「私的録音録画補償金制度」は変わるのか?

いつものアドバルーン記事か、日経新聞の一面に「私的録音録画補償金制度」に関する記事が載っていた。

文化庁は2009年度にも、音楽や映像などの私的デジタルコピーに課金する制度を抜本的に見直す方針を固めた。著作権料を録音機器などの価格に上乗せする「私的録音録画補償金制度」を縮小。インターネット配信の著作物については、利用者が複製回数に応じて個別に料金を支払う方法に改める。」(日本経済新聞2008年4月3日付朝刊・第1面)

見出しだけみると、何かが大きく変わるかのような錯覚に陥る。


だが、従来メーカーや多くのユーザーが求めていた「全廃論」に比べるととても評価できる中身ではないし、現実に目に見えるような変革が起きるとはとても思えない。


仮に、この記事に書かれているように、

「ネット配信した音楽や映像を制度の対象から外すことを大筋で容認」

することになったとしても、それ以外の方法で私的に録音・録画される場合には「補償金」の対象になるのだから、現在機器価格に上乗せされている「補償金」が“ゼロ”になるとは到底考えられないし、記事の中でも指摘されているように、

「(そもそも)機器一台当たりの補償金額が小さいため、新制度になっても販売価格が下がるかどうかは不透明」

といえる*1



そもそも筆者の場合、以前から指摘しているように、微々たる額にとどまる「補償金」が廃止されることのメリットよりも、「補償金」制度廃止と引換えに著作権法30条が適用されなくなることのデメリットの方がよほど大きいのではないか・・・、と思っているから、なおさらクビを傾げたくなる。


適法配信か違法配信か、対価にあらかじめ著作権使用料が含まれているかいないか、をズブの素人が見抜くのはそんなに簡単なことではないし*2、この場合に、前者であれば私的複製が(一定の範囲内で)認められるが、後者であれば複製権侵害になる、という帰結になるのだとすれば、利用者としては迷惑なことこの上ない*3


権利者と利用者、というありがちな対立関係だけでなく、機器メーカーも絡む複雑な構造になっているのが「録録補償金」をめぐる問題の構図だけに、当局が打ち出す政策もどうしても妥協の産物にならざるを得ないのかもしれないが、中途半端な妥協策は、そうでなくても歪んでいる私的利用をめぐる著作権法制度をより歪めてしまう、ということを関係者はあらためて自覚すべきだろう。


まずは、決着が付かないまま2年越しの延長戦に突入している審議会での議論に注目することとしたい。

*1:現在のような、家電量販店が主導して電化製品の価格が形成されている状況の下では、補償金額を優に上回るような価格引下げが行われるのも日常茶飯事だろう。

*2:記事の中では、「利用者の複製回数によって対価が変わる」モデルが挙げられているが、全ての音楽配信等をそういったモデルに組み変えるのはあまりに煩雑だし、このようなモデルを取らないと補償金の適用対象外にならない、というのであれば、ほとんど現状維持と変わらないことになろう。

*3:インターネット配信を一律に30条の適用対象外とする制度を採用した場合には、刑事罰が適用される可能性も考えなければならないのであり、利用者としては迂闊にダウンロードできなくなるおそれがある。