壮大な“新喜劇”

結局、始まったころの予想通り、めでたく和解と相成った「面白い恋人」事件。

「北海道土産の人気菓子「白い恋人」を製造販売する石屋製菓(札幌市)が、商標権を侵害されたとして、吉本興業大阪市)などに菓子「面白い恋人」の販売差し止めと損害賠償を求めた訴訟は13日、札幌地裁(浅井憲裁判長)で和解が成立した。吉本興業側がパッケージの図柄を変更し、原則として関西6府県での販売に限る。賠償金は支払わない。2社が同日、明らかにした。」
日本経済新聞Web・平成25年2月13日付け21時51分)

「関西6府県での販売に限る」という条件を見ると、何となく“おお・・・”と思うが、元々この商品は土産用の関西限定販売品だし、「北海道と青森県を除き、百貨店が催す物産展などでも年36回まで認める」という条件も同時に付されているから、東京で稼ぐにも支障はない。

これまでの報道で散々自分の商品を宣伝できた上に、「地域限定」のブランドイメージを保ったまま、一切持ち出しなしの和解、をしてのけたのだから、吉本側にとっては願ったりかなったりの展開*1。しばらくは店頭でも品薄状態が続くことだろう。

色々と条件を付けられ、一見「敗者」のように見えながらも、HP上のプレスリリースがやたら饒舌・・・*2というのも、上記の背景を考えれば、容易に理解できるところである。、

一方の石屋製菓はどうか。

本件訴訟が始まった時の当ブログでのエントリーでも書いたとおり*3、元々商標権を盾に勝つのはかなり難しい事案だったと思うし、商品パッケージの誤認混同等を理由とした不正競争防止法上の請求も、正直微妙なところだった。

差止請求に加えて、1億2000万円の損害賠償請求まで追加し、一見ガチで争っていたように見えた展開だっただけに、「ゼロ和解」は屈辱的な話のようにも思えるが、確かに“インスパイア”気味だったパッケージデザインを変更させたことの意味は、当事者にとっては大きいのかもしれないし、他にも全国でインスパイア商品が続々と出てきている中*4、「筋を通す会社」であることを全国に知らしめたことで、安易な類似商品が出回ることをけん制した、という意味でも、一連の報道にはそれなりのインパクトがあったといえるだろう。

また、“パクられるほどの本家本元”感をアピールできたことも、北海道土産の定番としてのブランドイメージを固めるには、大いに役立ったのではなかろうか。

簡潔に整理されたHPでのプレスリリース(http://www.ishiya.co.jp/upd_file/news/302/news_file302.pdf)からは、「ブランドを守れた」ことへの安堵感が、大いに伝わってくる。


・・・ということで、この手の訴訟には珍しく、お互い得るところが多かったように思われる和解。
しかも、あちこちで指摘されているように、バレンタインデー当日の朝刊に掲載されるタイミングでの発表だっただけに、“話ができ過ぎ”という感も強い。

当事者の一方が「天下の吉本」だっただけに、思わず頭の中を流れたのは、

些細なことで喧嘩を始めてドンパチ、ドタバタやったものの、最後はみんな仲良くずっこけて・・・

というお決まりのオチと、軽妙なBGMだったりもして・・・。

まぁ、いずれにしても、ハッピーエンドならそれで何よりである。

*1:例のパロディ調の商品パッケージがなくなるのはちょっと残念だが、代わりに自分のところのタレントのイラストでもパッケージに使えば売上的には全く問題なく挽回できる(というか、これまで以上に伸びる)だろうから、これも痛い話ではないだろう。

*2:http://www.yoshimoto.co.jp/cmslight/resources/1/122/130213.pdf

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20111129/1322587367

*4:商標登録されているものだけ見ても、「赤い恋人」(秋山食品、商標第4777974号、マリンフード株式会社、商標第5365784号)、「黒い恋人」(あさひかわ農業協同組合、商標第4514509号)、「青い恋人」(小森梅選堂、商標第5345634号)といったものがある。