ウイルスには本当に隙がない。
想像していたとおり、GW明けの”緩み”の影響がここにきて如実に数字に現れ始め、とうとう「東京アラート」発令という事態となった。
まだまだ「爆発」には程遠い状況ではあるし、推定される感染経路が今報じられているとおりなら、健全な生活を送っている限り、リスクを回避することもそこまでは難しいない気がしているので、昨晩も、世の多くの人々と同様、「アラート」が出たという事実より、「赤く染まったレインボーブリッジ」に見とれる感覚の方が先に来てしまった*1。
だから、自分の生活は相変わらずマイペースで、この１年近く平日は必要最小限の寄り道しかしない生活だったこともあって、今やすっかり「新型コロナ以前」に戻ってしまった気さえする*2。
ただ、冷静に街を歩く人の数を見れば、やっぱり「以前」と比べるとかなり少ない印象だし、お店によっては”ソーシャルディスタンス”で席数が極端に減っているところも残っていたりする*3。
月が変わって早々に公表されている各社の５月月次の売上等を見ると、少なくとも「物」の購入に関しては事前の想定よりずっと回復のペースが早くて、首都圏ではほとんどの期間お休みだったにもかかわらず、アパレル、雑貨系の事業者の中には、売上が３月頃と比べてもより良い水準に戻っていたところが多かった。そして、株式市場も、当初根強かった「二番底」観測をあざ笑うかのように、しばらくは止まりそうもない上げ潮に支配されている。
先行して回復を遂げている中国の例（新車販売台数の急激な伸びなど）を見ても、感染ピークを過ぎてからしばらく時が経てば一気に消費意欲が湧いてくる傾向はあるようで、通常は「先行指標」と言われている株価がここまで力強く上がれば、淡い期待をしてみたくもなるものだ。
でも、その一方で、今世の中を覆っている景気不安、雇用不安の声は決してやむことはないし、それは、ここにきてますます強まってきているような気もする。
これまでと全く同じように、いや、むしろよりはじけた感じで街中を闊歩する人々がいる一方で、この暑さの中でも全身を完全防備し、飲食店に入るや否や持参した消毒液であちこちを吹きまくる人々もいる*4。
定額給付金を早々に受け取っても当座の糊口をしのぐのが精いっぱい、あと一か月乗り切れるかどうかも怪しい、という人々は間違いなくいる一方で、この数か月、資産を倍々ゲームで増やしていき、給付金になど見向きもしない、という人々も世の中には決して少なくない。
どちらも同じ世の中で起きている出来事、同じ世の中で生きている人々。
それまでは存在しても、そこまで極端には顕在化していなかった断層が、一連の新型コロナ禍によってくっきりと見え始め、「一つ」だと思っていた世界が複雑に分裂していくかのような状況が今地球上のありとあらゆるところで広がっているような気もするのだけれど、それを是とするかどうかも含めて、一人ひとりの価値観に左右されるところが大きいだけに、何とも言えない気分になる。
コロナ禍が収束する頃には、この分裂した世界も、もう少し再統合される方向に向かっていくのか、それとも一度平行して走りだした世界が交わることは二度とないのか、現時点で予測することは困難ではあるのだけれど、自分はいろんな世界を渡り歩いてこそなんぼの人生だ、と思っているので、居心地の良いところに安住し続けることなく*5、生きていくしかないよね、と思っているところである。
そして、もう一つ、間近に迫りつつある6月定時株主総会の世界でも、複雑なパラレルワールド現象が生まれていて、一部の省庁や実務家が唱えている「株主と会計監査人のために延期しましょう」を地で行く会社たちの世界と、「予定どおりやるが今年はイレギュラーだ、株主はいなくていい」という雰囲気を漂わせた会社たちの世界、さらに、「そうはいっても普段通りやりましょう」という思想が招集通知から透けて見える会社たちの世界は、どこまで行っても交わりそうにない。
ここにきて「アラート」が発令され、今回が最後の定時株主総会になりそうなソニーフィナンシャルHD㈱が、6月総会の会社では現時点で唯一の”急遽会場変更”のリリースを出した*6様子などを見ると、まだまだ前二つの世界にもリアリティはあるな、と思ったりもするのだが、さらに進んで3週目、4週目となった時に、どの世界がもっともリアルワールドの感覚に近かったと評されるのか。
怖いもの見たさではあるが、まだまだ未知数、見通し不透明なところが多いこの先の世界、誰にも予測できない世界だからこそ、その行く末を寄り添いながらじっくりと見届けていくことができればな、と思っている。
*1:なんか、あの絵はエヴァンゲリオンの世界だな・・・と思いながら中継映像を見ていたりもした。
*2:会社員時代と違って毎晩飲み歩くでもなく、昼間仕事して、時々カフェで気分転換して、夕飯は手軽に食べられるもので済ます、という生活なら、緊急事態宣言解除直後からもう十分に堪能できるようになってきていたりもするから。
*3:愛用していたカフェは、最初の頃こそ一席空けの配置にしていたものの、戻って来た利用者数に耐えきれなくなったのか、昨日あたりからすっかり元の席数に戻っていたりもするのだが・・・。
*4:最初そういう方を見かけた時は心底びっくりしたが、それが決して一人二人の世界ではない、ということに最近気がつき始めてより驚きは増している。
*5:今なんて、一日中投資に時間を使えたら、すごく楽しい時間を過ごせると思うのだけど、その誘惑に負けることなく・・・。
*6:https://www.sonyfh.co.jp/ja/financial_info/shareholder/meeting/200623_06.pdf
