スリリングな展開

当ブログでも継続的に取り上げている富士通・野副元社長辞任問題。


これまで野副氏サイドから情報戦略に押され気味の感があった富士通だが、ここに来て事前の予告*1どおり、一気に反攻に転じた。


2010年4月14日付のプレスリリース(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2010/04/14-1.html)では、2月26日付け辞任取消通知書の受領に始まり、横浜地裁川崎支部での地位保全仮処分(野副氏側の取下げで終了)の経緯や、遡って9月25日の辞任に至るまでの経緯等、事実関係をかなり詳細に公開している。


前記プレスリリースには、ところどころに会社のコメントも掲載されているのだが、その中身はなかなか辛辣だ。


仮処分が取下げ、という結果で終わったことについては、

「この野副氏の取り下げについては、非常に疑問を感じている。裁判所は、客観性・公正さが担保された、究極の外部調査委員会。もし、野副氏がマスコミに向けて言うように、外部調査委員会の判断が必要ならば、お互いの言い分や証拠を出し合った裁判所の判断を得るべき。今回の野副氏の結審後の取り下げは、誠に遺憾である。」
「しかも、野副氏は、裁判所の判断は避けながら、記者会見ではこれまでと同じ主張を繰り返している。さらに、野副氏は、「取締役として復帰することは求めていない」などと、事実に反する主張をしている。」

と野副氏の姿勢を厳しく批判しているし、辞任の経緯についても、

「社長の中途辞任あるいは解職は、異例のことであるが、問題は、当社の代表取締役社長としての適格性である。そのファンドの風評・評価について、それが真実であると立証されないかぎりは、関係をもって良いというものではなく、むしろ、その風評・評価が相当程度一致しており、万が一その風評・評価が事実であった場合に生じるリスクが極めて大きいということであれば、たとえ個人的に信頼する人物であったとしても、当社の代表取締役社長という立場にある限りは関係を自粛する、当社の事業には関与させないという判断が必要である。それがグループ17万人の従業員を預かるトップであり、かつFUJITSU Wayの最高の体現者としてのとるべき態度である。」

と従来の会社の主張をさらに整然とまとめて、「辞任」の妥当性をアピールしている。


さらに、これからの主戦場となるであろう、株主代表訴訟前提の提訴請求については、

「野副氏は、2009年9月25日の事情聴取の際に、ニフティの売却を現在進めようとしているのかを聞かれ、「ニフティの売却というのではなく、ニフティ企業価値を高めるためにどのような案があるのか検討している段階で、特定の企業に売却することを決めているわけではない、現在は3案くらいが検討されているのではないかと思う」と自ら述べた。また、社内でも、経営会議や取締役会などで機関決定したことはなく、ニフティの売却が決定間近であるとの認識は全くなかった。」

と、野副氏側の請求に理由がないことを強調している。


確かに、会社側が公開したこれまでの経緯(特に仮処分申し立てから取下げに至るまでの経緯)などを見ると、野副氏側の対応には(野副氏の主張が真実だとするならば)ちょっと理解に苦しむところが多いように思われ、会社が強気に構えている、というのも十分に納得できるところ。


事情聴取に法務本部長を立ち会わせ、録音データまで取った上で辞任させた、というあたりに、会社が様々なリスクを想定して入念に準備していた状況がうかがえるのであり、仮に野副氏側の言い分に真実が隠されていたとしても、会社側のガードを崩すのは容易ではないように思われる。



もっとも、ワンサイドゲームになりそうな雰囲気になった翌日には、事態がまた新たな展開を見せた。

「野副州旦・富士通元社長の辞任問題に絡み、富士通側から「反社会的勢力との関係が疑われる」とされた投資会社が15日、富士通の3人の役員を相手取り、総額3億3000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求め、東京地裁に提訴した。」(日本経済新聞2010年4月16日付朝刊・第11面)

と、野副氏サイドの援護射撃をするかのような「第三者」の登場である。



富士通側からは、前記14日付プレスリリースの中にも、それ以前の情報にも、「問題のあるファンド」がどのファンドなのかを特定させるような情報は出てきていないし、14日付プレスリリースには、

「当該ファンドについては、複数の金融機関から、好ましくない風評があるとの情報が提供された。」

とか、

「複数の調査会社による調査でも、当該ファンドについては好ましくない結果が報告された。」

といった表現はあるものの、「当該ファンドが反社会的勢力と関係している」と断定したくだりはなく、反社会的云々といった話も、あくまで会社と野副氏のやり取りの中で出ていた話の中身が専ら“野副氏を通じて”伝播されたものだ。


そういったことを考えると、投資会社側の主張する、

「社会的評価の著しい低下」

が果たして富士通によってもたらされた、と言えるのかどうかは疑わしいように思えるのだが、投資会社側がその辺の主張を構成し、どこまで勝算をもって訴訟に挑もうとしているのか、今の時点でははっきり分からないだけに、何ともスリリング。


株主総会までに決着が付くのか、それともズルズルとその先まで行ってしまうのか。相変わらず気になるところである。