2016年10月6日のメモ

またしても台風が本州直撃か、ということでハラハラさせられたが、関東の住民にとっては思いのほか影響は小さく、過ぎた後には台風一過の秋空。
これで、本当に夏が終わったのかな、という気分になるが、さてどうなることか。

原発事故賠償ルールをめぐる落としどころの見えない議論

先日のエントリーでも少し紹介した、原子力損害賠償制度の見直しをめぐる議論が、「集中審議」の段階に入ったようである。

報道によると、

「事故を起こした電力会社の賠償責任を一定額で打ち切る案と今のまま無限にする案を比べた。無限ではリスクが大きすぎて事業を続けられないとする意見が出た一方、上限を設けると電力会社が安全投資をおろそかにするとの声もあった。」(日本経済新聞2016年10月4日付朝刊・第4面)

ということで。

論点のより詳細な内容は、原子力損害賠償制度専門部会のHPにアップされているのだが(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo14/siryo14-1.pdf)、個人的には最終的に被害を受けた者の救済が図られるのであれば、責任を事業者に負わせるか、国(最終的には国民全体)に負わせるか、ということは、そんなに大きな違いではないと思っているし、

「福島事故の賠償の実態は無限責任(の現行制度)に合っていない」(同上)

という遠藤典子・慶大特任教授の指摘にも傾聴すべきところはあるように思う。

テクニカルな話として、いざ原子力災害が起きた場合に、事業者を窓口に補償交渉を進めさせるのが良いのか、それとも国を窓口に補償交渉を進めるのが良いのか、というのはあるような気がしていて、その辺は、理屈の問題とは別に、実際、行政補償の現場の仕事にかかわっておられる方々にもしっかり話を聞いておいた方が良いと思うのだけれど*1、事柄自体は、年を越すような話ではないような気もするところである。

韓国、「接待規制」の波紋

先月の終わりくらいから、韓国で「不正請託および金品など授受の禁止に関する法律」(キム・ヨンラン法)が施行されるらしい、内容的にはかなり厳しいものらしい、という話が日本でも話題になっていたのだが、いざ施行されてみると、やはり現地のインパクトは大きいようである。

高級料理店の売り上げや結婚式や葬式への花束の注文が激減したとか、ゴルフ場の客の入りが7割減ったとか・・・

日本でも官僚の不祥事やら、交際費規制の強化やらのアクションが起きるたびに時々伝えられるような類の話だが、この記事*2を丸々鵜呑みにするならば、日本ではなかなか見られないような強烈さであり、記事の最後にある「極端から極端に走る」という韓国社会への評価も、さもありなん、という気はしてくる*3

とはいえ、キム・ヨンラン法が目指している方向自体は、決して間違ったものではないし、個人的には、官民問わず、個人的な付き合いもないのに「他人の金で高級飲食娯楽の接待を受ける」とか「贈答品をもらう」という類の話は、はっきり言って気持ち悪い、と思ってしまう世代だし、オフィシャルなお金が落ちないとやっていけないような店や業界は、さっさと潰れてしまえば良いと思ってしまうクチなので、なおさら、この壮大な社会実験を見守ってみたいところはある。

“東アジアには贈答文化が根付いているから”という理由で、厳しいのか厳しくないのか良く分からないルール(というか慣習?)*4を日本がこのまま放置し続けていると、腐敗認識指数のランキングで韓国はおろか中国にも抜かれてしまうんじゃないか、という懸念はあるのだけど、緩んだ社会には、それっくらいの刺激がちょうど良いのかもしれない。

令状なきGPS捜査に対する判断が大法廷に。

高裁段階でも判断が分かれている「令状なきGPS捜査の違法性」に関し、最高裁が、大阪地裁・大阪高裁ルートで上がってきた窃盗被告事件の審理を大法廷に回付する、というニュース。

コアな法律雑誌の判例評釈等では頻繁に取り上げられてきた論点だけに、最高裁がどういう判断を示すのか、という点について、個人的な興味はある。
仮に、統一的判断が「違法」という結論になったとしても、本年6月の名古屋高裁のように「違法だか証拠排除しない」という判断はあり得るし、仮に証拠排除に至ったとしても、GPS捜査の結果だけが証拠として法廷に出てくる、ということはまずないだろうから、大勢に影響はない、といってしまえばそれまでなのだが*5、今は「プライバシー」というフレーズが徘徊する世の中。

メディアの取り上げ方いかんでは、単なる「強制処分性の有無」という問題の本質を超えて思わぬところに議論が飛び火する可能性もないとは言えないだけに、少し注目してみておきたいところではある。

大隅良典・東工大栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞

細胞内の「オートファジー」の仕組みを解明した、として、東京工業大学大隅良典栄誉教授(71)にノーベル生理学・医学賞が贈られる、というニュースが飛び込んできた。

研究の内容自体にはコメントしたくても到底できるものではないのだが、栄誉を伝える日経紙の記事の中に、「研究を始めたのは1988年」とか、「1996年に東大助教授から岡崎共同研究機構基礎生物学研究所に移籍してから研究が花開いた」といったエピソードが載っていたのを見て、そんなに“最近”の研究成果だったのか、と驚かされる。

