改正労基法成立

ここのところの不況風と政治的混乱のおかげで、すっかり置き去られた感のあった労働基準法の改正案がようやく成立した。

「月に60時間を超える分の残業代の割増賃金率を現行の25%以上から50%以上に引き上げる改正労働基準法は5日午前の参院本会議で与党と民主党の賛成多数で可決、成立した。2010年4月に施行する」(日本経済新聞2008年12月5日付夕刊・第1面)

中身を見ると、

提出議案:
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16605081.htm
修正案:
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/syuuseian/9_50C6.htm

となっており、50%に引き上げられるボーダーが月80時間から月60時間に引き下げられたことと、施行までの期間が相当長く取られたこと以外は、概ね原案どおり。


ホワイトカラーエグゼンプション」と合わせてこの問題が議論されていたのはかれこれ2年近く前の話で、まだ成立していなかったのか、というのが正直な感想なのだが、如何せんこのご時世。


右から左から、と吹きつける風の強さを考えると、成案を可決できたこと自体がある種の奇跡というべきで、立法に関わっている人々を責める気にはなれない。



で、この問題については、以前散々述べたとおり、割増賃金率をいかに引き上げたところで「残業時間を申告できるボーダー」の壁が厚くなるだけで、時間外労働の抑制、という効果は生まれないだろうと思っているし(ことホワイトカラーに関しては)、実際の労働(残業)時間に相応しいだけの報酬を受けたければ、自分の手で会社と戦うしかないだろうとも思う*1


もし、賃金債権の消滅時効が延びるようなことになれば、今回の法改正の効果をフルに生かして、数年分の残業代の未払訴訟をまとめて仕掛ける、なんてことも考えられるだろうけど*2


なお、上記記事では完全に黙殺されていたが、個人的には、割増賃金率の話よりも時間単位で有休取得が認められたことの方が大きいと思っている。


これも考えようによっては、「フレックス・タイム制潰し」*3に利用されるリスクがないとはいえないのだが、“時間の縛り”からホワイトカラーを脱却させるための一方策として、ここはひとまず前向きに評価しておきたいところである。

*1:もちろん、その結果として、仕事中の一挙一動が精査されたり、一律強制定時退社が義務付けられたりして、かえって働く側が不自由を強いられる可能性は十分にあって、それを避けるために“サービス残業”といえども甘受している、というのが多くの賢明なサラリーマンの実態だと思うのだが・・・。

*2:ポスト・過払い金訴訟の一番手はやっぱりこれだろう、と(笑)。

*3:用があるときは時間休とればいいんだから、フレックス・タイム制なんていらないじゃん、という安直な発想。

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