そしてまた季節は中東。

前世紀末からの長い歴史を持つ「3月はドバイ」の慣習がすっかり定着した(ダート馬のみならず一線級の芝馬の参戦も常態化した)ことで、日本の春競馬は少なからず影響を受けていたのだが、新型コロナ禍に突入する直前から始まった「2月はサウジ」の”新”慣習が、遠く離れたこの国の競馬の在り方も揺るがしつつある。

何といっても一番煽りを受けているのは、かつて中央の最強ダート馬決定戦だったはずのフェブラリーSで、一線級の馬たちが昨年末のチャンピオンズカップ東京大賞典あたりから軒並みサウジカップに直行してしまったことで、今年のメンバーは何とも寂しい顔ぶれに。

加えて芝路線でも、先週のカタールと今週のサウジカップデーの各レースに国内重賞を賑わせていたメンバーが少なからず参戦したことで、こちらも格式ある国内のGⅡ、GⅢ戦線にちょっとした穴が開いている。

もっぱらダート路線の馬だけとはいえ、最近では2歳馬もサウジダービーからUAEダービーへ、という流れが定着しつつあり、ますます”国内組”の層は薄くなる。

サラブレッドが経済動物である以上、関係者が高額賞金が期待できるレースに目を向けるのも当然と言えば当然だし、一線級の馬が抜けた舞台で次々とニュースターが生まれるならそれはそれで悪い話ではないのだが、国際映像に映った豪華メンバーを複雑な気持ちで眺めていたのは決して自分だけではなかったと思う。

で、この週末のサウジカップデー。

サウジダービーで、藤田晋オーナーのフォーエバーヤングが、もたつきながらも差し切って無敗優勝を成し遂げたのはさすがだったし、昨年福永騎手のラスト騎乗であっと言わせたリメイクが、リヤドダートスプリントで見事な差し切り勝ちを決めた時は思わず喝采の声を上げた。

続くレースも勝ち星こそ逃したものの、ララクリスティーヌ(1351ターフスプリント)、キラーアビリティ(ネオムターフカップ)が次々と2着に飛び込んできたのはあっぱれの一言。

だから途中までは非常にウキウキした気分でレースを眺めていたのだが・・・


サウジカップで一瞬勝ったかに見えたウシュバテソーロが最後の最後でわずかに差されて負ける、という衝撃の光景を誰が予想しただろうか。

「一日通してみた時の運/不運の総和は誰しも変わらない」という見解に立つなら、最初の2レースでの見事な勝ちっぷりがかえって仇になった、という説明になるのかもしれないが、いずれにせよ負けは負け。

「サウジの仇はドバイで打つ」

陣営もその心構えで既に次のレースに向けた体制再構築を図っているのかもしれないが、一番大事なのは、遠く離れた異国の地で馬たちが事故なく調教を行うこと。そしてレースを終えて再び日本に戻ってくることだと思うだけに、その精神を決して踏み外すことなく、次のビッグレースに臨んでいただきたいものだな、と思うばかりである。

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