年度が替わって新連載も始まった法学教室。
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2007/03/20
- メディア: 雑誌
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今回も掲載されている「新司法試験の結果(3)−選択科目のヒアリング概要」の知的財産法の項が物議を醸しているが*1、今回取り上げるのはそれではなく、今月から始まった『展開講座・知的財産法の重要論点』というシリーズ(160頁以降)。
第1回は、上野達弘・立教大准教授が「著作物性(1)総論」を担当されているが、これがなかなか基礎から発展までスムーズに解説されていて、非常に読みやすい。
何よりも素晴しいと思ったのが、論稿の中で随所に登場する、係争事案に関するビジュアル(写真)。
著作権法の判例を理解する上では、実際に訴訟の場で争われた著作物がどういうものだったのか、ということを知ることが欠かせないのだが、概説書等を見ても、生のビジュアルが掲載されているのは田村善之教授の『著作権法概説』くらいで、特に最近の事例については、テキストを眺めながら想像力を働かせるしかなかった*2。
だが、本件では取り上げられた事例のうち、実に7つもの事例について写真付きで紹介されているから、非常に分かりやすい*3。
そもそもスメルゲット事件やライントピックス事件といった最近の事例まで含め、事例も豊富に紹介されているし、この種の連載にしては群を抜いた充実ぶりといえるだろう。
新司法試験の科目としては、思いのほか人気のない(苦笑)知的財産法であるが、
「知的財産法の勉強がある程度進んでいる読者を主には念頭に置いていますが、初学者にも分かりやすいように、前提的ないし概説的な説明も簡潔に提供したいと考えています」(46頁)
というコンセプトどおりのこの連載が、少しでも知財のファンを増やしてくれることを願っている。
ま、筆者の場合、新司法の問題なんて「読むだけ」だから関係ないけど。
*1:「あまり問題の事案と関係のない典型的論点に飛び付いて、かなりの字数を割いて論じている答案が多かった。そうなれば、当然論ずべき点がおろそかになってしまうわけで、この辺りは予備校主導の論点主義の弊害ではないかと思われる。」(25頁)、というくだり(笑)。なお、前回紹介したときに「執筆者」である山口久枝検事に対する批判めいたことを述べたが、「以下に掲載するヒアリングの要旨は、公表された選択科目考査委員のヒアリングの内容の一部を筆者の判断で要約したもの」(23頁)ということだから、「執筆者」だけが批判される筋合いのものではなさそうである。個人的には、ヒアリングで意見を述べた先生方の名前で発表すれば良いのに、と思うのだが、そうもいかない事情はいろいろとあるのだろう。
*2:もちろん最高裁のHPや判例時報などの判例雑誌に直接当たれば、添付資料として掲載されている場合はあるのだが、普通の人はそこまで手間をかけることはしない。