確率論を超えた戦いの末に。

ソウルスターリング、という圧倒的な存在を中心に幕を開けた牝馬クラシック戦線とは異なり、傑出した馬の不存在ばかりが目立っていた牡馬クラシック戦線。

重賞タイトルを持っている馬は多くいるが、圧倒的な強さで連勝を重ねた馬は皆無で、その結果、戦前の人気はフラワーカップを勝ったに過ぎない牝馬・ファンディーナが一番人気に押しだされる、という異例の状況になってしまっていた。

これまでの定石でいえば、ここ10年で圧倒的な勝率、連対率を誇る「共同通信杯からの直行馬」を本命に掲げ、後は弥生賞スプリングSの上位馬から、調子が上がってきそうな馬をピックアップすれば、手堅く取れるはずのレースだったし、ファンディーナが人気を持って行ってくれていた今回は、同馬を外せば5頭ボックスで買っても十分高配当が望める、はずだった。

スワーヴリチャード(共同通信杯優勝)にカデナ弥生賞優勝)、そして後は、弥生賞に比べて少しレベルが高かった印象があったスプリングS組からウインブライト、アウトライアーズ、そして昨年の朝日杯FS馬を勝っているサトノアレス、といったところを並べて、“悩んだ時はデータで!”と攻めた人も決して少なくなかったことだろう。

だが、現実は、これまでのデータから導き出される「確率論」を見事にぶち壊した。

最初の1000mが59秒、というそこそこ早いタイムで、更に1200m過ぎからのラップが全て11秒台、というスピードのない馬にはつらい高速展開の中で、最後に抜け出したのはキャリア4戦で毎日杯から直行したアルアイン。2着以降も前に行っていたペルシアンナイト(アーリントンCから直行)、ダンビュライト(弥生賞3着)が続き、ここまでが昨年のレースレコードを超え/並ぶ、という驚愕の結果に・・・。

確かにアルアインは、前走でクラシック有力候補を目されていたサトノアーサーを完膚なきまでに打ちのめす強い競馬をしていたが、毎日杯は、本来、皐月賞に直結するようなレースではなく、このローテで皐月賞を勝った馬は1999年のテイエムオペラオー以来出ていない*1
ましてや、マイル色の強いアーリントンカップからクラシック、となると、ほとんど予測不能である*2

4着にすみれSから直行のクリンチャー、5着には昨年末のホープフルS勝ち馬のレイデオロ、と、皐月賞に臨むローテとしては決してメジャーではない道を歩んだ馬たちが掲示板を飾る中、王道ローテを歩んでいたはずの馬たちが、6着以降に枕を並べて討ち死に・・・という結果となり、「一冠」が終わっても「次」に向けた予測が全く立たない状況になってしまった。

次走が叩き2戦目となるレイデオロが1番人気に浮上する可能性は否定できないし、まだ勝負付けが終わっていないサトノアーサーあたりがいきなり人気上位に出てくる可能性すらある中で、“傑出した存在がいない弱い世代”という風評は相変わらず残るのだろうな、と思う。

ただ、今回のアルアインの勝ちタイムがただの展開の利によるものではなかったとしたら、後から振り返った時の今の3歳世代への評価は全く違うものになる可能性もあるわけで、この先しばらくは、歴史が塗り替えられていくかどうか、という面白さを楽しめそうな気もするのである*3

*1:京都新聞杯からダービーに向かうローテ(キズナなど)や、NHKマイルCを経由してダービーに向かうローテ(キングカメハメハディープスカイなど)はあるので、クラシックと全く無縁、というわけではないのだが。

*2:かつて、タニノギムレットがクラシック戦線を賑わせたが、あの時はスプリングSを経たローテだったし、後に中距離戦線で活躍するジャスタウェイもクラシック戦線では結果を出せていない。強いてこじつけるなら、昨年同じデムーロ騎手が騎乗したレインボーライン菊花賞で2着に入っていたあたりにヒントがあったのかもしれないが・・・。

*3:「最強」とうたわれながら、今年に入ってからさっぱり、の上の世代と比較すると、キャラクターが多彩な分、まだ楽しみはあるような気がする。

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