ここからが正念場。

今日は、この3連休を挟んで、世の中の”空気”が大きく変わった、ということを実感した日だった。

そして、なんでこんなに空気が変わったかといえば、昨日あたりから流れていた政府の「基本方針」が発表された、ということが、やはり一番大きいのだろうと思われる。

新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599698.pdf

この中で、

「イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛要請を行うものではないが、専門家会議からの見解も踏まえ、地域や企業に対して、イベント等を主催する際には、感染拡大防止の観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討するよう要請する。」(4頁、強調筆者、以下同じ)

と、婉曲的ながら踏み込んだ言い回しが使われたこと、さらに、3連休の間の”感染拡大”を予感させる様々なニュースが相まって、これまで模様眺めだった企業やイベント実施団体も、一気に各イベントの「中止/延期/無観客」に舵を切った、というのが実態だと思われる。

先月の終わりくらいから、嫌な胸騒ぎを感じつつ*1、報じられる「発生源」の状況と、日本国内の空気、さらには政府のスタンスとのギャップの中で行ったり来たりしながらモヤモヤしていた者としては、「もう少し早いタイミングで出してほしかった」という思いはどうしてもあるのだが*2、今は希望的観測も込めて、これで対策もギリギリ間に合うんじゃないか、と思いたい。


ここ最近、いろいろなルートから聞いた話を総合する限り、この「基本方針」の冒頭で示された、

「現時点では、まだ大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない」(1頁)

という現状認識には、(それが「建前」に過ぎないとしても)ちょっと首を傾げたくなるところはあるし*3

「罹患しても軽症であったり、治癒する例も多い」

と述べつつも、それに続けて、

「重症度としては、致死率が極めて高い感染症ほどではないものの、季節性インフルエンザと比べて高いリスクがある。」(3頁)

と書かれているくだりなどは、既に報告されている20代患者の状況に鑑みても、少なからず戦慄が走るところではある*4

ただ、これまで自分が抱いていた違和感の最大の原因だった、”水際作戦”、”封じ込め作戦”へのこだわりや、「感染経路」にやたらフォーカスしたリリースやそれを受けた報道*5、といった傾向に関しては、「国内感染者が相当程度いる」ということを暗黙の前提として出された今回の基本方針によって、だいぶ変わってくるような気がする。

そして、”特別視”される不安ゆえ受診・検査を躊躇していたり、仕事に穴を開ける勇気がなくて騙し騙し職場に足を運んでいた軽症の罹患者が一度は病院に足を運んで、たとえ対処療法であっても「市販薬ブレンド」よりはまともな治療を受けられるようになることで、(一時的に報告感染者数は増えるかもしれないが)結果的には、犠牲を最小限にとどめる道が開かれたのではなかろうか

わざわざ政府が、

「企業に対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇取得の勧奨」(4頁)

を呼びかけなければ休むことすらできない状況がまだこの日本の中にあるのだとしたら、それは随分と寂しいことだと思うのだけれど、合わせて強力に呼びかけられた「テレワークや時差出勤の推進等」とともに、今回のことが、

・圧迫感を抱くほど混雑した電車に揺られて出勤するようなことはしない。
・職場で特段の予定がなければ、出勤に時間を費やさず、リモートで仕事を片付ける
・体調が悪ければ、迷わず職場にはいかず、休養ないし受診を優先する。

といった文化をこの国の社会に定着させるきっかけになるのだとしたら、多少の経済的な失速も、いずれは追い風に変わるはず。

今の状況に「たった2週間」で片を付けられるはずもなく、良くてゴールデンウィーク明け、場合によっては、梅雨明けのタイミングくらいまで続く長期戦になることは覚悟しているが*6、その肚さえ決めてしまえば、乗り切れない試練ではない、と自分は信じている。


ちなみに、「みみずく」さんも嘆いておられるように*7、開幕したばかりのJリーグが中断する、というのは寂しいし、次の次の週末、かなり前から楽しみに待ち構えていたトップリーグの試合をスタジアムで観戦することも、おそらくできないだろう。

