すっかり毎年の恒例行事となった感のある「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化に関する調査とその結果を踏まえた事業者名の公表。
今年も公正取引委員会のリリースにより、気の毒な10社の名称が公表されている。
調査対象となった
① 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
② 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
という2類型の行為が推奨されるべきものでない、という点については、自分も争うつもりはないのだが、受注者に対する調査結果を踏まえ「個別調査」まで行ってもなお、
「当該事業者名の公表は、独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」
というような留保をつける状況下で、「社名」だけはしっかり公表してしまう、というのが果たして良いことなのかどうか。
公取委は「あらかじめ、対象となる事業者に対し、意見を述べる機会を付与した。」ということも書いているが、おそらくは結論がほぼ決まった状態でのヒアリングだろうし、そこでどういうやり取りがなされたのかも、外側からうかがい知ることはできない状況にある。
そんな状況下で「社名」だけは公表・・・。
残念ながら名前が挙がってしまった会社に対しては、レピュテーション悪化など気にせずに、これまで通り我が道を進んでほしいな、と思わずにはいられないし、1年後に「なぜあの会社の名前を公表したのか?」と突っ込まれるくらい柔軟な対応ができる会社になっていればそれはそれでよし。
いずれにせよ、政府の民間取引への過剰介入に振り回されることなく、憂いなく自分たちの事業と取引に専念できる環境が訪れることを願って、しばらく様子を見てみたいと思っている。