(これまで適用対象として消費者を想定していた人がいかに少なかったとしても)即座に反論するのはなかなか難しい。

だが、ここからさらに進むと、だんだん怪しくなってくる。

「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」という要件に関して示されたのは以下の解釈基準。

「⑴ デジタル・プラットフォーマーが個人情報等を提供する消費者に対して優越した地位にあるとは,消費者がデジタル・プラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても,消費者が当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合である。」
「⑵ 消費者がデジタル・プラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても,消費者が当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合であるかの判断に当たっては,消費者にとっての当該デジタル・プラットフォーマー「取引することの必要性」を考慮することとする。」
「①消費者にとって,代替可能なサービスが存在しない場合,②代替可能なサービスが存在していたとしても当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスの利用を止めることが事実上困難な場合,又は,③当該デジタル・プラットフォーマーが,その意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の取引条件を左右することができる地位にある場合には,通常,当該デジタル・プラットフォーマーは消費者に対し取引上の地位が優越していると認められる。」
「⑶ また,優越的地位にあるデジタル・プラットフォーマーが消費者に対して不当に不利益を課して取引を行えば,通常,「利用して」行われた行為であると認められる。」
「⑷ これらの判断に当たっては,消費者とデジタル・プラットフォーマーとの間には,情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することを考慮する必要がある。」

これだけ読んでも、どこが不自然か、ということには一見しただけでは気付きにくいのだが、公正取引委員会が既に出していた「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 」(平成22年11月30日制定、平成29年6月16日改正)*7や、これまでの審決例等で示された基準と比較すると一目瞭然・・・。

「1 甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。」
「2 この判断に当たっては,乙の甲に対する取引依存度,甲の市場における地位,乙にとっての取引先変更の可能性,その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する。」


「1」に関しては、平成22年のガイドラインで示されていた「事業経営上大きな支障」とか、「著しく」といったフレーズが今回のガイドライン(案)からは完全に抜け落ちているし、「2」に関しても、複数の具体的な要素を総合的に考慮する平成22年ガイドラインの考え方に対し、今回のガイドライン(案)は、②デジタル・プラットフォーマーの代替性や市場での地位にかかわらず「単に止められない」というだけで、あるいは、③「ある程度自由に」取引条件を変えることができる、というだけで「優越」性が認められかねない状況になっている*8

また、続く「正常な商慣習に照らして不当に」に関しては、

「「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は,優越的地位の濫用の有無が,公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものである。ここで,「正常な商慣習」とは,公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいう。したがって,現に存在する商慣習に合致しているからといって,直ちにその行為が正当化されることにはならない。」(3頁)

というくだりこそ平成22年のガイドラインと同じような書きぶりになっているものの、その後に示されている類型は、

ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。
(「消費者が利用目的を理解することが困難な状況において,消費者に個人情報を提供させている場合には,利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得したと判断される場合がある」と記載されている点に留意が必要)
イ  利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報を取得・利用すること。
(「消費者本人の明示的な同意を得て提供を受ける場合は,通常,問題とならない。」としつつ、「消費者が,サービスを利用せざるを得ないことから,利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報の提供にやむを得ず同意した場合には,当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合がある。」と記載されている点に留意が必要)
ウ  個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報を取得・利用すること。
(この点に関しては具体例が何ら記載されておらず、個人情報保護法第20条とパラレルに考えて良いのかどうかすら分からない、という点が怖い・・・)
エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対し,消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に,個人情報等の経済上の利益を提供させること。
(この場合は、「当該追加的な個人情報等の取得が,上記アないしウにおいて問題とされているような行為を伴わずに行われた場合であっても,問題となる。」ということだが、そもそもどのような個人情報等の提供が「対価」で、どのような提供が「それとは別に」行われるものなのか、ということを明確に区別するのは難しいように思われる)

と、少なくとも現行の個人情報保護法の下では「正常」と考えられていたサービス上の個人情報取得・利用にまで一気に網をかけていくようなドラスティックな内容*9で、「協賛金の負担強要」とか「社員の派遣強要」といった「いかに『商慣習』といっても今どきそれはちょっとまずいよね・・・」というタイプの類型が記載されていた平成22年のガイドラインとは質的に大きく異なるように思えてならない。

アレンジを正当化する理屈と、それによって見失われかけているもの

以上のとおり、これまでの「優越的地位の濫用」規制の適用に関する要件がかなり緩やかになった、という印象を与える本ガイドライン(案)だが、公取委は、以上のような違いを正当化する理屈として、以下のような「基本的な考え方」を示している。

「事業者がどのような取引条件で取引するかについては,基本的に,取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものであるが,事業者と消費者との取引においては,「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」消費者契約法〔平成十二年法律第六十一号〕第1条)が存在しており,消費者は事業者との取引において取引条件が一方的に不利になりやすい。」(2頁)

