どこまでも続いていきそうなカオスの一歩先にあるもの。

今、様々なものがピークに達しつつある。

恐れていた「波」は、秋が始まった頃に想像していたのと比べると遥かにゆっくりしたペースではあったが、「Go To」の活況と歩調を合わせるようにじわじわと広がってきた。

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先週くらいから1,500人を超えるペースで高止まりしている感染者数は、火曜日から既に1,700人に。

季節的な要因もあるし、罹患しているコミュニティやその世代の広がり等を考えると、しばらくはかつてないレベルで高止まりすることが確実な状況、そして、これまでの波の中ではもっとも多くの方々の命にかかわる状況となってしまうことはどうしても避けられない状況にある。

一方で、先日のエントリー*1でも書いた通り、今の日本の株式市場はバブル後最高値を連日更新し続ける空前の活況。

今日は、前夜にNY市場でダウが市場最高値を記録した勢いそのままに、とうとう日経平均26,000円の壁まで突破して約30年近く時代を遡り、新しい扉を開いてしまった。

大統領選が終わってより深刻になったように見える米国社会のそれと同様、この国においても、「二極化」が日々加速している、というのは先日のエントリーでも触れた通り。

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かたや「DX景気」「巣篭もり景気」による大幅増収で我が世の春を謳歌している会社*2があるかと思えば、四半期の決算のたびに赤字が拡大していく会社もある。

良い方の会社の勢いだけ見れば、”買い材料”はいくらでもあるわけで、市場の各指数が上昇一途をたどる状況も十分説明できるのだが、落ち込んでいる方の会社の数字と、その前に広がる目を覆いたくなるような状況を見れば、「2年後回復」の夢を追いかけるしかない市場関係者のマインド*3に同情せざるを得ないところもあったりする。

おそらく、「Go To」で無理やり勢いを付けて戻そうとしていた旅行や飲食は、今週末の三連休を挟んで年末まで再び深い沼に沈んでいくことになるだろうが、どこの会社でも社内システムのクラウド化や通信インフラ投資に向けた動きは当面衰えることはなさそうだから、この先しばらくは、差が開いていくことはあっても縮まることはないだろうし*4、多くの企業ではその格差が「冬のボーナスの多寡」という形で社員の生活をも直撃する。

それでも本当に悲惨な状況になっている業界を除けば、日々の給与はそれまでどおりに支払われている人々がほとんどだし、大企業であれば、少ないながらもボーナスさえ出る。

それが招く危機感の欠如が、半年後、1年後の「格差」をますます大きなものにしたとしても、自分は全く驚かない。


ついで生活のレベルに目を移せば、ついこの前までは、ここらで”解禁”とばかりに、仲間内での飲み会やら、盛り上がって旅行会やら、という話が一気に増えている状況だった。会社によっては、社員の合宿型研修まで復活させたところがあると聞く。

その一方で、「春先から一度も会社に行ってない」とか「テレワークが週4回になった」という声もチラホラ聞くわけで、朝夕の時間帯に電車に乗ると、

「緊急事態宣言の頃と比べると明らかに増えているが、それ以前のラッシュには遠く及ばない」

という状況が続いている。

一度染みついてしまった習慣を切り替えるには時間がかかるから、おそらく今年いっぱい、いや、今年度いっぱいくらいは、このままの状況が続くのだろうし、年が明けて新型コロナが落ち着き、本格的に景気が良くなってくれば、

「在宅勤務できる会社に行きたいから転職」

「いやいや、周りと顔を合わせながら仕事したいから転職」

という相矛盾する動きもグッと増えてくることだろう。


組織の指示に縛られる、という立場ではないがゆえに、自分のジャッジで”いいとこどり”ができる身としては、毎日会社に通って同僚と飲み歩いている、と聞けばさすがに「少し控えた方が良いのでは?」と勧めることになるだろうし、逆に、全く会社に出ていかない、という働き方が推奨ないし許容される会社に対しては、「リスクに対して過敏過ぎないか?」という疑問を投げかけたくもなるのだが、ここでどうこう言ったところで何かを変えられるわけでもないから、自分は自分で”安全なところ”を自分で考えて見つけ、それぞれの相手に合わせて対処していくほかないんだろうな、と思っているところ。

そして、矢印の向きが全く異なるように読める「新型コロナ感染者拡大」の動きも、「株価高騰」の動きも、根っこを辿るなら、「周囲に追従して動く」人々が多いからこその帰結なのかな、と感じさせられるところは多いのである*5

どんな「祭り」もいつかは終わる。

既にワクチンの開発は最終段階に差し掛かり、治療手順も投与薬も医療機関の現場にかなり浸透してきている、という話も聞く。

様々なイベントは、イレギュラーな形ながらもちょっとずつ常態に戻り始めているし、来年に控えた最大のイベント、オリンピック・パラリンピックすら、総理自らわざわざ来日したIOC会長のご機嫌をうかがいながら、来年必ず開催する、という方向で話をまとめようとしている。

さらに一時落ち込んだエスタブリッシュ産業の多くはアジアから息を吹き返し、平行して伸び続けた新興産業もいずれ大きな雇用を生み出す。

だから自分は世界の先行きには全く、と言ってよいほど不安は抱いていないのだけれど、一方でこのままでは、そう遠くない時期に新型コロナ感染拡大のリスクが大幅に減少し、世界中が一気に「正常化」に向けて動き出したとしても、なぜかこの国はそこで一歩も二歩も後れを取ってしまうような気もしていて・・・。


目の前で吹き荒れる嵐の中で虚勢を張って傘も差さずに走り続ける必要はないし、逆に、半年後、一年後の降るかどうかも分からない雨のために今から雨具を準備する必要もない。

これまで散々振り回されてしまったけれど、これが三度目の正直。

今訪れている悪い話も良い話も、この大きな、極端な山を越えて振り返った時には、世の中に健全なリスク感覚を浸透させ、自分自身の判断で動ける人々を増やし、さらには健全な産業構造シフトを推し進める良い契機ともなった、と評価されるようになれば、それがベストストーリーであることは言うまでもない。

そして、”あともう少し”の辛抱がそういう帰結をもたらすことを、自分は信じてやまないのである。

*1:走り去るバスには乗れなかったけれど。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:といっても現場は、首が回らずにクタクタになっている方々がほとんどだろうが・・・。いつの時代も変わらない話だが、伸びている産業、伸びている会社には圧倒的に人手が足りない。

*3:日本経済新聞2020年11月17日付朝刊・第18面より。最初この記事を見た時に、見間違いか・・・?と思ってしまうくらいとんでもない話だと個人的には思っているが、現に株価水準が跳ねてしまっている以上、商売で投資をしている人々は「今が割安」と割り切って空運・陸運や、飲食業界の株でも買い上げざるを得ないのかもしれないし、こういった業種の今の株価水準は、そうとでも説明しないとどうしようもないレベルにある。

*4:後は、今年前半は一種の”下剋上”状態だった小売分野でこの先どういう変化が起きるのか、とか、2Qまでは依然衰えていなかったように見える不動産や建設業界のこの先、がどうなるかによって、来年3月期決算時点での”国の勢い”というものが見えてくるのだろう、と思っている。

*5:特に「Eat」に関してはそれを強く感じた。「5人以上対象外」とかって、言われるまでもなく当然利用者自身の判断(と、それ以上にお店の由来の判断)でそうしておかなければいけなかったところだと思うわけだが、ここでそのことに言及するのは差し控える。

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