人騒がせな「別人作曲騒動」

佐村河内守なる人物が作曲した楽曲をめぐり、先週あたりから様々な登場人物が出てきていろいろと騒がしい。

ゴーストライター」として会見された方は、おそらく長年後ろめたさを感じておられて、今回の騒動を機に、心からの謝罪をするために、世の中に登場してきたのだろうが、会見の場で語られた内容があまりにセンセーショナル過ぎたゆえに、謝罪なのか、それともさらに騒ぎを大きくする類の告発なのか、良く分からない状況に陥ってしまった。

本来、佐村河内なる作曲家と、「ゴーストライター」であったとされる方との間で、これまで、「佐村河内名義」で楽曲を公表することについて同意が存在し、そのような契約スキーム(?)の下でずっとやってきたのであれば、それはそれであり得ることだろう*1
そして、本件に関して、巷で言われているような「著作権」を巡る複雑な問題があるとは思えないし、いわば真の著作者ともいえる「ゴーストライター」が権利を放棄する、と自ら言っている以上、今後も問題になるような話ではないだろう。
いろいろと物議を醸している「JASRACによる利用許諾保留」も、混乱回避のための一時的な措置に過ぎない、と考えるのが穏当だろうと思われる*2

残念なことに、本来であればワイドショーの些末な話題、として片づけられるようなレベルの話であるにもかかわらず、佐村河内なる作曲家の曲が、これからまさにソチ五輪の舞台でラストを飾ろうとしている高橋大輔選手のSPでの勝負曲であるがゆえに、ワイドショーの枠の中だけでは収まりそうにない雰囲気になっている。

そして、わざわざそういった状況を煽るかのように、ゴーストライターとされた方が、

「後に発覚すれば、高橋選手が偽りの曲で演技したと非難されると思った」
「高橋選手には真実を知ったうえで堂々と戦ってほしい」
日本経済新聞2014年2月7日付け朝刊・第38面)

などとリップサービスしたことで、余計に変な方向に話が行ってしまった。

10日付けの朝刊では、当の高橋選手が、迷惑なメディアの取材にも丁寧に応じた上で、

「背景とか全く知らずにこの曲がいいと思って選んだので関係ない。自分のやってきたことを信じて、表現することだけを考えていきたい」
「作った人が誰であろうと、僕が気に入って決めたのであとは演じるだけ」
日本経済新聞2014年2月10日付け朝刊・第28面)

といった応答をしていることが記事で取り上げられているのだが、既に五輪が始まり、本人も本番に向けた調整のためにギリギリのところやっているであろう状況で、日本から押しかけたメディアは一体何をやっているのか、と、同じ日本人として、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう・・・。

本格的に男子シングルの競技が始まり、銀盤の上で勝負する高橋大輔選手の姿が日本に伝わってくる頃になれば、おそらく上記のような些末な話題も(少なくとも高橋選手との関係では)消え去っている、と信じたい。

*1:世の中の数多ある楽曲の中に、こういう話が他に一切ないとも到底思えない。

*2:JASRACが無権利者から楽曲の著作権の信託譲渡を受けた場合に、真の権利者とJASRACの間の関係をどのような法律関係で捉えればよいのかを考える、というのは、頭の体操としては面白いのだが、今、問題となっている場面について、そういった純粋法的見地からの処理を志向するのは、実にナンセンスなことというほかない。