元社会保険庁職員の機関紙配布に対しては「無罪」の判決を言い渡した東京高裁が*1、元厚生労働省課長補佐の機関紙配布について「有罪」判決を言い渡した。
「2005年9月の衆院選投票日前日に共産党機関紙「しんぶん赤旗」を東京都内の集合住宅で配ったとして、国家公務員法違反(政治的行為の制限)の罪に問われた元厚生労働省課長補佐、宇治橋真一被告(62)の控訴審判決が13日、東京高裁であった。出田孝一裁判長は「政党機関紙配布の禁止は合理的で、憲法に違反しない」と述べ、罰金10万円の有罪とした一審・東京地裁判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。被告側は上告した。」(日本経済新聞2010年5月13日付夕刊・第16面)
同じ罰金10万円でも、地裁段階で既に“執行猶予”が付いていた元社会保険庁職員の事件とは異なり、こちらの方は、特にそのような事情はなかったようなので、そもそも事案の軽重が違う、という評価もありうるのかもしれない。
だが、先の判決が疑問を呈した「猿払事件大法廷判決」を、
「社会的諸条件の変化などを踏まえても事実認識に基本的に改める点はない」
と全面的に追認した点には、やはり大きな違いがあると言わざるを得ないだろう。
先の元社会保険庁職員の事件の判決を書いたのは中山隆夫裁判官が部総括を務める第5刑事部、今回の判決を書いたのは、出田孝一裁判官が部総括を務める第6刑事部。
似たような事件でも、合議体が異なれば、違う判断が出るのはよくあること。とはいえ、控訴審段階で、これだけ近接した時期*2に異なる判断が下される、というのは、やはり人々に議論を抱かせる種になるわけで・・・
「一票の格差」訴訟でも、異なる合議体がそれぞれ異なる判断を示している東京高裁。
それぞれの部のそれぞれの裁判官が、縛られることなく自由に判断を下せるというのは悪いことではないのだろうが、、最高裁で判断が下されるまでもやもやした状況が続く・・・というのは、ちょっと気になるところである。