勇気を出して、小銭を捨てよう!

消費税率引き上げからはや1週間。世の中で暴動が起きているわけでもないし、自分自身、そんなに高い買い物をしたわけでもないし、ということで、引き続きほとんど実感なく過ごしている状況ではあるのだが*1、そんな中、さすが日経、という感じの記事が出た。しかも一面で(笑)。

「1日の消費増税にあわせて政府主導で始まったキャッシュレス決済のポイント還元制度を追い風に、現金を使わない決済が急増している。」(日本経済新聞2019年10月8日付朝刊・第1面、強調筆者、以下同じ。)

以下に書かれている細かい「エビデンス」は一過性の事象に留まりそうなものも多々含まれているので、あえて引用しないが、自分としては、どんなきっかけであれ、決済が現金からキャッシュレス方向に向かうのは決して悪いことではないと思っている。

その理由はただ一つで、あのレジでのつり銭も含めた硬貨のやり取りと、その後の店舗、窓口での管理がとにかく非効率なこと極まりないから。

個人的には、そもそも、消費税率が「10%」というキリのいい数字になった時点で、値札の10円未満の端数は切り捨てるなり切り上げるなりすべき(そして、合わせて5円硬貨と1円硬貨を廃止)だったのでは?と、過激な主張もしたいくらいで、これは、実際に仕事で経験したことがある者にしか分からない感覚だと思っている。

・・・で、こういうことを言うと必ず、「キャッシュレス決済はセキュリティが・・・」とか、「使っている感覚がなくなるとどうしても使いすぎになる」といったことを言い始める人が出てくるのだが、少なくともハード一体型の電子マネーに関しては、紛失してしばらく放置、ということさえしなければ、現金を持ち歩いて紛失するよりもはるかにリスクは低いわけだし*2、「使いすぎ」云々に関しても、事前チャージ式の電子マネー等であればあらかじめ入金額をコントロールできるわけだから、何ら「現金優位」を支える合理的根拠にはなり得ないだろう。

「レジでつり銭のやり取りがなくなると人情味が・・・」なんていうのも究極の屁理屈。

オペレーションをする側の視点で言えば、細かい小銭のやり取りに使う神経を別のところに割けるようになるだけでサービスは格段に向上するし、前の人のレジのやり取りで待たされてイライラする客も減るから*3、スタッフにかかるストレスもその分減る。

むしろ、「人情味のある接客を期待するなら、キャッシュレスで!」と叫びたいくらいである。

ということで、以前のエントリーにも書いた通り、10月1日以降、これまで根性で(?)電子マネー決済をかたくなに拒んでいた飲食チェーン店などにようやく決済端末が入った、ということが自分は嬉しくて仕方がない。

そして、仮に、一連の消費税対策のキャンペーンが一過性のものに終わってしまったとしても、各店舗に決済端末が残り、これまできっかけがなくて現金をズルズルと使っていた人々がちょっとでもキャッシュレス決済の快適さに気付けば、中長期的には世の中変わっていく、と期待している。

なお、冒頭の日経紙の記事は、以下のようなフレーズで締めくくられている。

「キャッシュレス決済が定着すれば、企業は自社の電子商取引(EC)サービスに呼び込んだり、信用スコアを使った金融サービスを提供したりできる。コンビニなどでは現金の管理コストを減らし、人手不足の対応もできる。キャッシュレス決済を機に、より効率的な社会システムを築けるかが重要となる。」(同上)

この記事の、強調を付さなかった前半部分を見て、ほらやっぱり・・・と言い出す人が少なくないのも承知の上だが、そういった懐疑的な意見に対して、今自分が言えることがあるとしたら、

「決済を通じていくらデータを集めても、それを使いこなせるような技術も土壌も今の日本の大手企業にはない。だからご安心を。」

ということくらいだろうか*4

登録アドレスに時々飛んでくるダイレクトメールすら気になる、というのであれば仕方ないけど、それ以上の”脅威”を”可能性”だけで夢想して脅えるのはもったいない、の一言に尽きるので、一円玉がなくなる日まで同じことを言い続けよう、と思っているところである。

*1:引き上げ当日のエントリーは「2%」のアヤ - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:その意味で「○○ペイ」は自分は基本的にお勧めはしないし、おそらく日本で定着する可能性も高くないと読んでいる。セキュリティを高めれば高めるほど入り口のハードルが高くなる、というのは、消費者向けのツールとしては致命的だと思うところもあり。

*3:「現金決済主義者」の一番良くないところは、お店で会計をするのは自分だけじゃない、ということが頭に入っていないように思えるところ。常に釣銭なく瞬間的にきっちり会計を済ませる、というところまで徹底しているのであれば、それはそれで尊敬に値するけど、そこまでの人は自分はまだ見たことがない。

*4:逆に言えば米国系企業のサービスや、とがったベンチャー企業のサービスに関しては保障の限りではない。

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