2024年のサッカーアジアカップ。不完全燃焼のグループリーグの後にやって来たノックアウトステージ。
こういう方式の大会は、グループリーグで苦戦した方がトーナメントの戦いに入ってから勝負強く勝ち上がる、ということも結構あるし、ROUND16のバーレーン戦などはまさにそんな感じの「快勝」だったから、願わくばそのまま頂点まで行ってほしいところではあったのだが、如何せん、準々決勝の相手は悪すぎた。
今大会の正GKをめぐる人種差別的なバッシングが一種の騒動となり、それがようやく落ち着いたと思ったら、今度は代表が誇る快速MFがまさかの不祥事疑惑で離脱。期間中にグラウンド外でこんなにいろんなことが起きる大会というのもなかなかないし、それが選手のコンディションに全く影響しなかった、というわけでもないだろう。
ただ、少なくともこの日の試合を見る限り、イラン代表は、体の強さも高さもテクニックも他のアジアのチームからは一枚も二枚も抜けていて、全くフラットな状況で戦ったとしても互角の戦いに持ち込めれば御の字、という感じではあった。それが完全アウェーの環境、しかも最強の飛び道具になるはずだった伊東純也選手を欠き、三笘選手も万全ではない状況での戦い、ということになれば、この結果もやむなし、というところだろう。
特に後半の45分+α
テレビのない店で「前半1-0」のスコアを知って慌てて店を探し、ようやく見つけた居酒屋の大きなテレビの前に陣取って歓喜の瞬間を見届けられる・・・とぬか悦びした自分にとってはまさに悪夢でしかなかったし、特に同点に追いつかれてからの約40分、何をやってもボールが敵陣内でキープできず、ロングボールからの鋭いカウンターで何度も自陣を脅かされた末、とうとうボールを前線に送り込む気概すら失ってしまったように見えた日本代表の選手たちの姿は、あまりに衝撃的過ぎた。
逆に言えば、自分も含め、ここ数年「強い日本代表」に何となく慣らされてしまっていた日本人にとっては絶好のスパイス・・・。
戦いが終わってこの結果だと、当然いろんな声は出てくる。
だが、守備の不安定さはこの試合に限らず、今大会を通じて一貫してそうだったし、森保監督の交代カードの切り方がうまくない、というのも前のW杯の予選からずっと言われ続けていたことだったりもする*1。
そして何より、日本代表というチームは、決してノックアウトステージに突入してからの勝ち方を熟知したチームではない*2。
だから、勝っても負けてもW杯には何ら影響しないこの大会で、今の弱点が浮き彫りになる形で「完敗」を喫した、というのは、先々のことを考えればむしろ良かったんじゃないか、という気すらする*3。
2002年以降、アジアカップで優勝した直後のW杯で日本代表が全く結果を残せていない、というのも決して偶然ではないはず。
そう考えた時、泥沼の試合を延長戦まで突入させることなくすっきりと終わらせた板倉選手の”白旗タックル”は、「2年後」に向けた福音といっても過言ではない。
おそらく、この先もしばらくは落ち着かない代表チームになるだろうし、まだ日程が残っているW杯二次予選でもハラハラは続くだろうが、あとで振り返ったときに、この日のイラン戦が更なる進化の一里塚だった、と言われる日が来ることを願って、今夜は清々しく眠りにつくことにしたい。