今年も「刺客」の独壇場だったブックガイド

この一年、インパクトのある本にはそれなりに巡り合っていたのだが、ブログの更新が滞ったこともあって、ほとんど紹介できずじまいだった。

そんな中、今年も年末恒例のBusiness Law Journal「ブックガイド」特集が世に出されている。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2016年 2月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2016年 2月号 [雑誌]

例年、まったりとした(?)匿名座談会と、実務家の個別紹介原稿で構成されていたこの企画だが、昨年、この特集に“企業法務系ブロガーronnor”氏が参戦されたことで、一気にエッジの効いた企画となった*1

今年も、ronnor氏が、「企業法務系ブロガーによる辛口法律書レビュー」というタイトルで、

「『法務パーソン』が自費で購入して読む価値があるかという観点から、40冊を選択」する

という、より完成度の高い記事を寄稿され、事実上の連載化、ということになっている*2

そして、今回も、昨年同様、各書籍の本質的な位置付けから細かい突っ込みまでユーモアを交えた読みやすい解説が付され、7ページという長さを感じさせない構成となっており、期待は全く裏切られていない。

自分は紹介されているすべての本を読んだわけではないので、この充実した解説にコメントするのはおこがましい限りなのであるが、「訴訟」のカテゴリーの解説に関しては、チョイスからしてドンピシャ、というところがあるし、いろいろと話題になった『システム開発紛争ハンドブック』や『アプリ法務ハンドブック』、『独禁法の道標』に対するコメントも、うまく的を射たものになっているなぁ、という印象を受ける*3



有象無象の書籍が市場に出される中、良いものを単に“勧める”だけではなく、内容が読者層のニーズを満たしていない、価格の割に手ごたえがない、といったものについては、容赦なくコメントをぶつける、というところに、BLJ誌のこの企画の意義、そして匿名書評の意義があるのは間違いない*4

そのような観点からすると、同じ書籍を取りあげていても、紙幅の関係で、奥歯に物が挟まったような突っ込み不足のコメントに留まりがちな「座談会」に比べて、ronnor氏の記事は遥かに有意義な書評となっており、これだけの質のレビューが毎年掲載されるのであれば、もう座談会はやらなくてよいのでは?(その代わりにronnor氏に全面カラーページで「良い50冊、ダメな50冊」という記事を書いていただければよいのでは?)とすら思ってしまうのであるが、その辺は、来年の編集部の方々の英断に期待することとしたい。

*1:昨年の感想は、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20141227/1420003996

*2:企業法務系ブロガー「企業法務系ブロガーによる辛口法律書レビュー」Business Law Journal95号30頁(2015年)

*3:脚注は昨年の記事に比べると、少し抑え目になっている印象を受けるが、それでも、『民事訴訟マニュアル』に対する脚注10のコメントや、『法務で使う英文メール』に対する脚注17のコメントなどは、さすが、といった感がある。

*4:これを「匿名」で行うことについては議論もあるところだし、本来であれば、堂々と顕名で批評し合うのが理想的だとは思うが、法律書の世界ではそこまで成熟した土壌は醸成されていないように思うので、現状は匿名で、ということにならざるを得ないだろう。

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