ノーベル賞なんて、“大昔”の研究の成果に贈られるものでしょ、という先入観が強かっただけに、自分が同じ空気を吸っていたキャンパスの中で、未来の栄誉の種がはぐくまれていたのかと思うと不思議な気分になる。

そして、自分が殺風景な大講堂に足を運ぶ道ではなく、ラボに出入りする道を選んでいたらどうなっていたんだろう、ということも、一瞬頭をよぎるのである。ホントに一瞬だけだけど。

お金は大事、ということをつくづく感じさせられるニュース

コアなファンには散々反対されながらも、「必要」として半ば強行導入されたJリーグの2ステージ制が、わずか2シーズンにして廃止、再び1ステージ制に戻る、ということになりそうである。

2ステージ制導入の際には、資金面以外の目的もいろいろと語られていたはずだが*6

「今夏、英国のスポーツコンテンツ配信大手、パフォームグループと10年で総額2100億円の放映権契約を結んだため、競技の公平性が高く、ファンにわかりやすい1ステージ制への回帰の道を探ってきた。」(日本経済新聞2016年10月5日付朝刊・第37面)

ということで、結局は運営資金面の話だけだったのか、ということが、今さらながら良く分かる話になってしまった。

大型の放映権契約をもぎ取ったJリーグ関係者のビジネスセンスはさすがだと思うし、2ステージ制移行を決めた際も、いろんな思いを抱えながら涙を呑んで・・・という関係者は多かったのだろうと勝手に推察しているのだが、プロ野球とは違って「降格」が存在するJリーグの場合、シーズン終盤の試合が“消化試合”になる可能性は決して高くないのだから、やっぱり2年前の時点で、もう少し筋の通った議論をしてほしかったな、とつくづく思う。

そして、10年後、放映権契約が切れたから、という理由で、再び「2ステージ制」に回帰するようなことにならないよう、リーグが今回の慈雨を最大限活用してくれることを願わずにはいられない。

イチロー選手、2500試合出場での終幕。

イチロー選手の2016年シーズンが終わった。

強力外野陣の中で果たして出番はあるのか?という心配をよそに、試合に出れば好調にヒットを積み重ね、数年前には無理かな、とも思われていたメジャー3000本安打を見事に達成*7。チームも中盤まではそこそこのポジションに付けていて、ワイルドカード争いに加わるような戦いぶりだっただけに、もう少し長く活躍を見られるかな、と思っていたのだが、終盤に来てチームもイチロー選手本人も失速し、いつもどおりの早目の終幕、ということになってしまった。

とはいえ、イチロー選手本人の成績に目を移せば、打率.291で、3割こそ逃したものの4年ぶりの好アベレージを記録。
出場試合数、打席数はともに減っているのに、安打数、得点、打点のいずれも昨年を上回った、というのは、不安定な起用に対応する難しさや、絶対的な年齢等も考慮すると、実に見事なことだと思う。

おそらく、イチロー選手本人は「100安打」の大台に少なからずこだわりを持っていたはずだし*8、クールに見えてチームの勝利に貢献したいという思いは人一倍強い選手だから、今年もワールドシリーズの舞台に立てなかった、というのはさぞ無念だろう、と思うのだけれど、来年あたり、いろんなものが噛み合って*9マーリンズがワールドチャンピオンになる日が訪れ、その歓喜に沸くチームの輪の真ん中にイチロー選手がいることを願ってやまない。

そして、できることなら日本の一般メディアも、「イチロー選手がヒットを打ったかどうか」だけではなく、せめて日本人が所属するリーグだけでも、チーム間の優勝争いがどうなっているのか、ということにもっとフォーカスして報道するようになってほしいものだ、と思わずにはいられないのである*10

*1:「3・11」に関しては、東電の交渉姿勢があまりに保守的だったために、これなら国が直接窓口になった方が早いんじゃないか、と思うこともたびたびあったのだが、本来なら民間の事業者が窓口になった方が柔軟かつ迅速な対応が可能になる、という面もあるはずなので、ここは今の実態だけ見て議論しない方が良い。

*2:日本経済新聞2016年10月6日付朝刊・第6面。

*3:さすがにコーヒー1杯差し出しただけで通報されてしまうような社会は、到底健全とは言えないだろう。

*4:公務員に対してはそれなりに厳しい規律が課されているとは思うのだが、民民レベルになるとまだまだ、というところはある。

*5:GPS捜査の結果を端緒として他の証拠を収集したような場合に、芋づる式に全ての証拠に違法性が承継され、証拠排除される、というようなことになれば影響は甚大だが、最高裁がそこまで極端な判断をするとは思えない。

*6:例えば、欧州とのシーズンの時期の違いゆえ、選手の移籍、獲得に支障が出る、とか、前半と後半でガラッとチームの陣容が変わってしまう、といったことも理由になっていたような気がする。

*7:“日米通算”の話はあえてしない。

*8:終盤に大きく失速してしまったこともあり、結局は「95」安打止まりとなってしまった。

*9:ホセ・フェルナンデス投手の弔いのシーズンにもなる。

*10:サッカーだと、欧州のリーグでもチームの動向を含めて取り上げられることが多いのに、なぜメジャーリーグになると、チームの勝敗度外視の報道になってしまうのだろう、というのは毎年つくづく思うことである。