今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月30日版

緊迫度合いが一段と増してきた首都圏。

そして、週の始まりは、数日前に「感染」が公表されたばかりの超有名コメディアンの悲報から始まった。

他国に比べれば、この日本では一連の新型コロナ禍で亡くなられた方々の数は本日時点で「50名強」と、決して多いとは言えない数に留まっている。

だが、1人でも2人でも、尊い命であることに変わりはないし、ましてや、つい数日前まで最前線で活躍されていた方の命が一瞬で奪われていく、ということの恐ろしさは、まだ感染拡大が”序の口”に過ぎない今のタイミングだからこそより心に突き刺さるのも確かなわけで、もはや笑いごとでも他人事でもない目の前にある脅威から自分たちの身をどう守るのか、ということに思考を集中すべき段階に入っている、ということを改めて思い知らされることになった。

今は、世代を超えて親しまれた故人のネタをささやかな酒の肴にしつつ、在りし日を偲んで悼む、などという試みすらままならない状況ではあるが、いつかこの嵐が去った時、最後まで世の中を動かすインパクトを与えて去っていった「志村けん」という人物を、国民総出で見送れるときが来てくれることを、自分は願ってやまない*1

フェイクニュース」への怒りを込めて。

そんな話の流れの中で、より悪質で、愉快でないことに触れなければならないのは大変残念なのだが、先週末くらいから、「今週中にも東京ロックダウン」みたいなノリの「フェイクニュース」が、いろんなところから流れ込んでくるようになった。

よくよく聞いてみると、「どこどこの政治家に近い××××(メディア名)の関係者から聞いた」とか、「霞が関の○○省で働いている人の友人の友達から聞いた」等々、大体突っ込みどころ満載の話なので、自分自身は歯牙にもかけていなかった*2のだが、まさに年度末、四半期末佳境でピリピリしている人が多い状況だけに、それを鵜呑みにしてバタバタとWeb会議をおっぱじめたり、(よりによって動くな、と言われている週末に)人を集めたりした会社もあったようである。

さすがにそういった「噂」が出ていること自体を捨て置けないと思ったのか、安倍総理も、菅官房長官も、いつになく迅速な対応でピシャリと憶測を封じて見せたのだが、そもそもこういう根拠のない話がなぜ出てくるのか、そして、なぜそれを真に受けて伝播させてしまう人がいるのか・・・。

そもそも、この日本において、強制力を持って移動を封じ込める、という意味での「ロックダウン」*3を行うのは、法的には不可能だし、物理的にも極めて困難である。

そして、このブログでもたびたび書いてきた通り、過剰なインパクトを与える割にはそれに比した効果は期待できないのが、この種の「一律の行動制限」なのであって、どれだけ「自粛」を求めても、なお「満員電車」が走り続けるような無秩序状態に陥らない限り極力切られるべきカードではない、と自分は思っているし*4、良識ある人ならこの程度のことは誰にでも理解できることである。

にもかかわらず、なぜ、それをあたかも「既成事実」であるかのように吹聴し、拡散する輩がいるのか。

都知事自ら「夜の繁華街」への出入り抑制を訴えるのは大いに結構なことだと思うのだけれど、それに加えて、「誤った噂をまことしやかに伝播したものは、2週間メールもSNSも禁止!」というルールも作ってほしいと思う、今日この頃である。


なお、先週後半に首都圏の知事たちがかなりのプレッシャーをかけた効果もあってか、今日の都心部の人出は随分と減り、朝夕の、これまでなら「通勤ラッシュ」だったような時間帯でも、普通に周囲との間隔を保ったまま行動できるくらいの状況になってきた。

それはそれで大いに結構なことなのだけど、そこにいたはずの人々がどこに行ったのか?ということを考えると、むしろこれから心配なのは、食料一つ調達するにも、気晴らしをするにも、行く場所が限られている「郊外」なのではないか・・・と思ったりもして。

既に帰省した学生が、これまで感染判明者がいなかったエリアで、新たな「感染者」となってしまった事例は報告されているところだが、「東京」を守ろうとした結果、周辺の自治体で感染爆発が起きてしまっては身もふたもないわけで、閑散としたターミナル駅を眺めながら、次の段階では、「都会の狭さ」「日本の狭さ」というものも考慮した手も打つべきではないか、と、思わずにはいられなかったのである*5

*1:世の中の話題はもっぱら「ドリフ」だが、自分が一番好きだったのは、映画「鉄道員」の中での、”全く素のように見えて一番泣かせた演技”。原作と比べてしまうと、あの映画自体は正直どうしようもない代物だったと思うのだけど、原作に出てこない創作キャラクターだからこそ、の絶妙な味があって、あの瞬間(暫しの笑いの後に訪れた真反対の瞬間)だけは迂闊にも落涙しかけたのだった。

*2:大体その手の筋からなら、より確度の高い情報は入手できるネットワークを持っているつもりだし、そっちから何もなくて、明後日の方向から風が吹いてきている時点で、到底信用する気にはなれない。

*3:「回避したい」という文脈での発言とはいえ、この言葉を安易に使ってしまったのは小池都知事がここまでに冒したミスの一つではあると思うのだが(しかも「比較対象」とされている都市に関する情報も、極めて一面的である)、それはさておき・・・。

*4:お上の「ルール」を自分の頭で柔軟に解釈できる人々が一定の発言権を持っている国であればまだしも(現地からの生の情報に接していると、「ロックダウン」といっても常識的な範囲での行動の自由は残されている、ということに気付くし、それが殊更に非難を浴びる、というような状況というわけでもないようである。もちろん例外はあるだろうが)、「禁止」と言われると、週末にちょっと外に出ただけでもつるし上げにしたがる人が多い国では、「強制」に等しい指示を出すことによる弊害も意識しなければならない。

*5:「何が何でも通勤するな!」という発想ではなく、客室稼働率が落ちている会社の近くのホテルを借り切って出勤部隊と在宅部隊を分ける、といった発想で事に対処する会社が出てきても良いのではないか、という気はする。大事なのは「密集」を作らないことであって、東京から人払いをすることではないのだから・・・。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html