開会前夜。

いつもと同じように、大会は始まった。

21日の昼、福島県営あづま球場で、13年ぶりに帰ってきたソフトボールで、13年の時を超えた大エース・上野投手が見事なピッチングを見せたのを皮切りに、夜には女子サッカーが最初の試合を迎えた。そして今日は、男子サッカーの「開幕」試合。

ソフトボールもサッカーも、五輪では明らかに”脇役”で、だからこそ、いつも「開会式前から試合が始まる」という番外地のような扱いにどうしてもなってしまうのだが、見る側にしてみれば、開会式が終わって騒がしくなる前に代表の試合をじっくり見られる、というのはそれはそれで有難かったりもするわけで・・・。

サッカーの試合に関しては、男女いずれの初戦もライブの時間帯で見ることができたのだが、いかにも“初戦”という感じの重たい試合だった。

女子の方はパスが思うようにつながらず、球際での競り合いでも押し込まれることの方が多くて、ハラハラしっぱなしの展開。

男子の方は吉田麻也選手が率いる最終ラインが鉄壁だったから失点の気配はほとんどなかったものの、肝心の攻撃陣の呼吸が今ひとつで、これまたチャンスは作れどゴールが遠い・・・という展開でイライラ。

そんな状況でも女子は千両役者の岩渕真奈選手が技ありの美しいゴールで辛うじて同点に持ち込むことができたし、男子はフラストレーションが最高潮に達していた後半26分に、これまた世界の久保建英選手が右45度からの豪快なゴールを決めて勝ち点3を奪い取った。

決めるべき人が決める展開、しかも本当に”いいところで”決めた、という展開だったから、場内に観客が入っていたらどれほど盛り上がっただろうか、と思ってしまうのも確かなのだが、一方で声援もため息も罵声も容赦なく浴びせるのが「観客」ということを考えると、むしろ無観客だったからこそ、自分たちに最も有利な展開で試合を運べた、というところもあったような気がして・・・*1

で、翻って東京に目を向ければ、「いよいよ明日が開会式」というところまで来た。

ここ一週間の間だけでも、様々な「辞任劇」「解任劇」が繰り広げられ、組織委員会の中もかなりの混乱に陥っていることは容易に存在できるところで、これらの騒動を見て、やたら悲観的に日本を論じたがる人も結構いるような印象だが、これまでの五輪でも、開会式直前にセレモニーのネタが流出といったところから始まって、開会前の運営に地元国民の不満が爆発したり、組織委員会内の問題が報じられたり、ということはしばしばあったし、ひどい場合には、開会の時点で競技施設が一部完成していない、なんてこともあったはず。

今回の五輪では、たまたま一番情報が生々しく流れてくるところに日本人がいるものだから、どうしてもよろしくないニュースにばかり接することになってしまうのだが、そもそも他に比較できる対象もないようなスポーツの巨大イベントを、期間限定で寄せ集められた人々が運営するわけだから、どこの国でやっても大なり小なり失敗はあるのは当然のことで、そこまで悲観することはなかろう、というのが自分の意見である。

もちろん、今回の五輪にはこれまでの一般的な経験則は全くあてはまらない可能性が高い。

いつもなら、どんなに「反対派」が開会直前にあら捜しを行って攻撃しても、大会の日程が進んでいけばいつのまにか多数の国民が盛り上がって批判は沈静化する、という見立てで進めることが多かったはずだが、今回の五輪に関しては、開会後も、選手たちの競技結果に関する報道と同じような位置づけで「COVID-19の感染状況」が報じられるのは避けられず、「オリンピックにだけ世論の関心が集中する」ような状況には、とてもじゃないがなりそうもない

既に起き始めているが、海外から来日した有力選手が感染して出場断念、という事態が続出するようなことになれば、仮に日本勢が連日のメダルラッシュということになったとしても、目の肥えた人なら白けてしまうだろう*2

何より、仮に無事、開会式が行われたとしても、最後まで大会を完遂できるのかどうか、というところがそもそも怪しいのが今の状況で、選手村の防疫体制が破たんしてパンデミックが起きるようなことになれば、その時点で事実上(あるいは形式的にも)大会は終了する。

だから、開会してからも一瞬たりとも油断できない、緊張感のある大会は続くことになるのだろうけど・・・。


まぁ何か起きたらその時はその時。

日頃、どうしても「儀式は完璧に行わなくてはならない」「そのための準備も万端でなければならない」という宮廷官僚的思想(?)が染みついている日本人にとって、開会直前まで続いた様々なハプニングが想像を超えるものだったことは間違いないが、大事なのは何か起きた時の機転と瞬発力であって、それ以外の全てを完璧にこなす必要など全くないのだし、上手に切り抜けられなくても楽しくやり過ごす、という逃げ方はある。

オリンピック、パラリンピックが無事最後まで日程を終えられるならそれにこしたことはないが、仮に終えることができなかったとしても、今回の五輪を機に日本人のマインドが、もう少しケセラセラな方向に改善されるのであれば、それはそれでよいのではないか、と思うのである。

*1:もし満員の地元の観衆の前で開始早々失点してしまっていたら、あるいは後半になっても点が入らない展開が続いていたら・・・と考えると、かなり冷や汗ものだ。

*2:そこまで目が肥えていない、普段はスポーツなんか見てないけど日本勢がメダル取ればとりあえずミーハーに盛り上がる、という層にはそれでも良いのかもしれないが、それでも、実力以上に、連日日本勢があまりに多くのメダリストを量産してしまうようになると、メディアが伝えること自体に飽きはじめ、結果1週間も経たないうちに多くの人の関心が別のところに移っても不思議ではない。

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