プライムでも、プライムじゃなくっても。

かれこれ3年近く、様々な関係者をザワザワさせてきた東証の新市場区分への移行が、本日、2022年4月4日、慎ましやかに行われた。

日経紙は朝刊でこそ1面トップ記事で取り上げたものの、世の中の視線はキエフの惨状に向けられ、せっかくのセレモニーも夕刊では1面の隅に追いやられる。

肝心の株価も一進一退。最終的には小幅ながら上昇に転じたものの、昼頃に株価ボードを眺めた時には、先月までの反動で低迷しているプライム銘柄も多かった。

移行市場の判定結果が公表され、各社が次々と移行市場を明らかにし始めた頃から、今回の「新市場区分」に対してはずっと冷ややかな風が吹き続けている。

「これは失敗」「何のための新市場区分なのか」と散々揶揄され、経済誌には”危ない企業”のランキングまで組まれ、挙句の果てに、記念すべき移行当日の紙面にまで「利益成長を欠き、海外マネーをひき付けるのに十分でない」と書かれてしまう。

冷静に見れば、プライムだろうがスタンダードだろうが、「上場」していることに変わりはなく、求められる体制も、適用されるコードの中身にも大して変わりはない。

しばしば「負担」として強調される中身の多くは、「プライム」市場に上場することに起因するものではなく、「上場会社」になることに起因するものだったりするのに、中堅規模の会社がプライム市場移行を宣言すれば「背伸びするな」と批判され、スタンダード市場移行を宣言すれば逆に喝采を浴びる不可解。

自分も、スマートに「スタンダード行き」を宣言する会社のリリースを見て、洒落てるな、と思った瞬間が何度もあったのは確かだ。

だが、改めて言うまでもなく、「上場」という選択をした時点で、その会社はルビコン川を渡っている

会社の規模や事業構造に照らせば必ずしも必要ないだろう、といいたくなるような型通りの内部管理体制を要求され、底なしの「IR」を要求するわがままな個人投資家に振り回され、事業よりもマネーにしか興味のないファンドや機関投資家に弄ばれる。

それでも川を渡った以上、会社が目指すべき道は、株主の利益の最大化しかないのであって、それを突き詰めれば行き着く先は最上位市場への上場しかない、と考えるのは当然のことだろう、と今になって思う。

朝刊に7面くらいぶち抜きで掲載された広告で、「プライム」の肩書とともに経営者に思いのたけを語らせた会社がある。
わざわざ適時開示で新しい市場区分に移行したことを高らかに宣言した会社もある。

残念なことに、会社の株価は経営者の志の高さとは比例しない。昨今のウクライナショックで多くのグロース株の株価が沈没しかかったことからも分かるように、時にはシンプルな企業業績にすら逆らうのが「市場」だったりもする。

折しも、景気はここから下降局面に差し掛かることは避けられず、既に各社が公表するQの業績予想も、上方修正より下方修正の方が目に付くようになってきた。

だから、今日という日を晴れやかな気持ちで迎えたであろうプライム1839社のうち何社が、ハードな上場維持基準の洗礼を潜り抜け続けられるかは、全く保証の限りではないし、スタンダード市場の1466社に至っては、それがより深刻な問題にもなってくる。

昨今の親子上場解消の動きや、様々な救済的TOBMBOの動き、そしてそれと呼応するかのように相次ぐ上場延期の動きなどを見ていると、どの市場も、今日発表された上場会社数が下手するとMAXの数字になりかねない、という予感すらする。

ただ、この先どんな結末になろうとも、それぞれの会社が行った選択は最大限尊重されるべきだと思うし、その結果選んだ先が、プライム市場でも、そうでなくても、栄枯盛衰の激しい世の中、今日この日に、古い区分の市場から新しい区分の市場へと歴史的な境界線を越えることができた、というだけで、十分価値があると言えると思うので、今日だけは、今日のこの日を東証上場企業として迎えることができたすべての会社に、最大限の畏敬の念を示したいと思うのである。

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