「情報の質及び量並びに交渉力の格差」というフレーズは、優越的地位の認定の判断基準が記されたくだり(3頁)にも出てきており、要するに、「事業者間で取引される場合とは訳が違うのだから、当然緩やかに2条9項5号の適用が認められてしかるべきだよね」というトーンが随所から滲み出ているのがこのガイドライン(案)ということになる。

だが、そうなると、独禁法は、そもそも何を守るための法律だったっけ?」という疑問が湧き上がってくるわけで、

「事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」

という第1条の目的規定*10を読み返すまでもなく、まず公取委が気にすべきは(本ガイドラインには出てこない)巨大プラットフォーマーの情報寡占によって他の競争者が排除される状態を解消すること、であり、「取引相手方」としての「消費者」のストレートな保護は消費者契約法の運用の方に委ねるべきではないか、というモヤモヤ感がどうしても残ってしまう*11

今回のガイドライン(案)に対し、個人情報保護委員会は、「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に関する個人情報保護委員会の考え方について 」*12というリリースを発出し、

個人情報保護法による規律は、営利性や規模の大小を問わない全ての個人情報取扱事業者を対象としていることを背景に、その規律のレベルは、あらゆる場合に妥当する必要最小限の対応を求めるものともいえる。このため、事業の性質・態様に照らせば消費者にとってより望ましい保護策をとり得る場合であっても、そのような保護策がとられないことをもって、直ちに個人情報保護法上問題があるとは評価されない場合がある。」
「この結果、消費者に対して優越的地位を有するデジタル・プラットフォーマーにあっては、個人情報保護法に違反する場合だけでなく、個人情報保護法に違反するとはいえない場合であっても、消費者に対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる場合がありうる。」

と述べて、公取委のスタンスに理解を示し、「必要な範囲で連携を図る」という姿勢を示している。

確かに一般論としては、個人情報保護の観点からの規制と競争法的観点からの規制は完全に重複するものではないし、異なる法執行機関がそれぞれの見地から対応する、というのも十分あり得ることだと思う(その意味で、変な「縄張り意識」からエアポケットを作ってしまうよりは、「連携を図る」姿勢の方が望ましいといえる)が、本ガイドライン(案)で示された基準による限り、ある程度名の知れた事業者であれば、ほぼすべて「優越的地位を有するデジタル・プラットフォーマー」に該当しうる*13のだから、本件に関しては、Web上のプラットフォームサービスについての純粋な上乗せ規制、と見ることもできるわけで、先述した消費者契約法の話と合わせ、「役割分担として適正か?」という問いかけは、個人情報保護当局側からもなされてしかるべきだろう。


残念ながら、この分野の話はどうしても「GAFA怖い」とか「個人情報の不正利用けしからん」というイメージが先行する形になりがちで、強力な執行機能を持つ機関に権限行使の可能性を与えることによる問題点にまでメディアの目が向くことはめったにない。

だから、日頃から国の政策には厳しい大手の新聞社ですら、独禁法で巨大IT規制 公取委の実行力が課題だ」という表題を掲げて、

・個人情報は今や「宝の山」と言われるほど経済的な価値を持つ。公取委プラットフォーマー規制に独禁法適用を広げたことは評価できる。
プラットフォーマーが個人情報を不正流出させたり、利用者の明確な同意なしに第三者に情報を流したりする問題が続発している。
・最近では、大手就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就活生のサイト閲覧履歴などから「内定辞退率」を勝手に予測して企業に売っていた。
・指針案で示された「優越的地位の乱用」の例に沿えば、リクナビの件は独禁法違反の可能性がある。
(中略)
公取委の陣容が840人弱と米当局の半分以下で、ITに精通した人材が少ない点も不安だ。多数の法律家を擁する巨大IT企業に対抗し切れるかは分からない。
・日本はプラットフォーマー規制で出遅れてきた。欧州連合EU)は昨春施行した一般データ保護規則(GDPR)で個人情報保護を大幅に強化した。政府は来年に予定する個人情報保護法改正も含め、安心できるデジタル社会の実現に向けた包括的なルール作りを急ぐべきだ。
毎日新聞2019年8月31日東京朝刊社説より)*14

と、専門家が見たらひっくり返りそうな「ごった煮」エピソードを並べた上で公取委を支援する、という不思議な現象も起きる。

でも、ある意味、欧州以上に過激な規制を入れた結果、海外のプラットフォーマーが嫌気してサービスを縮小したり、日系プラットフォーマーが萎縮して保守的なサービスに終始するようになってしまったりしたら、結局割を食うのは「ユーザー=消費者」。

