中央競馬も3月に突入すると、俄然”クラシック”の香りが漂ってくる。
例年とはうって変わって年明けの3歳重賞戦線でノーザンファーム産馬の取りこぼしが続き、勢力図が見えづらくなっているのが今年の3歳戦線で、牡馬に関しては、2歳GⅠを制した2頭がいるし、共同通信杯でダノンベルーガ、ジオグリフがワン、ツーを決めたことで、それでもまぁ・・・という感じになってきたが、牝馬に関しては未だ”主役”に指名できそうな馬が出てきていない。
また、今週は、前週末にサウジアラビアで無双の大活躍だったルメール騎手が新型コロナ感染で全て乗り替わり、というのが一大ニュースになったのだが、個人的に驚きだったのは、「欠場」以前に、元々チューリップ賞、弥生賞のいずれにも彼の騎乗予定がなかった、という事実だった。
例年なら複数の”クラシック候補”を抱えて、淡々と仕事をしていくノーザンお抱えの職人騎手に「仕事がない」理由が、牧場・厩舎側の事情なのか、騎手側の事情なのか、その辺はよく分からないのだが、いつもと違う雰囲気が漂っているのは間違いない気がする。
で、そんな状況でも、我こそが大将、とばかりに無敗で弥生賞に乗り込んできたのが、ノーザンファーム産の2歳GⅠタイトル馬、目下無敗のドウデュースだった。
調教師は友道康夫師で、鞍上に武豊騎手を配して東上、となれば当然人気にもなるわけで、他のメンバーとの比較でもここは順当にいくんじゃないかな、と思ったところはあったのだが・・・
蓋を開けてみれば、確かにドウデュースは強かった。
初めてのコースできっちり折り合って先行し、最後の直線でもしっかりと伸びてきたのは一流馬の証で、この時期のハーツクライ産駒的な緩さを感じさせなかったのはさすがの一言である。
ただ、結果としてはクビ差届かなかった。
さらに一歩前で粘ったのは、近年このレースにめっぽう強いディープインパクト産駒のアスクビクターモア。
関東の競馬場を拠点に使い続け、さらに中山コースで既に2勝していたという「地の利」がこの馬にあったことは明らかで、同じコース、同じ距離でもこの結果がストレートに皐月賞に反映されないのは例年の”弥生賞あるある”なのだが、この先どうなろうが、この日のレースで無敗馬に土を付けたというのは間違いなく大金星。
そして3着に飛び込んでちょっとした波乱を巻き起こしたボーンディスウェイとともに、生産牧場がかつての名門・社台ファームだった、ということも、今シーズンの流れを象徴していたような気がする*1。
前日のチューリップ賞では、2歳女王戦で一敗地にまみれたナミュールがリベンジマッチでサークルオブライフを倒して勝利しており、「終わってみれば今年もノーザンファームだった」という展開になることは十分考えられる。
ただ、昨年、自分たちの牧場の生産馬で、一昨年から続いた「無敗クラシックロード」を4月の1つめのタイトルまで引っ張っていたことを考えると、ここで早くも金星献上、というのが”らしくない”面もあることは否定できず、さてこれからどうなるんだろう?と悩みが深まったのも言うまでもないことである。
「負けないこと」への関心が薄まった分、一冠目から馬券的にも妙味があるリアルな戦いが始まる、ということを少し期待しつつ、まだまだ全容が見えない今年の勢力図の行く末に、これから1か月、ちょっと思いを馳せてみることにしたい。