最近、世の中のあれこれが動くスピードがとても速くなった気がする。
自分の身の回りで起きたことに関していえば、3月に入って最初の週、前週の金曜日の時点では「何があってもやりますよ」と言われていたイベントが数時間のうちに全部消えてしまった、というあのスピード感に勝る経験は未だしていない*1のだが、世間のニュース、特に相場の動向を伝えるニュースは、「新聞」レベルではもちろんのこと、インターネット上で配信されるニュースですら、でかでかと掲げられている”見出し”がその時点で起きている動きと真逆になってしまうような状況である。
「一時○○○円下げ」というニュースが携帯に配信されてきた時点で、既に目の前では上げに転じていて、やれやれ、という大衆の気持ちを乗せたような「○○○○○円台回復」という速報が流れてきたと思ったら、その時点ではまたしても急落していたりする。
海の向こうの話になると、もっと悲惨で、朝刊の紙面で「期待」されているような政策効果は、それが届いた時点では一瞬でかき消されてしまっていることが多いし、逆に今、日経電子版のトップを飾っている「3年1か月ぶり、NYダウ20,000ドル割れ」という見出しは、700ドル以上の上げに転じている今(だいたい日本時間18日の午前1時くらい)となっては、”古新聞”のそれでしかない。
大体、感染者数の数字一つとっても、寝て起きたら1000人単位で増えている国、地域は多いし、スポーツ等のイベントに関しても「何とかやる予定」だったイベントが、朝起きたら無残にも「中止」が確定していたりする。
幸いなことに、今はほどほどに慌ただしいこともあって、赤くなったり青くなったりする板の前に6時間張り付いて寿命を縮めるような経験はしなくて済んでいるし、様々なイベントに関しても、自分自身が今回の件で直撃を受けたものはない*2からまぁ良いのだけど、直撃を食らっている人々の悲痛な叫びを聞くたびに、どうしても変な汗をかいてしまう・・・。
先週くらいから、自分の足で少し見てきた限りでは、日経紙が紙面で煽るほど足元の経済状況は悪くないような気もしているし、今日の適時開示では、「会社四季報」のコメント欄に「新型肺炎の影響あり」と書かれた会社が、「当社には影響はありません」と毅然と抗議する一幕もあったりした(しかも2社、である*3)。
また、酒類小売の㈱カクヤスが出した「2020 年 3 月期 第4四半期における新型コロナウイルス感染症の影響について 」という資料*4からは、自分も体感している今の世の中の状況を見事なまでに反映している。
「我が国における新型コロナウイルス感染症の拡大、ならびに自粛等の感染拡大防止策の実施に伴い、当社の業務用取引先(料飲店、ホテル等)への売上は2月下旬以降減少しております。」
「 一方、在宅勤務や外出自粛により家庭内消費が増加していると考えられ、当社の家庭向け販売は増加の傾向にあります。」(以上強調筆者)
そう、住宅街に近いところにあるスーパーやディスカウントストアは、どこに行っても、どの時間帯に行っても、大概それなりにお客さんはいるのだ。
平日の生活基盤がオフィス街から自宅周りに移った人々が、「殺到」というほどではないがコンスタントに足を運ぶ場所が段々増えてきているのも間違いない。
多くの大手メディアは、「コロナ」の影響で急減速したところにだけスポットライトを当て、この種の「危機」にありがちなストーリーに整合する情報を次々とかき集めて記事にしていくし*5、ネットメディアやSNSも目立つ叫び声をあげる人の方にばかり目を向けがちだから、どうしても世の中全体、”暗黒”ムードに近づいていってしまうのだけれど、報じられる事実の断片を自分の頭でかき集めて、さらに自分の目と耳で得た情報をかけ合わせれば、”古新聞”のメディア情報よりもはるかに潤沢で、しかも半年後、一年後につながる果実を手に入れられる・・・。
そう思えば、今のこの変化の激しさも、すごくポジティブに受け止めることができるような気がするのである。
転んでもただでは起きない、という精神
そうはいっても、コロナウイルスへの感染者が日々増加しているのは事実で、”感染者ゼロ”記録を伸ばし続けたことで、救世主は「納豆」か? それとも「うどん」か?ということで注目されていた、茨城県、香川県という東西の両雄も、本日とうとう陥落の憂き目にあった。
しかも、茨城県は、誰もが知っている日本有数のメーカーの事業所の社員が第1号感染者になってしまう、という事態になってしまったのだが、個人的に「おっ!」と思ったのは、その会社が出したプレスリリース(https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/03/0317b.pdf)である。
・感染者のプライベートを憶測させるような無駄な情報を挟まず、伝えるべき情報を的確に記載する姿勢*6
・感染判明を受けて行った対策の開示と、その内容の具体性、及び徹底ぶり
といった点で、さすがだなと思わせてくれるに十分な内容であった。
そして、何よりもこれだ、と思ったのは、このリリースの最後に添えられた5行。
あえてここでは引用しないが、自社の在宅勤務制度21年の歴史と、その制度設計の合理性をここぞとばかりに書き込む。そういう魂こそが、息苦しくなっている今の世の中の状況を打破するための、最大の突破口になるような気がしてならない。
今の状況なら誰もが一度や二度は転ぶ。
だけど、そこで起き上がってくるときに、次の次の一手を打ち込んでおけばいいじゃないか・・・ そんな精神で自分も乗り切ろうと思った次第である。
*1:というが、人生の中でそう何度と味わうものではないだろうし、味わいたくもない・・・。
*2:しいて言えば、観戦予定だったトップリーグの試合が一つ中止になってしまったのだが、あれは「コンプライアンス教育の徹底」を理由としたものだから、コロナとは関係ない(苦笑)ということにしておこう。https://www.top-league.jp/ticket/参照。ちなみに「震源地」の日野自動車はCOVID-19に関しても再び当事者になってしまったようで(【お知らせ】 当社拠点における新型コロナウイルス感染者の発生について | ニュース | 日野自動車株式会社)、まさに踏んだり蹴ったりというほかない。
*3:株式会社テリロジー(https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200316480245.pdf)、㈱MARUWA(https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200317480502.pdf)
*4:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200317480724.pdf
*5:だから、昨日は百貨店の大幅売り上げ減のニュースの見出しが大きかったし、今日もロイヤルホテルやリゾートトラストの下方修正だけが記事になった。ITビジネス系の会社で上方修正を出している会社もそれなりにいたというのに。
*6:どこの従業員か、いつ判明したのか、いつまで職場に来ていたのか、どういう仕事をしていたのか(不特定多数の一般人と接触する機会があったのか)、職場に濃厚接触者はいるのか、といった情報までが必要かつ十分な情報だと自分は思っている。これに対し、同じ状況に立たされた会社が、年齢、性別、感染経路などを事細かに書いてプレスするシーンも時々見かけるのだが、それを出してどうする?というのが、率直な感想だし、そうやって特定可能性を高めた情報を出した結果、「プライバシー侵害だからそもそも出すな」みたいな方向に向かってしまうと余計にマズイ話になってしまうわけで、確実に、でも必要以上の情報は出さない、というバランスの取れた開示姿勢が浸透していくことが、この先の長い戦いの中では大事になってくると思う。