それゆえ、欧州の議論に引っ張られたり、直近で起きた事象に飛びついたりするだけでなく、法体系全般に目を配ってバランスの良い議論が展開されていくことを、自分としては心底願うのである。

*1:(令和元年8月29日)「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する意見募集について:公正取引委員会参照。

*2:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/aug/190829_dpfpc2.pdf参照。

*3:提出は以下のページから提出フォームを使って行うことができる。こと本件に関しては、感情的な意見に留まらないロジカルな意見・提案を名のある会社や先生方に行っていただきたいところである。search.e-gov.go.jp

*4:直近のエントリーは以下のものをご参照のこと。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*5:以下の分析のほとんどは、Twitterでの白石先生のコメント(https://twitter.com/tdsshiraishi/status/1166957903716085761)から着想を得たものですので、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

*6:9/3追記:Twitterでのご指摘を踏まえて追記しました。

*7:https://www.jftc.go.jp/hourei_files/yuuetsutekichii.pdf参照。

*8:なお、本年出された山陽マルナカ事件公取委審決(平成31年2月20日)((平成31年2月22日)株式会社山陽マルナカに対する審決について(食品,日用雑貨品,衣料品等の小売業者による優越的地位の濫用事件):公正取引委員会参照)では、「乙が甲による不利益行為を受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様等を総合的に考慮して,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合であるかを判断するのが相当である」という基準が示されており、これに対し、不利益行為を受け入れている事実を取引必要性を推認させる要素と位置付けた先行審決の考え方を変更した、と評する分析もなされている(高宮雄介「優越的地位の濫用に関する最初の課徴金納付命令にかかる審決」ジュリスト1533号7頁参照)。本ガイドライン(案)では「優越」性判断のハードルが極めて低く設定されている上に、「不利益な取扱い」とされる行為の範疇も広いため、「不利益な取扱い」の存在から遡って「優越的地位」を認定することは厳に慎まれるべきではないかと思うところだが、平成22年ガイドラインとの整合性の点も含め、今後議論がどう展開していくのか、注目したいところである。

*9:GDPR対応を一通り行った会社の人がみれば、「まぁEU基準だね」という感想になるのだが、少なくとも昨年GDPR対応を進めている過程でも、国内の運用を全てそれに合わせろ、という話にはなっていなかったはずで、ここまで踏み込まれることのハレーションは決して小さいものではないと思われる。

*10:「事業者間の競争を促進させること」に一義的な目的があり、「一般消費者の利益」はあくまで反射的、二次的なもの、というのが自分の理解だし、これまで多くの人がそのような考え方をベースとして日本の独禁法を理解してきたのではないかと思う。

*11:ガイドライン(案)の「はじめに」に記載された「複数の利用者層が存在する多面市場を担うデジタル・プラットフォーマーの提供するサービスは,ネットワーク効果,低廉な限界費用,規模の経済等の特性を通じて拡大し,独占化・寡占化が進みやすいとされている。また,ネットワーク効果,規模の経済等を通じて,データが集中することにより,利用者の効用が増加していくとともに,デジタル・プラットフォーマーにデータが集積・利活用され,データを基本とするビジネスモデルが構築されると,それによってさらにデータの集積・利活用が進展するといった競争優位を維持・強化する好循環が生じるともされている。」という、いかにも公取委ならではの分析に続いて「 一方,個人情報等の取得又は利用と引換えに財やサービスを無料で提供するというビジネスモデルが採られることがあるところ,消費者が利用するサービスを提供するデジタル・プラットフォーマーが,サービスを提供する際に消費者の個人情報等を取得又は利用することに対して懸念する声もある。」という一節が突如盛り込まれていることに違和感を抱いたのは自分だけではないはずだ。それだけ、諸方面からの「要請」が強い、ということなのだろうと推察するが、”接ぎ木”感はどうしても否めない。冒頭の流れに続けるのであれば、むしろ「囲い込まれる消費者」とその「潜在的取引事業者」を救済するために「データポータビリティを認めないのは不当」といった規制に持っていくという話(取得することが問題なのではなく、独占利用することが問題、とするアプローチ)の方がよほどしっくりくる。

*12:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/190829_houdou.pdf参照。

*13:サービス利用開始のハードルが低く、かつ、使い始めると便利で様々な情報や人脈のコネクションもできてくるので簡単にはそのサービスの利用をやめられない、というのは、あらゆるデジタル・プラットフォームに共通する話で、最近話題になった「リクナビ」ですら、ここでいう「優越的地位を有する・・・」行為者になってしまう、という指摘もあるわけだから、もはや当初言われていたような「GAFA規制」の話からは、大きく踏み越えた話になってしまっている。

*14:社説:独禁法で巨大IT規制 公取委の実行力が課題だ - 毎日新聞参照。

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