夏のスピード。

未知のウィルスも恐ろしいが、荒ぶる大地はもっと恐ろしい。そんなありきたりな言葉しか出てこないくらい、壮絶な映像がネット上で駆け巡った週末だった。

不幸にもこの日本では、「風水害」がここ最近、夏の定番といえるくらいポピュラーなものになってしまったが、それが比較的馴染みのあるエリアで、しかもそれなりに住宅が密集している地域で起きてしまった、というのがより大きな衝撃を感じた一因かもしれない。

今週からようやく「開幕」となった福島競馬場も、本来なら春先に最初の開催が行われるはずが、2月に東北を襲った地震の影響でここまで延びてしまった。しかもスタンドの修繕は未だ終わらず、ということで、新型コロナとは無関係に無観客、という異例の事態。

それでもターフでは平和に馬が走り、「先行馬を捕まえきれずにそのまま・・・」という福島定番の展開となるレースが続くのを見て、ちょっと安心したところはあったのだが・・・。

ちなみに変則開催、といえば、今年も、小倉の夏は短い

昨年に続き、東京五輪馬術競技の支援のため、7月下旬から8月上旬、一番いい季節にぽっかりと「3週間の空白」ができてしまう。

この時期、最後の勝ち上がりチャンスを狙う未勝利馬たちも多いことを考えると、毎週10レース近いチャンスが失われる、というのは残念な話でもあるわけで、2年続けて何とかならんかったのかなぁ・・・という思いはある。

そして、その短いシーズンでも存分に存在感を発揮する・・・ことを狙ったがゆえかどうかはわからないが、開幕週の小倉の芝は、反則に近いくらいのコンディションだった。

1日目の第3レース、3歳未勝利の芝1800m戦で、コースレコードを17年ぶりに0秒3更新する1分43秒8のタイムが飛び出す。

勝ったエスコーラは、サラキア、サリオスの下、という文句なしの良血で、後続には大差を付けていたとはいえ、「未勝利戦」である。

さらに続く10レース、2勝クラスの特別戦・戸畑特別で、今度は芝1200mの日本レコードが更新された。

プリモダルクという4歳牝馬、名門・藤原英昭厩舎所属の外国産馬だが、芝を走ったのは初めてという状態で挙げた3勝目が1分6秒4。

1999年にアグネスワールドが1分6秒5のタイムを記録した時の映像は自分も見ていた記憶があるが、当時から「どうひっくり返ってもこんなタイム出せない」という雰囲気で、実際、世紀が変わっても20年以上更新されずに生き残っていた記録。それが破られた・・・。

戸畑特別に関しては2着の馬も1分6秒台だったし、最終レースの1勝クラスのレースですら、逃げた馬が1分6秒台を叩き出したから、ここまで来ると、このタイムが馬の能力、というよりは、今年のピカピカの馬場のせい・・・ということを誰もが確信せざるを得なかったわけだが、そうなると、注目されるのは同じ芝1200mで行われる日曜日の重賞、GⅢ・CBC賞

東の方の競馬場とは違い、一日明けても雨に降られることのなかった小倉の芝は、そんな期待を決して裏切らなかった。

快速自慢の13頭が揃ったレース、刻まれるラップは10秒台、最初の1000mが54秒3、という異次元のスピード感の中で、逃げたロードカナロア産駒のファストフォースがそのまま先頭でゴールを駆け抜け、掲示板に上がったタイムは、

驚愕の1分6秒0

個人的にはこの辺で重賞タイトルを掴んでほしかったヨカヨカ姉さんが先行するも粘り切れず5着、という残念なレースでもあったのだが、彼女のタイムも「1分6秒4」だから、アグネスワールドの伝説の日本レコードよりも早く駆け抜けた計算になるわけで、まさに度肝を抜かれるレースだったというほかない。

毎週のように空模様が変わる夏競馬のこと、今週の小倉ほどキレる舞台はもうしばらく現れない可能性もあるのだけれど、この2日間のインパクトだけで十分記憶にも記録にも残る。そして、テレビ画面越しながらも、その瞬間を目撃できた、ということを今は誇りに思っている。

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