「5強」というファイナルアンサー。

皐月賞の結果が出る直前までは「3強」、その後、皐月賞馬・ディーマジェスティも交えて「4強」というフレーズで語られることが多かった今年の3歳牡馬。

ダービーの人気順を見ても、ディーマジェスティサトノダイヤモンドマカヒキの3頭が3.5〜4倍と拮抗した人気で、5.5倍のリオンディーズまでが10倍以下のオッズ、と、まさに「4強」の触れ込みに即した人気が形成されていた*1

個人的には、ディーマジェスティの人気は皐月賞でのパフォーマンスに引きずられ過ぎ、という印象で、ローテーション的にここに照準を合わせてきたサトノダイヤモンドが断トツの本命、末脚が切れるマカヒキがその次、後は上位に食い込むのはちょっと厳しい、という予想だったから、実質的には「2強」と言えば良かったのではないか、と思っていたのだが、ディーマジェスティにしても、リオンディーズにしても、これまえのG1レースを制したときのインパクトが強烈だったうえに、蛯名正義騎手、ミルコ・デムーロ騎手、と、ダービーの主役となるにふさわしい鞍上に恵まれていたことが、この人気分布を生み出したのだろう。

例年なら皐月賞上位馬でもダービー本番までの負傷で回避を余儀なくされたり、別路線に転向したりすることがあるのだが、今年に関しては、1冠目の主役たちが皆、無事にダービーまで辿り着いており、これまでの3歳世代の“歴史”がそのままダービーまで持ち込まれて激突することになった。
そんな背景もあって、近年稀に見る混戦ムードの中で、メディアの煽り以上に盛り上がったことは間違いない。

終わってみれば、好位置から最後の直線で33秒3、という実力通りの豪脚を見せたマカヒキが堂々の優勝。
落鉄の不運に泣いたサトノダイヤモンドがハナ差の2着で、直線の追い出しで進路を阻まれたディーマジェスティが少し開いた3着、と、上位3頭の構成は皐月賞と全く同じ結果となった。

前週のオークス同様、先行勢が、意外性のないペース(1000m60秒ジャストくらい)であまりに淡々と澱みなく進んでいったゆえに、事前の盛り上がりに比して非常に落ち着いたレースとなったし、その意味で少し物足りなさを感じたレースでもあったのだが、そういう状況だったからこそ、最後の直線で馬本来の切れ味が十分に引き出すことができたわけで、特に川田騎手とルメール騎手がしのぎを削り合った上位2頭のたたき合いは、“静かな名勝負”として今後しばらくは語り継がれることになるはずだ。

そして、興味深かったのは、上位3頭だけでなく、4着、5着の馬までもが皐月賞と全く同じ組み合わせになったこと*2

皐月賞とは真逆の“後方待機”状態となったリオンディーズが、最後の直線で最速の上がりを叩き出して紙一重の差で掲示板を死守した、ということにもびっくりしたが、距離的にそろそろ限界だろう、と思っていたエアスピネルが堂々の4着に食い込んだことには心から驚かされた*3

朝日杯FSの時は1番人気(2着)、皐月賞でもリオンディーズ降着のアクシデントがあったとはいえ人気どおりに4着入線、という実績を残してきた馬が、「7番人気」という低評価に反発するかのようにまたしても掲示板での自分の順位を死守した、という事実が、“前評判に振り回されることのリスク”を我々に突き付けてくれたような気がするし、今年の牡馬クラシックが「3強」でも「4強」でもなく、「5強」であったことを、自らの脚で証明できたのは実に素晴らしいことだったと思う。

今後は、おそらく、夏を過ぎたくらいの段階で、これまでの馬のダメージの大小によって、馬ごとの復帰スケジュールに違いがでてくるだろうし、目指すレースのローテーションも変わってくるだろうから、この5頭が揃うのは今回が最後、ということになっても不思議ではないが、たとえそうなったとしても、勝者以外の力が拮抗した“脇役”として、他に4頭も“役者”がいた、ということは、忘れずにおきたいところである。

*1:5番人気は毎日杯京都新聞杯、という別路線から臨んだダノンシャンティ産駒・スマートオーディンだったが、11.7倍、とちょっと離れた人気に留まっていた。

*2:長い間、競馬を見てきたが、クラシック2戦でここまで上位陣の顔ぶれが変わらなかったこと、というのはちょっと記憶にない。

*3:そもそも、最後の直線で武豊騎手に操られたこの馬が抜け出してきた時は、そのまま大波乱を巻き起こすか・・・と思えてしまうくらい、万全の競馬だった。

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