つい先日最高裁判決が出たばかりだというのに・・・、
と驚かされた下記のニュース。
「半導体の回路製造に用いる特許を発明した元日立製作所社員が23日、「正当な発明対価を受け取っていない」として、同社などに対価の一部として二億円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こす。」(日経新聞2006年10月23日付夕刊・第1面)
訴えているのは日立元社員の岡本好彦氏(55)。
使用者の受けるべき利益を80億円と推定し、
その20%の16億円を対価と主張、その一部の二億円を請求する、
というストーリーを描いているようである。
「位相シフト露光」というこの発明が、
どのような技術的意義を有するものなのか、
自分には良く分からないのだが、
米沢氏同様、社内最高の賞を受賞していることや、
既に報奨金として2000万円(!)を受け取っていることなどから、
かなり大きな意義を持つ特許であることは確かなのだろう。
ちなみに特許は1988年に出願され、1997年に登録されたもの、
ということだから、権利譲渡時からは10年以上経過しており、
ここは、消滅時効の問題が一つの争点になりうる。
これまでの裁判例の流れでいけば、
実績に応じた補償金を登録後に支払ったことをもって時効中断、
ということになるのだろうが、
上記2000万円の報奨金の背景には、
「第二の米沢訴訟を防ぐべく使用者側がとった窮余の策」
といった雰囲気もうかがえるだけに、
単に「最後の支払い時期が遅い」という理由だけで、
使用者の抗弁を退けるのは辞めて欲しいなぁ・・・
というのが使用者サイドの素朴な実感であろう。
最高裁判決が2件出されたとはいえ、
「判例」として確立しているのは、
35条の根本的解釈(追加対価を従業者が請求しうる、ということ)と
外国特許の対価支払いの問題だけなので、
日立としては、まだまだ反撃の余地はあるといえるだろうが、
勝っても負けても、森濱田松本に支払うチャージが
相応の額になることだけは変わりはないはずだから(苦笑)、
いずれにしても、気の毒な話であることに変わりはない。
法務・知財担当者にとっての憂鬱な時代は、
まだまだ続きそうな気配である・・・。