いつまで続くかこのブーム。

昨年暮れくらいからの傾向が、年が変わってもまだ続いている。

日経紙の紙面を開けば、「賃上げ」。そして「リスキリング」

有名な企業がバスに乗り遅れるな、とばかりに「全社員向けにDX教育を実施」という、冷静に考えればただの内輪の話を外向けにぶち上げ、それがなぜか大きな見出しで記事になり、それに続けて「日本もジョブ型雇用に・・・」という、これまた冷静に考えれば、あまりに短絡的な解説がそれに続く。

もう一つの「賃上げ」も、物価上昇のトレンドが日本にも及び始めた昨秋以降、官邸から経済団体に相当なプレッシャーがかかったのか、ひと昔前の人事労務担当者が見たら腰を抜かすような「賃上げこそ正義!」ムードが政財界に蔓延する中、次々と大手企業が大幅な給与水準引き上げを発表。

でも、よくよく話を聞くと、大幅に引き上げられるのは「入り口」の給与だけで、世代が上がれば上がるほど恩恵は薄くなる。

そうこうしているうちに、世界を見回せば”インフレ”のトレンドは過去のものになりつつあり、様々な指標が深刻な景気後退の兆候を示し始めているのではあるが、一度やると決めたら社長が変わるまでやめられないのが典型的な日本企業。

抜けなければならない嵐を前に、わざわざ積み荷を重くして荒波に漕ぎ出そうとするこの状況を勇敢とたたえるべきか、それとも・・・。


一つだけ言えるのは、世の中のトレンドや、それに乗っかるそれぞれの会社の方針が、そこで働く一人ひとりの人生に一律に同じ影響を与えるわけではない、ということ。

本当に時代の先を見て「学びなおし」をしたければ、会社が旗を振ろうが振るまいが、自分の意志でさっさとやるべきことを始めるべきだし、今の給与水準が生活に見合わない、と感じたなら、会社が給料を上げてくれるのを待つよりも、磨いたスキルでより高い報酬を得られる環境に移るべきなのだが、まさに今起きているブームはそういう「当たり前」を封じる方向に作用するのか、それともブームが去った後に訪れる幻滅が「当たり前」を加速させる方向に働くのか・・・。

個人的には数年待って幻滅するくらいなら「今動け!」と言いたいところではあるのだが、意識の高そうな声を上げているのは、本当は動かない方が得するはずの20代、30代前半くらいの世代ばかりで、本当に動かなければならないし動くリスクも十分取れるはずの40代、50代の動きがまだ目に見えて出てきていないのは、何とも残念なことである。

とはいえ、今はまだ凪。この後、ブームが崩壊する頃に本当の良い波が来ると信じて、まだ不合理な何かに縛られている同世代たちの覚醒を信じ、そっと見守りたいと思っているところである。

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