今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月16日版

先週のイギリスに続き、今朝には米国、続いて韓国も豪快な利下げに踏み切り、我らが日銀も前倒しの金融政策決定会合ETF購入目標倍増等々、窮余の一策を講じた。

だが、市場はとても正直だ。

期待感で一時上昇に転じていた東証の株価は再び大きな下落基調に転じ、アジアから欧州まで一通り下げまくった末に、NY市場では再びサーキットブレーカー発動、という既視感ありありの展開に・・・。

世界中の医療関係者が未知のウイルスに手を焼いているのと同様に、そのウイルスが社会にもたらす”副次的作用”も、この先一体どれだけの広がりを持つのか全く予測がつかないわけで、デジタル化されたなけなしの資産が連日溶けていくのを眺めながら、途方に暮れているのは筆者だけではあるまい。


そんな状況だけに、既にいろんな意見が吹きこぼれているのだが、

失った財産はいつか取り返すこともできるが、命を失ってしまったら二度と取り返すことはできない


だから、今は、景気とか経済とか、”卒業式なくてかわいそう”みたいな情緒的なことに気を取られてないで、とにもかくにも爆発的な感染拡大を食い止めるためにできることをやらないと

というのが自分の基本的なスタンスなので、金融資産がいくら溶けようが、当て込んでいた仕事が吹っ飛ぼうが、「感染拡大防止」というただ一点に明るい光明が見えればまだ救われる。

にもかかわらず、先週の総理の会見以降も、どうにもこうにも「対策」の中途半端感が拭えないような気がして・・・。


自分は感染症対策の専門家でも何でもないが、これまで専門家から示された知見と、一般的な「リスク対策」の基本的な考え方を組み合わせるならば、先日の総理の会見で出てきた、

・「換気が悪い」
・「人が密に集まって過ごしている」
・「近距離での対話や発声が行われた」

という3つのリスク要因をいかに消すか、ということをまず徹底すべきだし、世の中の景気や経済活動への影響を危惧するのであればなおさら、「そのために必要な最小限の対策」に特化して、重点的な策を講じていく必要がある。

ところが、今世の中では、規模の大小、参加人数の多少を問わず、「イベント」と名の付くイベントはことごとくやめましょう、とか、飲み会はやめましょう、といった類の話になってしまっているようで、挙句の果てには、休日に近場に旅に出かけることさえ躊躇する、という人々まで出てくる始末である。

先月、既に判明した感染者の感染経路を元に、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等、と、あくまで例示ながら実質的には”名指し”で特定の環境だけが挙げられ、それが一人歩きし始めた時は、

「高名な某先生がコンプライアンス研修でよくネタに挙げる”ダメな会社のコンプライアンス対策”事例みたいだな・・・」*1

と思ったものだが、今となっては逆に、「リスク要因の回避」という本来の目的からかけ離れたところにまで「対策」が広がり過ぎて、あたかも、

「ちょっとした著作権侵害事例で炎上してしまった会社が、手持ち資料の私的なコピーにまでいちいち目くじらを立てて監視体制を敷く」

ような状況になってしまっている*2

しかも、限られた人数の勉強会とか、懇親会までキャンセルを余儀なくされている中、相変わらず朝夕は、未だに多くの人々が換気が決して良いとは言えない密閉された「通勤電車」という空間で自宅と職場の間を行き来しているようだし*3、休日になれば、しばしば無防備に”人が集まる”状況が自然発生してしまう状況もある。

世の中のありとあらゆる人々に「リスクを正しく認識して適切な行動を取るように」と求めたところでどうにもならないことは分かっているし、だからといって「自己責任」論で全てを片付けるつもりもないのだが、”人混み”を本能的に避けられない人も、”人混み”を本能的に作り出してしまう事業者も一定数いる以上、それに対する注意喚起をしないでどうする? という思いは消えない。

そして、「今必要なのは、やみくもな”自粛”ではなく、真にリスクのあるものに絞ってそのリスクを消していくことだ」ということは、声を大にして言いたいところである*4


もう3月も半ばを過ぎたのに、先週末から冷え込みが格段にキツく、「コロナウイルス」がいなくても体調を崩しそうな日々が続く。

これまでに判明している発症者、陽性判明者の広がり等を考慮すれば、今週の半ばから来週にかけて、自分の体に異変を感じる人はかなり増えてくるだろうし、その結果、今30~50名くらいに留まっている「感染者」数も、おそらくコンスタントに100名規模で連日増えていく状況が間もなく訪れることだろう。

だからこそ、「優先順位」を付け間違えないようにしてほしい、というのが今の切なる願いである。

*1:ここでは、リスクの本質まで遡らずに、過去に痛い目に合った特定のリスク(インサイダー取引とか金品受領とか)のチェックだけを形式的に追いかけることに終始してしまったために、より大きい別の不祥事を生じさせてしまう、というようなケースが念頭に置かれている。

*2:それを言うと、飲食店を丸ごと閉鎖させてしまう欧米諸国はどうなんだ、という話も当然出てくるのだが、日本に、ああいうやり方に対処できるだけの社会構造の柔軟性(雇用関係解消に係るコスト等も含めて)があるとは思えないので(もちろん、欧米各国だって、そこまで柔軟に割り切れるはずもないのだが、「店を閉める」ことのハードルは、相対的にはかの国々の方が低いような気はする)、そこを真似しようとしても仕方ないだろう、と思うところである。

*3:23区内在住者であれば、徒歩・自転車でも職場に行ける、という層は一定数いるし、元々そこまで混まない電車で通勤できるルートもあったりするので、オフィス在勤者をそういう人々だけに限って、遠方から通ってくる人たちを終日・半日在宅勤務(あるいは休暇)に切り替える、という手を使えば、問題はかなり解消するはずなのだが(乗車率が50%くらいになれば、そこまでリスクを心配しなくてもよくなる)、そういう観点で勤務体制を組んでいる会社は決して多くないな、という印象である。

*4:それが徹底されている限り、家族が小ぢんまりと経営しているような近所の居酒屋から客足が遠のくことなんてないはずだから。

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