蘇った記憶。

時間が過ぎていくうちに、何となくおぼろげになっていた記憶が一つのリリースで蘇った。

鹿島建設株式会社が出した「独占禁止法違反事件における判決(控訴審)について」というリリース。

www.nikkei.com

もちろん、東京高裁で判決が出た、というニュースは電子版でも見かけていたのだが、そこでは「昔の事件」の如く、「地裁の有罪判決が支持された」という類のことが淡々と書かれていただけで、それだけなら自分もわざわざブログでエントリーを立てようなどとは思わなかっただろう。

だが、このリリースに込められた「熱」が、5年前の煮えたぎるような感情を思い起こさせてくれた。

「本件で問題となった工事は、過去に類例のない極めて難度が高い工事であるため、指名競争見積手続が開始される5年ほど前から同開始直前まで、発注者が当社以外の特定の会社にのみ技術検討などを依頼し、当該特定の会社のみが発注者から事前の情報を与えられ、時間と費用をかけて詳細な施工計画の検討、機械・技術・工法の開発及び人的な準備等を行ってきたものであります。このような経緯の中で、当該特定の会社以外の一方的に指名された競争見積参加者にあっては、指名から見積提出までの期間が極めて限られたうえ、提供された資料・情報も不十分であったため、本件工事を安全かつ確実に施工するための適切な施工計画を作成し見積を行うことは不可能でありました。」
「そこで当社は、本件は、民間工事の発注者自らが競争のない状況を作り出し、指名競争見積入札の時点までに独占禁止法上の実質的な「競争」(独占禁止法第2条第4項で定義された競争)が存在しない状態となっていたのであるから、形式的に指名競争見積手続がとられたとしても独占禁止法違反が成立する余地はなく無罪であると一貫して主張してきたものです。」
「しかし・・・」
(強調筆者、以下同じ)

つい先日出された「五輪プレ大会談合」起訴時の大手広告代理店たちのプレスのように、世の企業の中には公判が始まる前から”白旗”を上げてしまうケースも多いのだけれど、起訴され、控訴審判決まで行ってもなお主張をし続ける強さ。

そして、当の企業をここまでさせるところに、かの事件の異常なまでの筋の悪さがある。

ちょうど2018年の年初から3月くらいにかけて、このブログでも何度となくこの事件のことを取り上げていた。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

本件そのものではなくても、似たような発注案件の裏側を知る者として、事件の構図の作り方も、それを「事実」にするための捜査手法にしても、かなり問題性の高い事案だと自分は思ったし、今改めて読み直してもその思いは変わらないのだが、一方で、メディアの関心が薄れ、地裁での公判開始後に新型コロナの波まで襲ってくる、という展開の中で、こんな大事なことを忘れかけていたことに唖然とし、深く反省した次第である。

このままいけば、数年後、新聞の隅っこに「上告棄却決定」の記事が小さく出て終わり、ということになってしまいそうな話ではあるが、本当にそれでよいのか、ということも含め、今一度問い直したい、そんな思いで今はいる。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html