注目されるべきは「性別」などではなく・・・

知る人ぞ知る、だった元法務省人権擁護局長、前消費者庁長官が遂に・・・と思ったら、何か感慨深かった。

「政府は20日閣議で、山本庸幸最高裁判事が9月25日で定年退官するのに伴い、後任に消費者庁長官の岡村和美氏を任命することを決めた。」(日本経済新聞2019年9月21日付朝刊・第5面。強調筆者)

このニュースのどこに食いつくかは人それぞれで、一番メジャーな反応は「女性」という点への食いつき(今の最高裁判事の中では、宮崎裕子判事に続く2人目)だろう。

それに次いで、「元検事(&法務省官僚)」という肩書に注目する人もいれば、「ハーバード・ロースクールという経歴に着目する人もいるし、「長島・大野法律事務所出身」というところに目を付ける人もいる*1

で、自分の立場、というか思いからすれば、当然、「元モルガン・スタンレー証券法務部長」というところに目が向くし、おそらくは「初の民間企業法務部(長)出身の最高裁判事誕生」となるであろう事実を感慨深く受け止めているところもあるわけだが・・・


岡村氏に関しては、3年前、消費者庁長官に就任された時にも、このブログで言及している*2

そしてあの時も思ったし、今はなおさら強く思うことだけど、この方がとにかく凄いのは、一つ一つの経歴・職歴もさることながら、「自分の意思で築こうと思わなければ築けないキャリア」を築いてこられてきた、というところ。

弁護士になって、海外の超一流ロースクールに留学して、民間企業の法務部門に転身。そして、その会社で部門の長まで務めたところで検事に転身し、さらにその後の道を開く・・・。

もちろん、人の縁とかいろんなめぐり合わせがあってのことだとは思うのだけれど、あるところまでは間違いなくご本人の意思で、当時は(今でも)決してメジャーではないキャリアが築かれ、だがそれが経験という武器となって「最高裁判事」というポジションにまでつながっている。

それって実に素晴らしいことだな、と思わずにはいられない。

これまで、最高裁の判事というポストは、ピラミッド組織(特に裁判所、検察庁、行政庁の三者)の中を一心に駆け上がっていった結果、辿り着く場所、というイメージが強かったし、そういう道を歩いてきた方々には、同じ組織の中の他の人との比較で、何かしら勝る能力なり人徳なりがあるのは確か。

でも、そういうのとはちょっと異なる道を歩いてきた人にしか出せない「幅」もある、と自分は思うわけで、定年まであと8年以上、という超長期在任も予想される岡村判事には、これまでのバッググラウンドを存分に生かしたご活躍を期待してやまない。

そして、最後にもう一つ。

岡村判事の任期が終わる頃には、「○人目の女性判事」といった見出しが遠い昔の笑い話になっていることを、今は願うのみである*3

*1:長島・大野出身者もこれで宮崎判事に続き2人目、ということで、偶然とはいえ重なるものだな、と。

*2:2016年8月4日のメモ - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~の冒頭記事。

*3:その頃、海の向こうのルース・ベーダ―・ギンズバーグはまだ米国最高裁判事を務めているだろうか・・・?

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