これもいつかどこかで見た光景~”ワクチン騒動”の既視感。

まぁ、こうなる予感はあったのだけど・・・。

新型コロナウイルスのワクチン予約を停止する動きが各地の自治体に広がっている。ファイザー製ワクチンの供給が細り、希望量を確保できないことが判明し、不足懸念が高まった。接種計画の見直しを迫られる可能性もあり、困惑の声が上がる。」(日本経済新聞 電子版2021年7月3日12時49分配信、強調筆者、以下同じ。)

河野太郎規制改革相は2日、新型コロナウイルスのワクチンの職場接種を巡り、これまでに承認を受けていない会場は7月中の開始が難しいとの見解を示した。週あたりのワクチン供給量に限りがあり、供給は8月2日の週以降になると説明した。」(日本経済新聞 電子版 2021年7月2日21時00分配信)

自分の場合、接種券は一応手元に届いてはいるものの、時々自衛隊の集団接種センターのウェブサイトを覗きにいくくらいで*1、接種予約を取るための特段の動きはしていない。

副作用をそこまで心配しているわけではないし、ましてや「反ワクチン」的な動きに与するつもりも毛頭ないのだが、エスカレートしていく報道や、それを真に受けていろんなところでバタバタと騒いでいる方々を見るにつけ、

「こんなところで慌ててどうする・・・?」

という思いは日増しに強くなっていくわけで、日頃の生活における感染リスクの大小とか、持病の有無とか、喫緊で海外渡航する予定があるかどうかとか、そういったことを考えれば考えるほど、

「今、急いで接種する必要はないんじゃない?」

という結論に辿り着き、高みの見物を決め込んでいる。

もちろん、上に挙げたような要素との関係で、どれか一つでも「ワクチン接種が必要」という事情がある方には早々に受けていただくのが良いと思うのだが、特にそういう事情もない人間が、他人を押しのけてまで自分自身とか、自分の会社の予約の枠を確保しにいく、というのは、ちょっと違うだろう、と思わずにはいられない。


思えば、一年前、「マスク」をめぐる騒動の時も、こんな感じだった。

「在庫」と言えるようなものはほとんど持ってはいなかったが、布マスク一枚*2あれば”マナー”としては十分だろう、ということで、わざわざ値上がりしたマスクを買うためにドラッグストアに行くだとか、通販で買いこむとか、って話とは全く無縁だったのだが、それで何か困ったことがあったか?と言えば、何もなかった。

大体、ワクチンを打ったところで、リスクの高い行動をとれば100%感染を免れることはできないし、逆にワクチンを打っていないからといって、確実にデルタだのラムダだのに捕まってしまうわけではない。

結局のところ、すぐに日常の行動を大きく変えられるわけではなく、変える必要もない*3のだから、焦らず騒がず、優先すべき方々に先に接種していただいて、余裕をもって受けられるタイミングが来たら行けばよいだけ。

騒動に飛びつくと平時の何倍もの代償を払わなければいかなかったマスクとは異なり、ワクチンはいつ接種しても「タダ」だ。

だからその分、予測需要を大きく上回るようなボリュームで囲い込んだり、姑息な手段を使って”順番”に割り込む、といった機会主義的な行動に走るハードルも、どうしても低くなってしまうのかもしれない。

ただ「他人を出し抜いてでも受けなきゃ損」のような発想で動いている人がもしいるならば、

「お天道様は見てますよ」

という言葉をそっとかけて差し上げたいと思っている*4


なお、自分でも忘れかかっていたが、昨年の夏に↓のようなエントリーを書いていた。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

今、この時期になって接種が本格的に行われている、というのは、当時の予想ともそんなにズレていないのだが、この期に及んでもまだ感染者数が高止まりしている、というのは、残念ながら昨夏の想定を超えている。

当時話題になっていた「政府補償」に関しては、昨年の臨時国会で「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律」が成立し、予防接種法の附則第8条に

「政府は、厚生労働大臣新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの供給に関する契約を締結する当該感染症に係るワクチン製造販売業者(前条第二項の規定により読み替えて適用する第十三条第四項に規定するワクチン製造販売業者をいう。)又はそれ以外の当該感染症に係るワクチンの開発若しく
は製造に関係する者を相手方として、当該契約に係るワクチンを使用する予防接種による健康被害に係る損害を賠償することにより生ずる損失その他当該契約に係るワクチンの性質等を踏まえ国が補償することが必要な損失を政府が補償することを約する契約を締結することができる。」

という規定を加えることによって既に対処されているし、厚労省のサイトで公表されている事例*5等を見る限り、そこまで深刻な状況にはなっていなさそうなのが救いといえば救いなのだが、「統計的に見ればリスクは低い(だから積極的に接種を勧めるべき)」という話と、「僅かな確率ではあっても副作用禍に遭遇してしまった人に十分な補償をしなければいけない」という話、そして何よりも「禍に遭遇する人を一人でも減らさなければならない」という話は切り分けて考えないといけないわけで、一番最初の話に熱を入れ過ぎて、後の2つがなおざりにされるようなことは、あってはならないと思う次第である。

*1:昨日の夕方覗いたら、たまたま来週の1回目接種2100人分の予約が始まるタイミングだったようで、そのままつないでみたものの、一度も予約画面に遷移することなく終了となった。思わず、どんなプラチナチケットだよ・・・と突っ込みを入れたくなった。

*2:当然だが、気付けば開封しないままどこかに行ってしまった「アベノマスク」ではない。

*3:一部の人々が騒いでいた「経済の落ち込み」が局地的な現象に過ぎなかったことは、2020年度の法人税収が前年度比増になった、という先日の報道(新型コロナ: 国の20年度税収、コロナ禍でも過去最高 60.8兆円に: 日本経済新聞)からも明らかだろう。これで「ワクチン打ったから経済効果12兆円!」とか騒いで、昨年の「Go To」のような、意味不明の需要喚起策など打とうものなら、感染者は減らない上に、あちこちで需給バランスが崩れてかえって経済に悪影響が出ることは避けられないと自分は思っている。

*4:ワクチンの品質自体はいつ受けても変わらないと思うのだが、「打ち手」(この言葉自体、従事者を愚弄しているようで自分は大嫌いなのだが)だって人間なのだから、そうでなくても大量に受診者が押しかけてくる中、バタつき気味のオペレーションで対応しようとすれば何件かに一件の確率で不幸な「事故」が起きる可能性だって当然ある。また、感染症の流行が長引けば、毎年インフルエンザで起きているのと同様に「早く予防接種打ち過ぎて抗体が切れてかかっちゃった」現象も起きうるわけで、そういったリスクも踏まえての「焦らず」が今は大事なのだと思う。

*5:新型コロナワクチンの副反応疑い報告について|厚生労働省

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