日経新聞の月曜法務面に、「弁護士もマーケティング」というタイトルの記事が載っている*1。
“大増員時代”ということもあって、
「センセイ」と呼ばれる弁護士たちも生き残りをかけ、「マーケティング」に知恵を絞り始めた。広告の方法を工夫したり、IT(情報技術)を駆使して割安のサービスを提供したりと、取り組み方は様々。「紹介待ち」から「選ばれる事務所」への脱皮を目指す。」
ということであるが、冷静に考えれば、士業なんてまさに“零細自営業者”以外の何ものでもないわけだから、増員されようがされまいが、マーケティングが重要なのは言うまでもない話。何をいまさら、という感がしないでもない。
記事の中で取り上げられているのは、Adsense広告でも良く見かける大山滋郎弁護士(http://www.ypartner.com/)や、地下鉄車内の広告で有名な「ホームロイヤーズ」の西田研志弁護士(所長)。
いずれも、それまでにはなかったタイプの営業手法をとられている先生方で、この業界に限っていえば“画期的な”部類のマーケティングを行っている、と評価されることになるのかもしれない*2。
だが、ひとたび世の中に広く目を向ければ、商売のやり方としては珍しくも何ともない、ということにすぐ気が付くはずで、この程度のやり方で取り上げられてもなぁ・・・と思った方は少なくないのではないだろうか。
自分が日頃付き合いのある事務所に目を移してみても、一部の大規模事務所を除けば、戦略的な広告宣伝手法を採用している事務所など皆無に等しいし、それ以前の問題として、いまだにHPはおろか電子メールでのやり取りさえ満足にできない*3事務所も決して少なくはない。
そして、皮肉なことに、そういう“老舗”の事務所に限って、会社の顧問弁護士としてのステータスは相対的に高かったりする。
自分くらいの世代の人間にしてみれば、そんな使えない事務所はさっさと淘汰しちまいなよ、と嫌味の一つも言いたくなるものだが、長年のしがらみを断ち切るのはなかなか難しいらしい(苦笑)。
まぁ、あと数年もすれば、クライアントとのメールのやり取りすら不自由するような事務所は間違いなく淘汰されていくだろうし、筆者としては是非そうなってほしいと強く願っているのではあるが・・・。
いずれにせよ、マーケティング以前の問題から、マーケティングそのものの在り方等まで通して見ていくと、ずいぶんと牧歌的な“競争”をやっているものだなぁ・・・と言われても仕方ない状況がこの業界にはあるような気がする。
資格を持たんことには何も始まらない、という特殊事情はあるにしても、(企業向け、個人向けを問わず)リーガルサービスの市場は「まだまだ開拓の余地がある有望市場」という世の多くの門外漢の見方は、あながち外れてはいないのでは・・・?
というのが、この記事を読んでの自分の一番の感想である。
(追記)
つらつらと駄文を書いていたら、なんと大山滋郎弁護士ご本人のブログからトラックバックをいただいてしまいました・・・(http://bengoshidokuritsu.sblo.jp/article/18133307.html)。
日頃から当ブログをお読みいただいているとのこと。
この場を借りて、厚く御礼申し上げます。