そして、この動きが連鎖すれば、今は静かなJRA界隈でも、前代未聞の「無観客競馬」「ネット投票限定発売」という事態になることは十分想定できるところである*8

また、我が身に関していえば、改正民法施行直前ということで前々から準備していた研修関係の仕事が軒並みキャンセルに。
経営法友会くらいのスケールの大きな組織だと、「LIVE配信限定」で挙行、という裏技も使えるようだけど*9、講師の側としては、目の前の聴講者の反応を見ながら話すのと、”無観客”状態で話すのとではだいぶ感覚が異なるから、いろいろと大変だろうな、と想像している。

幸いなことに、コアな仕事に関しては今のところほとんど影響は出ていないし、経済的ダメージという点では、今日一日の東証株価暴落で被った打撃の方がはるかに大きいくらいだから*10、当て込んでいた需要が溶けて苦境に追い込まれている業界の事業者の中の方々に比べると、はるかに恵まれているのは確か。

「企業法務」の分野で生きている限り、人が動き、経済が動くからこそ仕事が回ってくる、という点では、事業者も専門家も何ら変わりはないわけで、これからジワジワとしわ寄せが来ることは避けられないだろう。

ただ、個人的には昨年来のオーバーワーク気味だった日常に少しブレーキをかけられる、という意味で前向きに捉えているし、加えて、まだ「企業法務」の世界にいる間に、「非日常的現実」と再び相まみえることができる、ということだけでも、ここまでしぶとくやってきた意味はあったのかな、と。

9年前、思い通りの対応が何もできず、悔しい思いをした記憶は未だに残っている。

危機でこそ生きるのが「法務」の力。あの時のリベンジのつもりで、自分の立場でできることをとにかくやろう、という思いで今はいる。

*1:これからの一週間が平和に過ぎゆくことを、今はただひたすら願う。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~の記事等参照。

*2:一部で、「日本は中国とは違う」論も出ていたのだが、かの国の技術力、統治力にここ数年圧倒されていた者としては、「中国ですらコントロールできないことを日本がコントロールできる」と考えるのはお門違いではないかな・・・という思いもあった。

*3:「重症患者が大量に発生した地域がない」ということであればその通りなのだろうが、コロナウイルスに晒された人の数、軽症ながらも発症の兆候を示した人の数、ということでいうと、公式発表とはかなりズレているのが実態だと思われる。

*4:専門家会議の報告等を見ても、重症化した場合にどう治療するか、という解を導くところにまではまだ辿り着けていない、ということが透けて見えるだけに、そこが本当に怖い。

*5:一部の地域に関しては、かつての「ホットスポット」のような扱いになってしまっていたが、一度の爆発事故による放出が全てだった放射能汚染とは異なり、今回の”脅威”は動く人間そのものなのだから、地域に関わらずリスクあり、としないと実態との乖離を招くだけである。もちろん、感染者が増大した地域にフォーカスした対策も、それはそれで必要だとは思うのだが。

*6:後者のような状況になってしまえば、東京での五輪開催も現実的なものではなくなる。様々な意見はあるだろうが、「アスリート本位」で考えるなら、「五輪中止」という最悪の事態を避けるため、早めに開催権を返上してしまう、というのも一つのやり方ではあると思う(もっとも、インフラ的に受けられる国があるのか、あるとしてその国が7月~9月の期間中、無事である保証がどこにあるのか、という問題もあるので、一か八かでギリギリまで引っ張る、という策はありうるが、本件に関しては、そう遠くないうちにIOCが何らかの判断をするような気もする・・・)。

*7:Jリーグ延期という衝撃 - インハウスな日々

*8:元々ネット投票でしか買わない人間なので、それだけで済めば万々歳ではある。

*9:https://www.keieihoyukai.jp/article?articleId=11106975参照。

*10:今日に限らず、今月初頭からの株価下落は、月の稼ぎを丸ごと吹き飛ばすくらいの絶大な「逆資産効果」を生じさせてくれている。もちろん、歳の半分を超えるくらいの投資経験を重ね、同じような修羅場も一度や二度ならず経験しているので、まぁ腰を据えて回復を待ちましょう・・・というくらいの感覚ではあるのだが。

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