「原点」の大切さを思い知らされた一年〜2015年の結びに代えて

振り返ってみると、「結び」を書くにしては、あまりに何も残せなかった一年だった。

ブログの更新は途中から無理、と割り切らざるを得ない状況だったから、自分の中ではまだあきらめが付いているのだが、いろんなものを犠牲にして取り組んだあれこれで、手応えのある結果を残せなかった、というのは、まさに痛恨の極みというほかない。

年明け早々から、とにかくいろんなものが押し寄せてきて、短期間のうちに判断を求められ続ける、という状況が続いたことが最大の原因であること、そして、今自分が置かれている状況を考えればそれも宿命、というのも理解はしている。

ただ、あまりに振り回され過ぎた上に、ポジションに即したレビュー役に徹しきれるほど上下左右との連携が機能しなかったことで、これまでにないくらい、負荷のかかる状況を自ら招いてしまったのが、最大の誤算。

飛んでくるボールを打ち返す、あるいは、叩き落とすのに手一杯で、目先の仕事からちょっとでも離れたことになると、ネタを掴んでも掘り下げてインプットすることすらままならず、一年前の大晦日に、「インプット」が「アウトプット」につながらない、という愚痴を書いたのが懐かしくなるような日々で、しかも、そこで貯金が作れないから、次に新しい展開になった時に効率的な打ち返しもできない、という悪循環は、最後の最後まで全く改善できなかった。

本来与えられている役回りに照らして客観的に見れば「よくやっている」と思ってくれる人もいるのかもしれないし、諸々の査定等々を見る限り、この一年のパフォーマンスがアンダーパフォームだった、ということにはなっていない(むしろ逆)なのだが、主観的には、何も残せていない以上「0点」というのが自己評価である。

ついでに言えば、「法務」という役回りを与えられてから、ここまで行き詰まり感や無力感を抱かされたことはなかったなぁ・・・というくらいの一年でもあった。
過去には、月のほとんどがタクシー帰社だったこともあったことを考えると、単純な業務量で言えば、MAXには遥かに及ばない状況なのに、徒労感にさいなまれて、翌朝、仕事に向かう足取りが重い、ということもしばしば。

少し歳を食ったせいもあるのかもしれないが、モチベーションが上がらず、疲労も残った状況で鞭を打って駆り立てられることほど心身に堪えることはないわけで、全部放り出してしまいたい、と思ったことも一度や二度のことではない。

「ブログ10周年」のエントリー*1をアップした後、古い読者の方から、いくつもの暖かいメッセージをいただいたことが救いになったりして、何とかやってこられたものの、明るく仕事納めをできるような気分にはなれない、そんな一年だった・・・。


年の終わりだけに、この一年の反省を踏まえて、この先どうしていこうか、という話題になっても良いところなのだが、今はそれを考える余裕すらない。

ただ、年末に一部で盛り上がりを見せていた「大きな法務か、それとも、小さな法務か?」*2というテーマに関しては、はっきり答えを出せたのは確かで、引用元のエントリーで書かれている、

事業部門がキャパシティオーバーであるときに法務がビジネスの領域に乗り出して解決することは、一時的には可能であっても、持続しない、したがって、債権回収とか事業撤退という出口が比較的近くにある仕事では有用ではあるものの、新規事業の場合は、法務が継続してメンテナンスするということは期待できない以上、手を差し伸べるべきではない」(強調筆者)

というフレーズは、まさに至言として、自分の胸に突き刺さっている。

自分の場合、入社当時は事業部門でビジネスをすることしか考えていなかった人間だし、キャリア的にも「法務」に辿り着くまでは、そういう道を歩いてきた。
だから、プレイヤーとして立ち回る分には、相手から拒まれない限り、ビジネスの前線まで出ていって仕事をするのが当たり前だったし、そのために必要な感覚やセンスも磨いてきたつもりでいた。

だが、一人の人間が対応可能なリソースには当然限界があるわけで、プロジェクト一つ、二つならともかく、常時、多数の新規事業やハレーションが生じかけている事案を相手にしていかないといけない、ということになると、組織ごと動いていかなければカバーすることは到底できない。
そして、法律知識の吸収度のレベルも、ビジネスへの理解や経験も一律ではない集団が、構成員個々の判断で「大法務」的な役回りを担うことには大きなリスクを伴うし、そのリスクを遮断するために内部チェックを徹底しようと思えば、半端なく負荷がかかる上に、対応のスピードも落ちてしまうから、結局本来求められているタイミングで満足のいく対応をすることができなくなる*3

そもそも、対応に必要な「キャパシティ」とか「リソース」の大小、という点で言えば、事業部門よりも法務部門の方が窮屈、という現状は否定できないわけで、持続性のある組織運営を行っていく、という観点からは、「自分ならここまで突っ込んでいける」「ここまでやれば社内での法務部門の評価も(ひいてはマネージャーとしての自分の評価も)より高まる」と思っても、あえて自制する勇気が必要なのだと思う*4

「法務」の枠を超えて、経営にコミットしようとしたり、さらには、それを飛び越えて国レベルの政策形成にまでコミットしようとしたりする動きを最近目にすることが多いし、そういう動きをもてはやす向きも一部ではあるのだけれど、背伸びをした結果、“本業”で安定感のあるロジックを組み立てる余裕さえ失ってしまうのであれば、それは本末転倒と言わざるを得ないわけで*5、前記引用元の、

「大法務のスキルを身につけた法務パーソンは、敢えて小法務に回帰するべきではないでしょうか」

というフレーズをしっかり心にとめて、もう一度、仕事の「質」を見つめ直す必要があるんじゃないか、というのが、今の自分の率直な気持ちである。

今の状況から、どうやってそこまで回帰することができるか、というのが次の課題で、年内にそこまで答えを出すのは到底無理なのだけれど、来年の今ごろ、「やっぱり法務の仕事にかかわれてよかった」という気持ちを取り戻していたい、と思うだけに、これからの一日一日を大事に、やっていきたい。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150804/1438798570

*2:きっかけは、「経文緯武」にアップされたエントリー(http://tokyo.way-nifty.com/blog/2015/12/post-f462.html)のようである。

*3:引用元のブログでは、「仕事の選り好み」にも言及されているが、パッと見た時の「仕事の大きさ、小ささ」と、「法務部門がコミットする必要性」の間には全く相関関係はなく、些末に見える仕事でも法務がかかわる意義が極めて高い仕事、というのはたくさんある(しかも、そういう仕事の方が充実感が強かったりもする)ので、最初から仕事を選別して業務負荷を減らす、という発想は自分にはないし、それをする必要もないと思っている。

*4:逆に、ビジネスにコミットすることの方に自身の重点を置きたいのであれば、中途半端に「法務」に軸足を置くのではなく、思い切ってそちらに専念できるポジションに身を移すのが筋だと思う。

*5:後者に関して言えば、そもそも法務の実務にあまりコミットしていない人が、中途半端なロジックで問題提起して煽る、というパターンも最近は増えているように思われ、それもここ最近のストレスの種になっているのだが、ひとまずその話は置いておく。

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