「地域ブランド」は救世主になるのか?

「発明の日」絡みの資料を見たついでに、
経済産業省のサイトを眺めていたら、
こんなプレスリリースも見つけた。
http://www.meti.go.jp/press/20060413001/20060413001.html

地域ブランド 特許庁に大集合!! 〜目指せ地域ブランドの権利化と地域経済の活性化〜」

この4月1日から施行された地域団体商標制度
好調に動き出したことをアピールするこのリリース。


「大集合!!」なんてタイトルをつけてしまうあたりのセンスに疑問符は付くが、
プレス資料によれば、

「4月10日までの10日間に受け付けた出願件数は、累計で324件に上りました。このうち、4月1日の出願は、土曜日にもかかわらず258件ありました。」

ということだから、
特許庁のPR活動も一応は効を奏した、ということなのだろう。


添付されているリストを見ると、
北は「宗谷黒牛」(沼川農協)、「鵡川ししゃも」(鵡川漁協)から、
南は「八重山そば」(八重山ブランド協同組合)、
琉球泡盛」(沖縄県酒造組合連合会)まで。


変り種としては、「BLUE MOUNTAIN COFFEE」。
ジャマイカの団体(?)*1が出願したのかどうかは分からないが、
とりあえず、「ジャマイカ」は「都道府県」じゃないだろ!
と突っ込んでみる(笑)。


さて、今回の地域団体商標制度の導入によって、
これまで商標法3条2項によって限定的に認められていたに過ぎなかった
「地域+商品」商標の登録要件が一定程度緩和されることになった。


とはいえ、「団体の適格性」や「地名と商品の密接な関連性」
といった要件に加えて、
「使用による一定程度の周知性の獲得」が要求されることに変わりはなく、
「商品の普通名称」とされるものであれば結局登録が阻却されることになるから、
地元の組合が張り切って出願した商標であっても、
登録には至らないものは多少なりとも出てくるものと思われる。


ざっと見たところでは、
「京○○」といった出願が目立つが、
この手の名称は、京にルーツを持つ(持たなくても?)
全国各地の名産品に使われることが多いものだから、
果たして京都圏の組合だけに使用を独占させるべきか、
判断に迷うところだと思われる。


また、「広島の酒」(広島県酒造組合連合会)といったときに、
特定の銘柄や料理を思い浮かべるかは怪しいところだし、
稲城の梨」(東京南農業組合)がどの程度周知になっているか、
疑わしい面もある。


このあたり、登録審査にあたってどの程度の疎明を要求するか、
という、特許庁の運用次第ということになるだろうが、
さじ加減はなかなか難しいのではないかと思う。


さらに、晴れて登録にこぎつけたとしても、
権利者となった団体は、遅かれ早かれ、
類否判断や商標的使用、といった商標独自の問題に直面することになろう。


喜多方ラーメン」が商標登録されたからといって、
「元祖・喜多方名物のラーメン」といったコピーを用いる事業者に対して
差止請求が認められるとは限らない。
そのあたりに商標の難しさがある。


商標権はブランド戦略における万能薬ではない。


それは、ブランドの構築と維持、という永遠に続く道程の中で、
ブランド主が使える一つの“ツール”に過ぎないのだ。


そして、そういった商標権の本質を理解することなく、
地域ブランド」という言葉に踊らされて、
真のブランド管理をなおざりにしてしまうと、
思わぬところで足をすくわれかねない*2


まぁ、これからどういった形で制度の本質を周知し、
審査の段階でふるい落としをかけてくのか、
制度運営者サイドのお手並み拝見、といくとしよう。


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*1:「コーヒーインダストリーボードオブジャマイカ」という団体が出願人になっている。

*2:他にも、協同組合内部の内紛が商標紛争に形を変えて法廷闘争に持ち込まれたり、と、想定されるリスクを挙げていくと結構きりがなくなってくるように思われる。

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