「会社法務部第9次実態調査の分析=中間報告」について

前日のエントリーでも触れたが、
NBLに掲載されている上記中間報告*1について、
若干のコメントをすることにしたい。
(前回調査は5年前)


1.法務部門の構成

◆法務「部」レベルの組織がある会社は37.8%(前回27.2%)。課レベルを合わせると61.3%に達する。
◆法務担当者の総数は、前回調査から着実に増加。1091社6530名。
◆増加した会社は全体の50.3%。減少は11.7%。
中途採用者の数は、388社902名(前回290社491名)。

部への昇格、増員が多いのは、予想どおり。
むしろ、このご時世に担当者が減少している会社がある方が不思議である。

◆司法試験合格者40社61名(前回28社37名)
◆外国の弁護士試験合格者266名(前回229名)
法科大学院在学者20社21名

5年前に比べると、大幅に司法試験合格者が増えているにもかかわらず、
調査対象1091社のうち「40社しか」合格者を抱えていない、
というあたりが、久保利先生ご立腹の一因だろうか。


もっとも、メーカーの法務の方に聞くと、
合格してから入社してくるパターンでも、
入社してから合格するパターンでも、
何年かすると退社して修習に行く人が出てきたりして、
結構“出入りが激しい”というのが実態のようだ。


法科大学院に社員を派遣している会社は思ったより多い、
というのが率直な印象。
おそらく、新司法試験の合格率が下がれば下がるほど、
(あるいは法曹が過剰になればなるほど)
企業としては、“派遣しやすくなる”わけで、
このあたりは皮肉なものである。


2.法務担当者の採用・教育

◆法務担当者の採用方針は、他部門からの異動が51.4%。新卒採用48.2%、中途採用41.9%。弁護士資格者15.2%。
法科大学院を修了した者の採用については、3分の2以上が「まだ考えていない」。
◆法務担当者の養成は、スペシャリスト志向型が67.5%。

採用方針に関しては、複数回答制、かつあくまで「方針」(実績ではない)ので、
あまり数字はあてにならないが、
「弁護士資格者」15.2%というのは低い数字ではない。
上記の実績とのギャップが、マッチングが難しい現状を反映しているといえようか。


法科大学院の問題については、以前コメントしたとおり。
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20051208/1133977138


養成に関しては、スペシャリスト志向型が67.5%。
「大規模会社で専門化、分業化が図られている」*2そうである。
うちの会社も見習ってほしい。


3.重要案件への対応

◆法務部門の97.6%が何らかの形で関与。
◆重要案件の変更・中止については、70.5%が最終決定を所轄部署で行っているが、法務部門の助言が「ほとんど聞き入れられていない」としたのは0.6%(前回12.1%)
執行役員制度導入には40.2%が積極的に関与、個人情報保護法への対応は75.6%が積極的に関与している。

前回調査で「ほとんど聞き入れられていない」と回答した会社12.1%、
というデータの方が衝撃だった・・・。


このあたりは回答した法務担当者のマインドも数字に反映していると思われる。
法務部が助言しなくても同じ結論になることはあるだろうが、
それをもって、「助言した意味がなかった」と考えるか、
「助言したからこうなった」と考えるかは、気の持ち方次第であろう。


4.法務部門に対する意識

◆「重要視されている」と「ある程度重要視されている」で88.7%(前回87.1%)。
◆「増員の必要性あり」と考える会社が72.2%。
◆法務部門が信頼を得るために大切なこととして、「優秀な人材がいること」68.6%、「社内で良好なネットワークを構築していること」58.8%、「社外の優秀な弁護士とのネットワークがあること」46.6%。
◆法務担当者が信頼を得るために大切なこととして、「幅広い法律知識を有していること」61.0%、「業務の実情に精通していること」41.1%、「代替案が出せる創造性があること」35.3%。

「重要視されている」と考えるかどうかも気持ちの問題だと思う。
経営者が法務リスクに関心を払うようになってきているのは事実なのだが。


「増員の必要性」云々の話については、
法務部門にアンケートをとれば高い数字になるのは分かりきっていることで、
人事部門にアンケートを取ったときに同じ数字が出るかどうかが問題である(笑)。


「法務部が信頼を得るために必要な要素」としては、まあ、こんなものだろう。
ちなみにこの後に続くのは、「意見や助言等の一貫性」「社内への情報発信」。
「訴訟での勝訴等実績」はわずか3.8%に過ぎない・・・*3


「法務担当者が信頼を得るために必要な要素」は、ちょっとずれるかもしれない。
自分が挙げるとすれば、
①「代替案が出せる創造性」、②「案件対応・回答などのスピード」(34.4%)、
③「分かりやすい言葉での説明」(16.0%)、④「バランス感覚」(26.0%)、
あたりだろうか。
人によって何を重視するかは違ってくるだろう。


5.日本の弁護士と企業法務

◆日本の弁護士の利用機会は68.4%が「増加している」。
◆弁護士費用は1000万円以下が50.5%、だが、資本金1000億円以上の企業では、3億円以下が21.6%。

弁護士費用に3億円・・・。卒倒しそうだ。


6.法務部門の関与割合

◆契約交渉への参加59.1%(前回42.8%)、国内債権保全・回収56.3%、契約の企画56.1%(前回41.0%)、消費者関係54.5%(前回30.0%)

あくまで「関与」であって、関与の度合いには濃淡あるような気がする。
個人的には、契約交渉の現場まで立ち合ってナンボ、と思っているのだが、
実際には、“後方支援”に終始するのが常だったりもする・・・。


以上、詳細についてはNBL誌を参照されたい。


5年後の調査でどういう数字が出てくるか、が、
この国の“法律家”の将来を占うことになるように思われるのだが・・・*4

*1:社団法人商事法務研究会=経営法友会「会社法務部第9次実態調査の分析=中間報告」NBL823号44頁(2005年)

*2:前掲48頁。

*3:担当者としてはもっと評価してほしいところだけど。

*4:自分がその時どういう立場にいるかは、神のみぞ知る。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html