疑惑の直線

凱旋門賞から帰ってきたオルフェーヴルの凱旋レース、ということで注目が集まった今年のジャパンC

オルフェの欧州での活躍ぶりが鮮烈だったうえに、迎え撃つ国内組も、絶好調の3歳勢(フェノーメノジェンティルドンナ)から、天皇賞から直行した調子の良い古馬陣(“昔の名前”ではなく)まで、「国際レース」の格に相応しいメンバーが揃ったこともあり、久々に“始まる前からワクワクする”ドリーム系レースだったように思う*1

で、蓋を開けてみれば、メディアが描いた筋書きを超えるような、「三冠馬同士の激闘」、しかも、前評判を覆して3歳牝馬ジェンティルドンナの方が勝つ、という、もの凄く美味しい展開となった。

この時期の「3歳牝馬」は、斤量に恵まれているし(古馬牡馬に比べると実に4キロ分の差がある)、海外遠征や天皇賞のような古馬一線級のレースで消耗することもなかったゆえに、個人的には上位に食い込むチャンスは十分あると思って複勝までは一点で押さえていたのだが、まさか頭に来るとは・・・というのが率直な感想で、「今年の年度代表馬はどうなるんだろうなぁ」とか*2、オルフェ、ジェンティル双方の来年以降のシナリオがどうなるのか、とか*3、いろいろと考えるネタも増えて、なかなか興味深い。

もっとも、既にあちこちで話題になっているとおり、今週も、最後の直線の攻防の後味は良くなかった。

改めてVTRで見るまでもなく、内側からビートブラックを交わそうとして外に出したジェンティルと、オルフェの馬体が何度かぶつかっていたのが、はっきりと映像で捉えられていたし、1回目にぶつかったシーンで、一瞬、池添騎手の追い出しの態勢が揺らいだのもはっきり分かった*4

それでいて、レース結果自体は、長い審議の末、着順の入れ替えなしで確定、ということだから、何だかなぁ、という気分にはなる。

なんだかんだ言って、オルフェも目に見えてスピードが落ちるようなことはなかったと思うし、最後の最後での追い比べで、“騎手の腕力の差”が何となく透けて見えてしまったような展開だったから*5、一度映像を見たくらいのレベルなら、この決着にも違和感はないのだが、何度かスロー映像を見てしまうと、池添騎手の嘆き節も分からんではないわけで・・・*6


相変わらず景気が悪い中でも、ようやく少しずつ、馬券の売り上げが回復し、競馬界も勢いを取り戻しつつある時期だけに、2週続けて演じられてしまった「荒れるG1レースの直線」が、この先の今年のクライマックスに変な影を落とさないことを願うのみである*7

*1:国際レースと銘打ちつつ、活躍するのは外国人ジョッキーだけで、高速馬場への適応可能性がないとみられた外国馬勢は、予想屋からも一般のファンからも見放されていた(一応、今年の凱旋門賞馬もいたのだが・・・)というのは、ちょっと残念だったが。

*2:これはオルフェが有馬記念に出て勝たない限り、ジェンティルに持って行かれてしまうだろう。

*3:オルフェは、残された年内のレースを全勝で終わらせることができれば引退濃厚だったと思うのだが、ここで取りこぼしたことで、かえって来年以降に続戦という期待が残ったような気がする。

*4:最初は、オルフェの方が寄せた、あるいはいつもの癖でササッたのか?とも思ったのだが、最終的に岩田騎手に実質2日間の騎乗停止処分が下りた、ということで、やはりジェンティルドンナ側の責任、ということだったのだろう、と。

*5:池添騎手の腕が悪い、というつもりは毛頭ないのだが、地方競馬仕込みの岩田騎手の派手な追い方(馬をバテさせない追い方)を見ると、ジェンティルドンナの勝利も、さもありなん、という気にさせられる。

*6:以前とは異なり、今は騎乗停止処分が出るような乗り方があっても、着順に影響がなければそのまま、というルールになっているから、なおさらわかりにくい。

*7:そして、池添騎手がもう一度、オルフェの手綱を取ってターフに戻ってきてくれることを強く願う。

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