第99回全国高校野球選手権大会。
決勝戦のカードとそれまでの勝ち上がり戦歴を見たときは、「打高投低」と言われた今大会の中でも特に際立っていた中村奨成選手を擁し、さらに秀岳館、仙台育英、天理と難敵を下して10年ぶりに決勝まで勝ち上がった広島・広陵高校が「野球と言えば広島」ブランドを確立してくれると信じていた。
だが、空気を読まない神様が下した審判は、これまで春夏共にベスト8が最高の戦績だった花咲徳栄高校の圧勝(14-4)、という結果。
自分の世代で「埼玉県代表」と聞くと、常連・浦和学院とか、90年代に躍進を遂げた春日部共栄、といったチームを真っ先に思い浮かべるし、こういったチームが弱かった、という印象も全くなかっただけに、今回が県勢初優勝、しかもその栄誉に預かったのが別のチーム、ということにちょっとした驚きを感じたりもしているのだが、それが“流れ”ということだったのだろう。
一方で、敗れてもなお決勝戦で3本のヒットを放ち、6本塁打、17打点という大会記録に加えて、安打数でも松山商の安打製造機、水口栄二選手に並んだ中村選手は、やはり「別格」だったというべきだし*1、このまま秋のドラフトにかかるまで、しばらく注目を浴び続けるのは確実な状況にある。
元々玄人筋には注目されていた選手とはいえ、大会が始まるまでは、自分も含めてライトなファンの多くが「清宮」(選手)に視線を注いでいたことを考えると、ひと夏で主役が入れ替わる高校野球ならではの面白さ、ここに極まれり。
そして、何よりも、四半世紀の時を超えて燦然と輝いていた清原和博選手の「一大会5本塁打」という記録がいともあっさり塗り替えられたことへの感慨は、何とも表現できないものがある*2。
前の記録保持者が、不幸な出来事を経て人生の隘路にいることを考えると、多少なりとも複雑な気分になってしまうのだが、新たに上書きされた「伝説」が語り継がれていけばいくほど、「その前」の記録が呼び起されることもあるわけで、時代の移り変わりとともに、ここで“不滅”の記録が塗り替えられたというのも何かの巡りあわせ、というべきなのかもしれない。
いずれにしても、新しい時代を象徴するような結果と記録で幕を閉じた大会。
これが、「100回」という大きな節目のひとつ前の大会だった、ということも偶然にしては出来過ぎているような気がしてならないのである。

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