本当に残念な報を受けて。

月が変わり、先週まで「在宅」モードだった会社でも原則と例外が切り替わるところが結構ある、と聞いていたので、今朝は戦々恐々としながら街に出た。

確かに、いろんなところで「先週よりは人多いな」と感じるところはあったのだけど、お昼、夕方、と時が過ぎるにつれ、「冷静に考えればまだまだ少ないな」という結論に落ち着く。

いかにもこの季節らしいどんよりとした天気のせいか、あるいは、「まだまだ警戒を緩めてはならぬ」という良識的な人々がこの世にはたくさんいらっしゃる、ということなのか。

営業を再開した飲食店でも、一部を除けば客の姿はまばらで、「席数が減ったところに人が押し寄せたら一体どうなってしまうのか・・・?」と戦々恐々としていた身には肩透かしのようなところもあったが、(そして、そうはいっても日が経つにつれ、懸念は現実のものになってしまうのかもしれないが)太陽が照り付ける季節になるまでは、まだまだこれでいい、と自分は思っている。

で、世の中はまだそんな感じのアイドリング状態、局地的には再びの感染拡大リスクも懸念されるような状況だけに、この時期になっても、ちょっと先のイベントが中止になる、という話は相次いで飛び込んでくる。

単にそういったイベントの便益を享受するだけの立場の者としては、「8月とか9月の話なら、もう少し様子を見てもいいんじゃないか」と安易に言ってしまいそうにもなるのだけれど、大きなイベントになればなるほど、事前の調整には想像を絶するくらいの時間がかけられているものだし、いわゆる競技会系のイベントであれば、「頂点」に至る前の予選こそが、多くの参加者にとっての「本番」だったりもするわけで、早々と中止が決まってしまった夏の甲子園やインターハイ級のスポーツイベントはもちろんのこと、「夏祭り」や「フェス」から、秋の学会、学園祭、オープンキャンパス等に至るまで、今の時点でやむなく中止の発表をする主催者を責めることなど、誰にもできないはずだ。

何より、この種の、年に一度、多くの人を集めて開かれるタイプのイベントが中止になった時に一番無念の思いに駆られるのは主催者に他ならないわけだし、どんなに金銭的な補償だの何だの、といったところで、その無念さを埋めることなどできないと思うから*1

今日の昼くらいには、母校の天然記念物級の一大行事が中止になったんだ・・・というニュースを(今さら)見つけて、そんなことをあれこれ考えていたりもしたのだが、夕方になってもっと残念な報に接することになってしまった。

www.juris.hokudai.ac.jp

夏の札幌で行われる年に一度の至福の祭典、そして、講演者も受講者も、”知財界のダボス会議”と評したくなるような豪華さで、存分に知的刺激を味わえる4日間。

何もなければ告知と同時に申し込んでいても不思議ではなかったのだが、今年は元々「オリンピックとパラリンピックの谷間」という、どう考えてもホテル代が最高潮に達していそうな時期だったことに加え、それでも・・・と思い直した1月下旬くらいに「例の話」が出始めて、瞬く間に「緊急事態」へと進んでしまったこともあって、ちょっと様子を見ていたところではあった。

とはいえ、つい先日までは、「オリパラも中止になり、訪日客もまだ入ってこられないだろうから、今年は去年よりもワングレード上の宿を使えるんじゃない・・・」とかなんとか思っていたところもあったわけで・・・

もうこれは、自分の見通しが甘かった、というほかない。

隔年で設定されるテーマのうち、これまで偶数年に開催されていた「特許法」メインの回の方は、かつて世知辛く年次有給休暇をやりくりしていた時代には、もう一つの大きなテーマに比べて「休みを固めて何が何でも」というモチベーションがそこまで高くなかったこともあって、これまでに足を運んだことは確か一度しかなかったと思うのだが、今年は、年明けにちょうど田村善之教授の論文集に接したこともあり*2特許法における創作物アプローチとパブリック・ドメイン・アプローチの相剋」といったような骨太な講義に心惹かれるところもあったのだった*3

だからこそ、今は、心の底から残念でならない

今回の中止を経て、再びオリンピックの年にめぐってくる(はずの)一年後のテーマが、今年と同じなのか、それとも順番通り奇数年のテーマに戻るのか、ということも、どうしても今から気になってしまうところなのだが、まずは来年こそは無事開催されますように、ということと、聴講の機会はなくとも寄付の機会があれば是非に*4、ということだけ申し上げて、諸々の事態の収束を願い続けることとしたい。

*1:自分も、これまでの人生の中で、ギリギリまで、大げさに言えば命を懸けて臨んできたようなイベントもいくつかあったが、仮にその時に今のようなことが起きて、しかもそれが最終学年だったり、任期最後の年の出来事だったりしたら、たぶん心の平静を保ちきれなかったんじゃないか、と思う時がある。そして、大概そういう行事なりイベントは、実入りのない、むしろ自分たちの持ち出しでやっていたようなものだったりする。

*2:我々はこの山をどこまで登ることができるのだろう?~田村善之『知財の理論』との格闘の途中にて。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。

*3:予定されていたカリキュラムはサマーセミナー2020の日程(中止となりました) | 情報法政策学研究センターのとおり。既に取り上げたもののほかにも、進歩性、均等論、損害論といったコア論点のアップデートから、AIの世界に至るまで実に魅力的なものだった。

*4:いつか、新幹線一本でかの地までつながる日が来たら、それに乗って駆け付ける、というのが自分のささやかな夢だったりもするものだから。

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