年金減額をめぐる壁

提訴以来、業界では何かと話題になることが多かった「NTT企業年金規約変更不承認処分取消請求事件」。


地裁、高裁とNTTグループ側敗訴、という結果となり、最後の砦と目された最高裁でもとうとう上告を退ける決定が出されたようである。

NTTグループが申請した退職者の年金減額を厚生労働省が承認しなかったのは不当だとして、グループ67社が不承認処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は9日までに、NTT側の上告を退ける決定をした。NTT側敗訴の一、二審判決が確定した。今回の決定を受け、産業界でOBの年金減額に慎重な姿勢が一段と広がる可能性もある。」(日本経済新聞2010年6月10日付朝刊・第4面)

本件について裁判所が下した判断の詳細については、以下のリンク先をあたっていただければ、と思う。


東京地判平成19年10月19日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080623170740.pdf
東京高判平成20年7月9日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090206103534.pdf


そもそもの厚労省規則の有効性に始まり、「減額」にあたるかどうか、減額要件を満たすか、といった点について激しく争われた事件の割に、最高裁の明確な判断が下されなかったのは残念と言わざるを得ないのだが、こういう結末になった以上、実務はより消極的なスタンスで動かざるを得ないように思われる。


今の時代に7%という高い給付利率を維持することの妥当性・合理性や*1、「OBの9割近い同意」を得て手続要件を軽くクリアしているにもかかわらず役所の“裁量”による実質基準で切られてしまうことの可否*2など、考えるべきことはいろいろと多かったように思うのであるが・・・。


引っかかるところは多い。

*1:結局そのコストは現役世代が負担することになる。

*2:いくら黒字で配当も出ている、といっても、ビジネスモデルが目まぐるしく変わっていく中で、今のような高コスト体質を維持し続けられるとは到底思えない。そんなところまで、“役所”しかも“厚生労働省”に判断させることが果たして妥当なのか。

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